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言うは易く行うは難し? 中小企業のブランド構築について
中小企業による自社ブランドの育成。長く下請け型のビジネスモデルに従事した企業であればそれは夢のような話に聞こえるかもしれません。日経新聞に掲載され「小さくても勝てる」(12月3日付)では、ブランド構築に成功した関西の3つの企業事例が紹介されています。下請けから脱却し、独自ブランドで勝負する道は決して平坦ではありませんが、その中に多くの示唆が含まれています。
ブランド構築の成功事例
木村石鹸工業(大阪府八尾市):「12/JU-NI」シャンプー
木村石鹸は、せっけん製造で培った「釜たき」の技術を活かし、くせ毛の悩みに特化した高価格帯シャンプー「12/JU-NI」を開発。価格は500ミリリットルで3000円と、競合の倍以上ですが、天然コラーゲンによる補修効果に焦点を当て、一部の消費者から強い支持を得ました。売上は同社の約3割を占めるまでに成長しています。
昌和莫大小(奈良県広陵町):「OLENO」靴下
アパレル大手向けのOEMを主力としていた昌和莫大小は、プロスポーツ選手やランナー向けに高機能靴下ブランド「OLENO」を立ち上げました。機能性やデザイン性にこだわり、1足2200円以上という価格帯で差別化を実現。売上の約4割を占めるまでに成長し、顧客の声を素早く反映させる改善姿勢が支持を得ています。
藤田金属(大阪府八尾市):「ジュウ」フライパン
藤田金属は、鉄製フライパン「ジュウ」で自社ブランドを確立。スライド式の取っ手など独自のデザインで、価格はスーパー品の2~3倍。それでも「長持ちする」という特性が評価され、売上の9割を自社ブランドが占めるに至り高い利益率を上げてます。
上記、3社はそれぞれに自社の独自の強みを生かしてブランドの構築に成功しています。木村石鹸のホームページを拝見すると美容に関する製品を開発する企業だけあって、デザイン力があり開発におけるブランドストーリーが描かれています。そして、顧客の声もしっかりとブランド要素として取り込んでいます。おそらく、「コラーゲン」「釜たき」の優位性を顧客に説いたところで差別化は難しいことを理解した上でストーリーと口コミの力を最大限に引き出そうとしているのだと思います。
ブランド構築がもたらす効果
中小企業白書(2022年版)によると、ブランド構築に取り組む企業の6割近くが「業績にプラス」と回答。一方、取り組まない企業では、この比率は2割未満でした。また、ブランドの存在は経営者や従業員の士気向上にも寄与します。ブランドは単なる「高価格の商品」ではなく、企業の価値を顧客に直接伝える手段であり、持続可能な成長の基盤となります。
中小企業がブランド構築するためのポイント
ターゲットを明確にする
たとえ市場を狭めたとしても特定の課題や悩みを持つ顧客層に焦点を当てることが重要です。自信を持って、こんな人におすすめとい商品を作ることができれば、それにマッチした顧客はたとえ高価格帯であっても興味示してくれるはずです。木村石鹸の「くせ毛に特化したシャンプー」や、OLENOの「アスリート向け靴下」が良い例です。
差別化を図る
藤田金属は近畿大学の学生と協力して商品を開発しています。他にはない特性や機能を持つ製品を開発することで、顧客の選択肢として定着します。
顧客の声を取り入れる
昌和莫大小はプロのアスリートに、試作品を提供し、顧客の反応を素早く商品改良に反映させています。顧客の声を取り入れた商品改良はブランドの信頼性を高めるために不可欠です。
まとめ
中小企業がブランド力で成功するには、明確なターゲット設定、他にはない差別化、そして顧客との対話を通じた継続的な改善が鍵となります。これまでは、「販路」がより高い壁となって立ちはだかることもありましたが、ITのおかげでD2Cも容易になり、商品が良ければSNSで顧客の声が知名度を広げてくれるようになりました。価格競争に巻き込まれることなく、独自性で勝負するこれらの企業の取り組みは、多くの中小企業にとって参考になるでしょう。ブランド構築はリスクを伴いますが、その成果は業績だけでなく、企業全体の価値向上にも繋がります。
ブランドは企業の「顔」として、商品そのもの以上のストーリーや信頼を顧客に伝える力を持っています。この記事が、中小企業が自社ブランドを育成する際の一助となれば幸いです。