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完全な通訳AIでも解決できない【4問題】と、自分でコミュニケーションをした方がいい【3領域】#外国語教育

中国のiFLYTEKなど高度な音声認識、合成、翻訳技術を基に、今後、かなり高精度の通訳機が登場するかもしれない。

しかし、

通訳を介すると次の問題がある。

1.タイムラグがある

仮に性能がよくなっても、数秒のタイムラグはあるのでそれがストレスになる。

話を言い終わらないと意味が確定できず、翻訳されないので原理的にラグは消えることはない。

2.真意に確信が持てない

複雑な話題の議論をしていたり、或いは一方が突拍子もないことを言った場合、母国語同士のコミュニケーションであっても「この人何言っているんだ?」となる。

仮に通訳の精度がかなり高くても、もしこれが、通訳AIを通じて行った場合、相手の問題なのか、AIの問題なのかよくわからなくなってしまう。

これは現在にといても、優秀な通訳が通訳を行う際に生じる問題である。(なぜか通訳が怒られる)

こうなれば、本当にそれを言っているのか疑問を持ちながらコミュニケーションすることになる。直接、相手の意見を聞けば100%の確信でコミュニケーションが進む。

3.肉声ではない

意味を取る言語が通訳の肉声であり、相手の肉声でない。つまり、ノンバーバルな情報がなくなってしまう。

相手がどういうワードチョイスでどういう語感、語調でそれを言ったかが、一次的にわからない。

また、声のデータを採取して、その人の声にしゃべらせてもAIから発声している時点で原理的な解決にはならない。

4.翻訳できないことがある

やはり日本語と外国語は完全に置き換えることはできない(そもそも言語は世界をどう分節するかの体系)。「幸福」と「幸せ」など近い意味をどう区別するかなどもわからない。こちらも、精度が完璧でなければ、そもそも常に、本当にそれを言っているのか疑問を持ちながらコミュニケーションすることになる。直接、相手の意見を聞けば100%の確信でコミュニケーションが進む。

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私は自分が中国で生活、ビジネスをしていた経験から、次の3場面では通訳or通訳機(以下まとめて「通訳」)を介さないで直接コミュニケーションしたほうがいいと思う。

(1)中国語会話で食事ができる(人と親交を深める)

まず第一に、自分が「中国語を話せる聞けること」で最も価値を発揮するのは、人間関係を作るときだ。

やはり、世界各国、食事をともにすることで親交が深まる。

そのときに、通訳を介すると「タイムラグがある」「肉声ではない」ことが相互理解の過程で大きな支障となるのは明らかだ。

火鍋などの食事をしながら中国語だけでコミュニケーションがとれれば、多くの中国人と関係を作っていくことができる。(仲良くならなくたって、こういうやつがいるんだ、うざ、みたいのも含めて)

私自身、何度火鍋、さらには路上の羊肉串と青島ビールを同僚とともにしたことか。

また、語学力どうこうよりも、一定レベルがあれば、あとは相手への関心があるかが決め手になると思う。そもそも相手の話をききたくないのなら、話す必要もないだろうから。

(2)専門分野のディスカッション

もう一つはもっと実用的なこと。一言でいうと質問攻めできることだ。関心のあることを質問し、やり取りをしながら得たい回答を引き出す。これは通訳に任せられそうだけど、意外に難しい。

特に上述の「真意がわからない」が結構問題になる。

通訳は、要約しているのか?文頭から比較的日本語の語順で全て訳しているのか?知識不足で単語は言い換えているのか?

また、話が専門的になると通訳の理解不足で話がこじれてくる。

質疑応答は、一回の質問で終わるわけではなく、どんどん深めて行く必要がある。

複数回の往復のやり取りが必要なので、何をコミュニケーションしたいかという目的を理解している自分が進めなくてはいけない。

(3)意思決定のためのディスカッション

例えば、日中の老板同士が交渉。

これに通訳を挟むと、やはり「真意がわからない」問題がおきる。このコミュニケーションでの意思決定に従い、それぞれが各自の仕事をするわけだから、この合意形成で不安があると問題がおきるのは必至だ。加えて、タイムラグがあると、共通了解の細部まで詰めきれずに消化不良で会議を終えることにもなる。

ただ、完全にネイティブレベルで行うのは難しいので、通訳に基本は委ねて重要どころは自分でコミュニケーションするのでも十分良いと思う。

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以上、

完璧な通訳がいても、原理的に消えない4つの問題と、その問題が顕著に出る場面3つを整理した。

逆にいえば、これら以外の場面では通訳だけでも何の問題もなくコミュニケーションができるかもしれない。

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