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音楽ブログを書くときに考えていること
(2023.4.9更新)
ありがたいことにフォロワーも増えてきたので、「こういうつもりで書いているブログです」という説明を書こうと思います。まず、このブログ(note)は音楽ブログです。音楽のことしか書いてありません。
「音楽を語るのは建築を踊るようなものだ」と、アメリカのコメディアン、スティーブ・マーティン(サタデーナイトライブへの出演などで著名)が言いました。音楽批評に対して、「音楽とは言語化できないもの(なのに語るなんて)」であるというジョークだと僕は理解しています。言葉で語れるものなら、音楽である必要がないじゃないか。
じゃあ音楽について何を書くのか。そして、人はなぜ「音楽について書かれた文章」を読むのか。
読み手として考えると、「1.新しい音楽を知る」か「2.知っている音楽をより深く楽しむ」ために文章を読みます。なので、僕もこのどちらかに役立つような文章を書くことを心がけています。
もう一つ「3.音楽を通して世界を知る」というテーマでも文章を書いています。1.2.と大きく言えば同じテーマなのですが、目的とするものが「音楽」だけではなく、「世界(歴史、社会)」という点が違います。たとえば、下記の記事は音楽を通じて歴史の一幕を紹介しています。
他にも、たとえば「1991年に冷戦が終結したんだよ」という歴史の知識があったとして、その時に「1991年はグランジ・オルタナムーブメントが起きて、アメリカの音楽の潮流がアリーナロックから一気に内省的に変化したんだよ」という知識と結びつくと、多面的に1991年という時代を感じられるかもしれません。そして、1991年にリリースされたアルバム、たとえばNirvanaのNevermind(1991)やMetallicaのMetallica(1991)を聴くとき、「冷戦が終わった年にリリースされたアルバムか」という視点で聴くことができます。
世界には多様な文化があります。現代日本と異なる時代、文化の中で生きる人々のことを理解することは至難ですが、音楽を通じてその一面に触れることができます。たとえば、一番身近な「日本」でも、明治・大正期となると音像はかなり異なります。西洋音楽が入ってくる前、入ってきた直後の「純邦楽」は今とは様相が違う。そこに息づく人々の暮らしも違っていたことが想像できます。
以上、このブログでは3つの視点で音楽についての文章を書いています。このどれかに役に立った、ともし思ってもらえたならば書いた甲斐があります。
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各記事は企画ごとにマガジンに分けていて、現在、9つのマガジンを連載しています。以前も紹介記事を書きましたが、試行錯誤の結果、内容がアップデートされている4つのマガジンを改めて紹介します。
1.究音室
「新しい音楽」を紹介するマガジン。2021年~2022年初頭まではアルバム単位でレビューを書くことが多かったのですが、レビューを書きながら聞くというのは分析的になりすぎるなぁと思い、2023年はもっと緩めに音楽を聴くスタイルに変わっています。数週間分まとめて「新しい音楽頒布会」として紹介しています。新譜紹介はこちら。
2.ライブレポ、コラム
最近、音源を集めることよりライブに行くことを優先しています。ライブも戻ってきたし、ライブレポが増えていく予定。だいたい月に2~3本のライブを観ています。
3.アルバムレビュー
音楽批評という分野があります。批評とは「よい点・悪い点などを指摘して、価値を決めること」とオクスフォード辞典では定義されています。この意味において、音楽を批評することは難しい。「レビュー」を直訳すると「批評」ですが、客観的に価値を決めようと思って書いているというよりは、上記した「1.新しい音楽を知る」か「2.知っている音楽をより深く楽しむ」ことに役立てばいいなと思って書いています。連載を続ける中で記事構成を試行錯誤してきましたが、現在は「自分が感じたこと」を書いています。最初に「総合評価」があり、★と文章で評価しています。上述した通り「価値を決めるための批評」という視点を明確に持っているわけではありません。星については個人的な「アルバムを聴くという体験」に対する記録です。この基準も試行錯誤して変化してきましたが、現在の各星の目安は次の通りです。
(★★★以下はアルバムを途中で聴くのをやめるので記事にしません)
★★★☆ 最後まで聞きとおせたけれど途中でやや退屈してしまった
★★★★ 最後まで楽しく聞けたけれどまた聞きたいと感じられなかった
★★★★☆ 今回は感動までは至らなかったけれどまた聞いてみたい
★★★★★ アルバムを聴いていて感動した
本当は、全部★★★★★にしたいと思って書いています。なぜなら、時間をかけて聞くならどうせなら感動したいじゃないですか。聴いたアルバム全部に感動できた方が楽しいだろうなぁ、と思いつつ、実際にはそうならないのは、僕の感受性の問題です。たとえばデスメタルを聴きなれていない人にいきなり聞かせても何を聴いていいのか分からない。ある程度そのジャンルを聴かないと、良いか悪いかというか、それ以前の「どう聞いていいのか」が分かりません。なので、より深く理解できればどんなアルバムを聴いてももっと感動できると思うのですが、感受性が足りないのでまだ全部★★★★★にはなっていないのだと思っています。
「自作曲」というマガジンで公開していますが、自分でも作詞作曲もしています。世の中に出回っている商業作品というのは、その時点で明らかに自作のものよりレベルが高いんですよね。自分の作った曲を「これでいいだろう(音楽として成り立っているだろう=感動を生むだろう)」とジャッジしている時点で、世の中に出ている音楽には何かしら感動できる要素があるはずなんですが、感動しないというのは自分の感受性が足りないのだと思っています。
なお、感動というのは「ジーンとする」「泣ける」といった感情だけではなく、「あっけにとられる」とか「驚く」とか「高揚する」とか、「感情が動くもの」すべてを指しています。
単曲でも★で評価していますが、単曲の星は「その曲で気分が盛り上がったか」を書いています。なので、アルバム冒頭から★★★★★になることはあまりありません。中盤~後半にかけて盛り上がり、感動がピークを迎えることが多いです。聴くジャンルに寄りますが、ライブ体験に近い感覚でアルバムを聴いていることが多いのかもしれません。
4.音楽楽
音楽学をもじって「音楽楽」。その名の通り、ちょっと学問的、探求的な内容を入れながら、基本的には娯楽というか「楽しむための知識」を書いているつもりです。「3.音楽を通して世界を知る」的な視点の記事もここに多く入っています。
全体として、きちんと構成を立てた企画記事、特集記事の色合いが強いマガジンです。書くのに時間をかけている記事が多いため、更新頻度はやや少なめですが、一つ一つの記事の内容は濃いと思います。
もともと、この中の企画で「ロック史をたどる」という試みを行いました。最初の2つの記事がこちら。
この後、ロック史の中でも重要なジャンルである「オルタナティブロック史」を振り返る企画、1960年代~2020年代まで、50年以上にわたるオルタナティブロックの歴史を400のアーティスト、400のアルバムを通して辿っていく連載企画を行いました。合計23万字になり、単行本2冊分ぐらいの分量になったので、初の有料マガジンとして独立させました。690円ですが、読んでいただけると幸いです。
少しだけ、連載を通して感じたことを書きます。オルタナティブロックが盛んなのはUS、UKです。時々カナダとオーストラリアが出てきますが基本的にはUS、UKの2国。なので、その2国の社会的背景にも触れています。先ほど書いた「1991年にこんなことがあった、こんな音楽が出てきた」ということがリンクすると、歴史に触れる感覚が得られるからです。たとえば、今振り返ってみると1991年の冷戦終結、それに伴う社会ムードの変化はUSの音楽シーンに多大な影響を与えましたが、UKではそこまで如実な変化は起きていません。91年のUSの変化が時間をおいてUKに波及する、USで80年代に成功してたUKのアーティストのセールスが下がるといった影響はあるもののUKの音楽シーンそのものはそこまで変化していない。それよりは2016年のブレクジットに関する国民投票、そしてブレクジット決定の方が影響が大きい。社会の空気が変わり、それがロックシーンで出てくる音像にも変化を与えています。具体的にはポストパンク的な、社会に対して強いメッセージを訴えるバンドが再登場しています。いっぽう、USはこうした変化はあまり関係なく、2010年代中盤から音像が如実に変化はしていません。むしろBLMによってR&B、ヒップホップのアーティストたちがロック的、ポストパンク的な手法を取り入れ、社会へのメッセージ性を強めている動きが目立ちます。
その他のマガジン
その他のマガジンについては以前の紹介からそれほど変わっていないので、下記の記事をご参照ください。
僕はこんなことを考えながらブログを書いています。今後ともよろしくお願いします。
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