DGM / Tragic Separation
イタリアのプログ・メタルバンド、DGM。メロハーの殿堂フロンティア・レコードに移籍しての2作目。さらにメジャー感を増し、メロディアスなコーラスラインと高度な演奏技術、重厚なプロダクションが楽しめる快作です。Dream Theaterが好きな人なら気に入るでしょう(というか最近のDTより一曲一曲のキャラクター性や娯楽性が高い気すらします)。このバンドならではのオリジナリティとも言えるのは「完成度」。スピード、メロディ、テクニック、プロダクションすべての面でここまでクオリティが高い王道プログメタルは数年に一枚出会えるかどうかレベルの名盤だと感じます。
DGMについてはこちらの記事もどうぞ。
2020年リリース
★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補
1.Flesh and Blood
荘厳なSEから、SF映画的
いきなりフルスロットル、高速ビートとテクニカル前回のフレーズ
雪崩を打っていったん収束した後、またギターの刻みからバンドが高速展開する
ボーカルが入ってくる、音圧が少し減るがギターは渦巻いている
ブリッジからコーラスにかけて開放感のある歌メロ、視界が開ける
ギターがプロペラのように回り続ける、スペーシーなキーボードが入ってくる
ハイトーンでよく伸びる声、歌心がある
高速で展開する間奏、テンションを保ったまま曲が進む
これだけのメロディとテクニックの奔流はなかなか味わえない
7分半、駆け抜ける
★★★★☆
2.Surrender
明るめのリフからスタート、テンポは速めでベースとドラムが入ってきて緊迫感が上がる
ハードロックのテイスト、ピッキングハーモニクスやボーカルラインも明るめ
ドラムはヘヴィでブリッジあたりから曲展開に転調や引っ掛かりが出てくる
爽やかなサビ、メロハー的だが転調と少しの変拍子あり、転調の入れ方が上手い
フロンティアレコードあたりの高品質メロハー感があるサビだが、最後に転調して癖がある
コーラスのあと間奏へ、きらびやかなギターフレーズ、パッションアンドフォーウェア期のVAIっぽさもある音色
テクニックが気持ち良い
★★★★★
3.Fate
トライバルで緊迫感のあるリズムから、前曲から間髪いれずスタート
ふたたびプロペラ的な、機械的に刻むリフ
スペーシーなキーボードが薄く響いてきてボーカルパートへ
ややブルージーなヴァース
歌メロが展開しコーラスへ、そこから転調してリフに戻る
めまぐるしい展開だが歌心がありメロディはつながっている
★★★★☆
4.Hope
ややミドルテンポだがグイグイ来るリズム、ギターの刻みも細かい
少しトライバル、弦をはじくようなオケヒットでボーカルヴァースへ
メロディアスなブリッジ、確かイタリアのバンドだったと思うが、イタリアらしい歌い上げる歌心がある
ギター、ベース、ドラム、ボーカルの絡み合いが高度
フレーズが多重化されていて常に表情を変えていく、コードも転調などが駆使され展開が多い
ドラマティック
ギターとキーボードのソロ、絡み合い、ハーモニーを奏でる
歌メロの密度を濃くしたDream Theaterといった趣
★★★★
5.Tragic Separation
美しいピアノから、イメージズアンドワーズのサラウンテッドを思わせる始まり
弦楽器が入ってくる、よりクラシカルな世界観
ピアノの反復フレーズをバンドがそのままリフとして引き継ぐ
開放感のある歌メロ、バッキングのギターフレーズが心地よい
エディヴァンヘイレン的なフレージング
間奏、心地よいギターリフの上で弾きまくるキーボードソロ
少しボーカルが入って、再びギター、キーボードのソロバトル
★★★★☆
6.Stranded
アップテンポなナンバー、高速ビートとギターの刻みからスタート、弦楽器の手数が多い
ベースとギターの高速リフでユニゾン、曲が突進していく
歌メロが入ってくる、どんどん展開して飽きさせない
音楽だけに集中して聴ける、聞きどころ満載
★★★★☆
7.Land of Sorrow
雰囲気が変わるスペーシーなキーボードの反復から
ヘヴィなギターが入ってくる、ベースも動き回る
ドラムも手数が多く馬力が高い、緊迫感がある
コーラスが美しい、各曲のドラマの作り方は似ているがそれぞれアレンジとメロディの質が高い
間奏からのラストコーラスあたりの盛り上がりが高揚感がある
★★★★☆
8.Silence
やや緊迫感のあるリフ、ミドルテンポで重厚感があるが高速パッセージが入る
ボーカルでは少し空気感が変わりメロディアスに、テンション感はそこまで強くないが変わったコード進行
コードに対するボーカルメロディは比較的素直な和音だが、コードの展開が独特
間奏、Journeyのような爽やかさを持ちつつより弾きまくる
★★★★
9.Turn Back Time
勢いある、機械的な正確さと突進力があるリフ
ジェント的な刻み
メロディアスなブリッジから疾走感あるコーラスへ
演奏がスリリングなので曲から風景や情景よりは演奏風景が浮かんでくる
変拍子と絡み合って終曲、時計音
★★★★☆
10.Curtain
時計音がそのまま続いてキーボードの和音が置かれる
アルバムのアウトロ、2分ほどの余韻
最後はハウリングしたような音
★★
全体評価
★★★★☆
全曲クオリティもテンションも高い
同系統でバリエーション感は少ないが、同じテンションと質をキープしているのはすごい
どの曲も似た感じとはいえ、編曲が巧みでテクニックの応酬など聞きどころがあり飽きない
このバンドならではのサウンドが高次で結実していて
「○○らしさ」は随所にあるが、全体としてこのバンドにしか作れない音楽を作り上げている
歌メロには娯楽性、大衆性もありつつ
尖鋭性、新たなチャレンジも感じる素晴らしい出来
リスニング環境
朝・家・ヘッドホン