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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第11回「彼が穴を掘る理由」
ようやくゲームのメカニクスが固まってきました。うろ覚えですが、最初の着想からは3年近く経っていた気がします。
エンドレスで掘った距離を競えるプロトタイプをデバッギングステーション(通称デバステ)用のCDに焼いてもらい、「遊べる企画書」という、やや苦しいこじつけで吉沢さんに遊んでもらうことにしました。
その時の経緯は吉沢さんのtwitterの通りです。吉沢さんは見た目のチープさには囚われずに面白さの本質を見抜くことのできる方でした。吉沢さんに認めてもらったことによって、ミスタードリラーは本格的に製品化への道を歩み始めます。
エンジニア、デザイナーのアサインも決まり、いざ製品化へと向かおうとした時、新たな課題が発生しました。
それは「世界観」です。プロトタイプでは穴を掘ってるからディグダグの続編、くらいの超絶いいかげんな設定でしたが、製品となるとそうはいきません。
「主人公は何者なのか?」
「主人公はなぜ穴を掘っているのか?」
「色のついたブロックやタイム延長アイテムとは何なのか?」
といった疑問に答え、グラフィックデザインのベースとするための世界観が必要なのです。
ゲームメカニクスのことばかり考えていたため、正直こちらは手薄でした。
アサインされたデザイナーさんと世界観設定について話し合いました。
「掘った距離を競う架空のスポーツ競技という設定はどう?」
→「目的にあまり感情移入できない」
「地球の反対側でゴミが捨てられてきて溢れてるのを止めるとか」
→「わざわざ地底を通って反対側に行かなくても良くない?」
これだ!という世界観設定が決まらず、キャラデザインも迷走していました。パックマンを主人公にしてみたり、エスパークマちゃんを主人公にしてみたり。
世界観が決まるきっかけは、私の日常にありました。
当時私は家賃が安いという理由で、夫婦で公営の古いアパートに住んでいました。お風呂も古く、先に水を張ってから火をつけて沸かすタイプの風呂でした。
その日もお風呂を沸かそうと浴槽に水を張っていたのですが、他のことをしているうちに水を出していたことをうっかり忘れてしまったのです。
あっと思ってお風呂場に行ったときには、時すでに遅く、浴室は水浸しになっていました。後から帰ってきた妻にこっぴどく叱られました。
やらかしたのが2回目だったからです。
その時「なんで何度も忘れるの?」と聞かれて、答えられませんでした。
なんで?って聞かれてもも、うっかりするのに理由は無いよな…と
その時…
うっかりして溢れさせて一大事になる…
それを叱る…
またうっかりする…
また叱る…
なんだか繰り返し遊ぶ理由としてしっくりくるな…
叱られて謝りながらそんなことを考えていました。
そして考えたのが
地底人がうっかりして自分たちの食料を作りすぎてしまい、地上に溢れて大パニックを引き起こしてしまう。
それを主人公が止めるために発生源の地底を目指す、という設定でした。
地底人はうっかりモノの私ですね。
では、地底を目指す主人公は何者なのか?
それを決める上で大きな影響を受けたのが、1998年に週刊少年ジャンプで連載が始まった漫画「HUNTER×HUNTER」でした。
主人公の職業は「ドリラー」で、プロのドリラーを名乗るには厳しいドリラー試験に合格してドリラーライセンスを取得しなければならない。プロのドリラーは世界各地にいて、災害時の人名救助や古代遺跡の発掘など、色々な分野で活躍している。
当時の設定を改めて書いてみると、「ハンター」を「ドリラー」に置き換えただけと言っても良いくらいのオマージュっぷりですね。
しかも、正式タイトルが「ミスタードリラー」に変わる前のタイトルは「ドリラー×ドリラー」だったんです…影響受けすぎですね(笑)
設定が決まったことによって、カラーブロックのモチーフは食料(お菓子)に決まり、主人公はドリルを持ってヒーローっぽいスーツを着た少年になったのでした。彼の名前が「ホリ・ススム」に決まるのはもう少し後の話になります。
つづく
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