ミア・カンキマキ『清少納言を求めて フィンランドから京都へ』(書評ラジオ「竹村りゑの木曜日のブックマーカー」1月6日放送分)
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<収録を終えて>
清少納言と言えば、平安時代を代表する才女として知られている人。学校の授業でも必ずその名前を聞きますよね。
そんな「歴史上の人物」として、どこか遠い存在であったはずの清少納言が、フィンランド人の作者の目を通して語られることで、生身の人間として近しい存在に感じられる不思議な1冊でした。
「憧れの女上司って感じがする」とラジオ内でもお話しましたが、清少納言って職場にいたら、きっと結構頼れる先輩だったと思うんです。賢くて気が強くて、職場の非合理的な部分を理路整然と指摘してくれそう。あ、好き。
作中では、清少納言とそのライバルとされる紫式部を取り巻く環境についても書かれていて、かなり興味深かったです。
実は清少納言と紫式部は同僚ではなかったそう。それどころか、清少納言が宮廷を退いた少なくとも6年後(1006年頃)に紫式部は宮中に上っているので、互いに顔を合わせた可能性も低いのだそうです。
にも関わらず、紫式部は清少納言をバチボコに言っています。
これは、『紫式部日記』に本当に書かれている内容です。結構毒舌でハラハラしますよね。でも紫式部の立場に立って考えてみると、清少納言は自分が入社した職場を6年前に退職している、会ったこともない人、という立ち位置なはずです。そんな相手のことをここまでディスるか?という不自然さを作者は指摘し、当時の宮中の政治情勢から紐解いています。それを読むと、清少納言という人が、愛しく感じられてくるというか……清少納言に対してシスターフッド的な感情が芽生えてくるのを感じます。一緒に頑張ろうね、みたいな。
清少納言を、作者は終始「セイ」と呼び、心の中で話しかけます。
ねえセイ、どう思う?
セイ、これって本当なの?
セイったら、いい加減にしてよね!
まるで友達のよう。しかも結構昔から親しくて軽口も言い合える、みたいな感じ。笑
歴史上の人物と、ここまで仲良くなれるのだなあということも教わったような気持ちでした。みなさんだったら、歴史上の誰と仲良くなりたいでしょうか?
それでは、今日はこのあたりで。
また、お会いしましょう。
<了>