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「イントラパーソナル・ダイバーシティ」とは何か?

「一人の中に多様性を持つこと」が、組織の成功を左右する重要な要素だと聞いたら、少し驚かれる人もいるかもしれません。この「イントラパーソナル・ダイバーシティ(個人内多様性)」という概念が、近年、経営学の分野で注目を集めています。

先日、私がよく聴く文化放送の「浜松町Innovation Culture Cafe」で、このイントラパーソナル・ダイバーシティをテーマにした回がありました。ITサービス大手のBIPROGY(旧日本ユニシス)が、人的資本経営の推進にあたり、この考え方を採用や人材育成に取り入れているという事例が紹介されていました。この話題をきっかけに、改めてこの概念について考えてみました。

イントラパーソナル・ダイバーシティとは?

入山章栄教授の著書『世界標準の経営理論』によると、イントラパーソナル・ダイバーシティとは、一人の人間が多様な知見や経験を持つことで、その内部で異なる知識やアイデアが組み合わさり、新しい価値を創出できる状態を指します。

たとえば、経営陣にこのダイバーシティを持つメンバーが多い企業は、業績が高いという研究結果もあるそうです。「組織内の多様性」だけでなく、「個人内の多様性」を重視することが、人的資本経営の鍵となりそうです。

「一つの組織に多様な人がいる」(=組織ダイバーシティ)ことも重要だが、「一人の人間が多様な、幅広い知見や経験持っている」のなら、その人の中で離れた知と知の組み合わせが進み、新し知が創造できるのだ。これを、経営学ではイントラパーソナル・ダイバーシティ(intrapersonal diversity)と呼ぶ。「個人内多様性」という意味だ。

「世界標準の経営理論」より

専門性と多様性のバランス

多様な経験を持つことが重要だと分かっていても、それが専門性の欠如につながる懸念があります。営業のスペシャリストが別部署に異動すれば、営業部門の戦力ダウンになるかもしれませんし、個人にとっても専門性を高める方がキャリア形成に有利な場合もあるでしょう。

こういった議論の際によく耳にするのが「T型人材」です。T型人材とは、ある分野で深い専門性を持ちながら、幅広い分野に関する知識や経験を併せ持つ人材を指します。このモデルは、多様性と専門性の両立を目指す理想的な形と言えるでしょう。

イントラパーソナル・ダイバーシティを高めるには?

キャリアの中で異なる業界や分野を経験することは、この多様性を高める効果がありますが、必ずしも転職が必要というわけではありません。同じ企業内でのジョブローテーションや、社外研修、異業種交流なども有効なのでしょう。

また、副業を推奨する企業も増えていますが、単に解禁するだけでなく、社員が社外の人たちと関わり経験を積めるような仕掛けを作りも必要となってくるでしょう。企業と個人が相互に協力してイントラパーソナル・ダイバーシティを育むことで、新しい価値を生み出す可能性が広がります。

まとめ

イントラパーソナル・ダイバーシティは、個人が持つ多様な経験や知見が新しい価値を生む可能性を秘めています。それは組織のイノベーションだけでなく、私たち自身の人生にも新たな選択肢を与えてくれるでしょう。専門性を深めながらも、多様な経験に目を向けること。これこそが、未来を切り拓くための鍵になるのではないでしょうか。


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