宮本道人・難波優輝・大澤博隆『SFプロトタイピング』(書評ラジオ「竹村りゑの木曜日のブックマーカー」2月3日放送分)
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<収録を終えて>
今回の収録は本当に困ってしまって、というのも用意していた原稿の1/3程度しかお話できないままタイムリミットになってしまったのです! 続きはnoteに書こうと思いつつ、ちょっと悲しい気持ちでした……。
さて、番組の中では、SF作家の発想は荒唐無稽なもののように思われて、実は緻密な研究に基づいているものもあることや、その結果として現実よりも先に現実を見せてくるような作品が生まれてくることなどをお話しました。
さらに、そのSF的な発想力を、清水建設や日産自動車、三菱総合研究所、マイクロソフトなどの大手企業が取り入れていたり、アメリカの海兵隊戦闘研究所がワークショップを行ったり、フランス陸軍が実際にSF小説(『バルバリア海賊 3.0』というタイトルだそう)を執筆したりと、まさに「事実は小説よりも奇なり」を逆説的に解釈したような取り組みが実際に行われていることもご紹介しました。
これを放送上では「マーケティング(の市場調査の部分)を、より未来的視野で柔軟にした取り組み」と表現したのですが、実はこのあとに更に言いたいことがあったのです!
それは、どれほど未来の世界の形が変わったとしても、どんな時に感情が動くのかや、素朴な倫理観は変わらないのでないかということです。
たとえ如何に精巧に未来の都市の形を予想してみせたとしても、その完成度の高さだけでは価値も半減ではないでしょうか。
そこに実際に自分が、家族が、友人が、恋人が生きるのではないかと考えた時に、どんな感情や悩みや喜びが生まれるのかといった、エモーショナルな部分をイメージすることこそ、SF「小説」を取り入れる意味だと思うのです。
自分の人間臭い部分が、未来の世界に触れた時にどんな摩擦を生むのか? めちゃくちゃ快適でルンルンなのか? ぎこちなさや窮屈さを感じてしまうのか? そういった感情すら当たり前のものとして受け入れるようになってしまうのか?
未来の環境と生身の自分の間に生まれる摩擦のようなもの、そこまできっちり想像することで、未来に対する推進力を生むのではないかと感じました。
未来は予測して備えるものであると同時に、作り上げるものでもあるはずなので。
この本は、数々のSFに関わる専門家へのインタビューだけでなく、SF小説を書くためのワークショップのやり方も紹介されているので、自分なりの未来予想図を考えてみるのも楽しそうです。
みなさんの描く未来の中で、私達はどのように生きているでしょうか?
それでは、今日はこのあたりで。
またお会いしましょう。
<了>
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