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【総力特集】英語以外で歌われているメタルアルバムベスト30
ヘヴィメタルという音楽が定義され、確立されていった70年代~80年代。UKで生まれUSに広がっていき、80年代になると呼応するように世界各地でメタルバンドが生まれていきました。
メタル音楽の一つの特徴として「英語で歌うバンドが多い」ことが挙げられます。世界各地でさまざまなメタルバンドが生まれてきましたが、そのほとんどが英語。ポップスやロックは各国語にローカライズされていきましたが、不思議とメタルは英語が多い。それぞれの国個別のシーンよりも、世界的な「メタルシーン」への帰属意識が強いからかもしれません。
ただ、その中でも母国語で歌われたメタル作品が存在します。1990年代までは数が少ないですが、2000年代以降、いわゆる「フォークメタル」の勃興によりその国固有の音楽とメタルの融合が試みられるようになってからは各国語で歌われるアルバムも増えました。やはり非英語のアルバムだとなかなか母国以外に広がらない(=日本での知名度も低い)傾向にありますが、非英語のメタルアルバムにも名盤はたくさんあります。いや、非英語だからこそ耳新しい、新鮮な名盤がたくさんある。そんな知られざる名盤たちを紹介していきます。
なお、今回の選択は「網羅性」は意識していません。なので、「非英語の名盤を網羅!」ではなく、たまたま僕が知っていて、聞いたことがあって、面白いなと思ったものを30枚選んでいます。これを入り口に「英語以外のメタルミュージック」への興味の扉が開けば幸いです。
1980‐1990年代
Heavy Metal自体が確立し、世界に広まっていく時代。基本的にはUK、USが中心で、それ以外の国も英語でのリリースがほとんどです。その中で自国言語でアルバムがリリースされたのは音楽市場規模が大きい日本、そしてスペイン(ラテン語圏は広大)。また、80年代の後半から90年代に入るとロシアや韓国でも自国語のメタルシーンが生まれます。
Loudness/Disillusion〜撃剣霊化〜(1984)
1984年にリリースされた本作は、日本のヘヴィメタル史における重要な作品の一つ。前作までのクラシカルな要素を発展させ、より攻撃的でドラマティックな楽曲が揃っている。代表曲「Crazy Doctor」はライブの定番で、「Ares’ Lament」の荘厳なバラードも印象的。タイトル「撃剣霊化」は、剣の鋭さと魂の化身を表現していると考えられる。この作品の成功により、海外進出への足掛かりが築かれ、後に全曲英詞の英語版も制作された。日本語詞ならではの表現力と、鋭いギターサウンドが魅力の名盤。
聖飢魔Ⅱ/The End Of The Century(1986)
1986年にリリースされた2ndアルバム。ヘヴィメタルの攻撃性とキャッチーな要素が融合し、バンドの人気を飛躍的に高めた作品。歌メロが印象的な表題曲はじめ、代表曲と言える「蝋人形の館」の強烈なインパクト、「怪奇植物」はドラマティックな展開が特徴的で、日本的なメロディと重厚なギターリフが印象的な「JACK THE RIPPER」もアルバムのハイライトの一つ。名曲が目白押しの本作の成功により、バンドはメジャーシーンでの地位を確立し、日本のメタルシーンを牽引する存在となった。
X Japan/Blue Blood(1989)
1989年にリリースされたメジャー1stアルバム。激しいスピードメタルと美しいバラードが融合し、バンドの音楽性を決定づけた作品。「紅」は圧倒的な疾走感とドラマティックな展開で、代表曲として今なお愛される。「X」はバンドのテーマソング的存在で、ライブでは観客と一体となる名曲。「Endless Rain」はメロディアスなバラードで、後の作品にも通じる哀愁漂う世界観を確立した。ヘヴィでありながらも緻密なアレンジが施された「オルガスム」や「Week End」も印象的。本作の成功により、日本のヴィジュアル系シーンの礎を築き、X JAPANの名を世に広めた歴史的名盤。
Rata Blanca/Magos, espadas y rosas(1990)
1990年にリリースされたアルゼンチンのバンドの2ndアルバム。ハードロックとネオクラシカルメタルの要素が融合し、バンドの代表作となった。「La Leyenda Del Hada Y El Mago」は、美しいメロディと幻想的な歌詞が特徴の名曲で、南米ロックを象徴する一曲。「Mujer Amante」は哀愁漂うバラードで、多くのファンに愛される名作。「El Beso De La Bruja」はスピーディーな展開と技巧的なギターソロが魅力。「Días Duros」はヘヴィなリフとキャッチーなメロディが印象的で、アルバムのアクセントとなっている。本作の成功により、バンドは国際的な知名度を獲得し、スペイン語圏のメタルシーンにおける重要な存在となった。
Ария/Кровь за кровь(1991)
1991年にリリースされたロシアのバンドの6thアルバム。メンバーの入れ替わりを経て、新たな音楽的アプローチが加わった作品で、より攻撃的でダークな雰囲気が特徴。「Антихрист」はヘヴィなリフと荘厳なメロディが融合した楽曲で、アルバムを象徴する一曲。「Кровь за кровь」は激しいリズムと社会的メッセージを込めた歌詞が印象的。「Раб страха」はスピード感あふれる展開と力強いボーカルが際立つ。「Мёртвая зона」はメロディアスながらもシリアスなトーンが際立ち、バンドの成熟を感じさせる。本作のリリースにより、バンドはロシアのメタルシーンにおける地位を確立し、その後の活動の基盤を築いた重要な作品。
N.EX.T/The Return of N.EX.T Part 1: The Being(1994)
1994年にリリースされた韓国のバンドの1stアルバム。プログレッシブ・ロックとヘヴィメタルを融合させたサウンドが特徴で、韓国ロックシーンに革新をもたらした作品。「The Destruction of the Shell」は壮大なイントロと激しいギターリフが印象的で、アルバムの幕開けを飾る。「The Ocean: A Tragic Soliloquy」は叙情的なピアノとヘヴィなバンドサウンドが融合した楽曲で、アルバムの深みを増している。「날아라 병아리」は感情的なボーカルが響くバラードで、N.EX.Tの幅広い音楽性を示している。本作は韓国のロック・メタルシーンに大きな影響を与え、後のバンドの成功へとつながった歴史的な名盤。
2000年代
2000年代はさらに広がりを見せますね。エピックなのはドイツ語のRammsteinが自国はもちろん、USや欧州全域でも人気を得たこと。また、昔から盛んなスパニッシュメタルシーンからも高品質なアルバムが多くリリースされるようになります。あとは北欧メタルシーンから自国語のリリースが増えますね。少し珍しいところではトルコやフランスなど。フランスも昔からメタルシーン自体は存在します。フランスだとGojiraがグラミー賞もとりましたが、Gojiraは基本的には英語(一部フランス語詩の曲も存在しますが)。
Mägo de Oz/Finisterra(2000)
スペイン出身のバンドによる2000年リリースの3rdアルバム。フォークメタルとプログレッシブロックの要素を融合させたコンセプトアルバムで、社会批判や哲学的テーマを扱っている。「Fiesta Pagana」は、バンドの代表曲として知られ、キャッチーなメロディとエネルギッシュなリズムが特徴。「Molinos de Viento」はケルティックな要素が際立ち、バンドのシグネチャーサウンドを確立した楽曲。「Duerme…」は叙情的なバラードで、アルバムにドラマチックなコントラストを加える。「Finisterra」は10分を超える大作で、壮大なストーリーテリングと多彩な音楽性が魅力。本作はスペイン語圏のロック・メタルシーンに大きな影響を与え、バンドの国際的な知名度を高めた重要な作品。
Rammstein/Mutter(2001)
ドイツ出身のバンドによる2001年リリースの3rdアルバム。インダストリアルメタルの重厚なサウンドとダークな世界観が融合し、バンドのスタイルを確立した作品。「Sonne」は荘厳なギターリフと力強いボーカルが特徴で、ライブの定番曲として知られる。「Ich Will」はシンセとヘヴィなリズムが絡み合い、カリスマ性を感じさせる楽曲。「Mutter」は哀愁漂うメロディとドラマティックな展開が印象的で、アルバムの中核をなす。「Feuer Frei!」は激しいテンポと攻撃的なリフが際立ち、映画『×X×(トリプルX)』でも使用された。本作の成功により、バンドは世界的な人気を獲得し、以降のキャリアにおいて確固たる地位を築いた。
Avalanch/El ángel caído(2001)
スペイン出身のバンドによる2001年リリースの3rdアルバム。シンフォニックな要素を取り入れたパワーメタル作品で、壮大なストーリーテリングとドラマティックな展開が特徴。「Lucero」は美しいピアノのイントロから始まり、エモーショナルなメロディが印象的な楽曲。「Xana」はスピード感あふれるリフとキャッチーなメロディが融合し、アルバムを象徴する一曲。「El ángel caído」はアルバムのタイトル曲で、ダークな雰囲気とシンフォニックなアレンジが際立つ。「Las ruinas del Edén」は10分を超える壮大な楽曲で、アルバムのクライマックスを飾る。本作のリリースにより、バンドはスペイン語圏のメタルシーンでの評価を確立し、シンフォニック・パワーメタルの代表的なバンドの一つとなった。
Pentagram/Bir(2002)
トルコ出身のバンドによる2002年リリースの4thアルバム。トラディショナルなヘヴィメタルに加え、民族音楽の要素を取り入れた独自のスタイルが特徴的な作品。冒頭を飾る「Tigris」と「Bir」はエキゾチックなメロディとヘヴィなギターリフが融合し、アルバムの象徴的な楽曲。また、哲学的な歌詞とダークなサウンドが融合し、アルバムのメッセージ性を強調している。「Ölümlü」は哀愁漂う旋律と力強いボーカルが印象的で、バンドのシグネチャーサウンドを表現している。本作はトルコのメタルシーンにおいて画期的な作品とされ、バンドの評価を国内外で確立する重要な一枚となった。Apple Musicは単体のアルバムがないのでこの時期のアルバムをまとめたコンピが上記。
Metsatöll/Hiiekoda(2004)
エストニア出身のバンドによる2004年リリースの2ndアルバム。フォークメタルと伝統的なエストニアの民族音楽を融合させた作品で、バンドの音楽性を確立した重要な一枚。「Sõjasüda」は力強いリフと民族楽器の組み合わせが印象的で、アルバムの代表曲の一つ。「Hiiekoda」はタイトル曲として、神秘的な雰囲気と荘厳なメロディが際立ち、アルバムの核となる楽曲。「Lahinguväljal näeme, raisk!」は疾走感のあるヘヴィなナンバーで、バンドの攻撃的な一面を見せる。「Oma laulu ei leia ma üles」はエストニアの伝統音楽の影響を色濃く感じさせるアコースティック調の楽曲で、アルバムに多様な表情を加えている。本作のリリースにより、バンドはエストニア国内だけでなく、国際的なフォークメタルシーンでも注目を集める存在となった。
Teräsbetoni/Metallitotuus(2005)
フィンランド出身のバンドによる2005年リリースの1stアルバム。ヘヴィメタルの伝統を重んじるストレートなサウンドと、フィンランド語の力強い歌詞が特徴の作品。「Taivas lyö tulta」はバンドの代表曲として知られ、力強いコーラスと重厚なギターリフが印象的。「Vaadimme metallia」はメタルへの誓いを歌ったアンセム的な楽曲で、バンドの精神を象徴している。「Orjatar」はドラマティックなメロディとエピックな雰囲気を持ち、アルバムの中でも特に印象に残る一曲。「Teräksen varjo」はミッドテンポのヘヴィなリフと壮大なコーラスが融合し、アルバムに深みを与えている。本作はフィンランド国内で高い評価を受け、バンドは瞬く間に人気を獲得。伝統的なヘヴィメタルの復権を目指した彼らのスタイルが、多くのメタルファンの支持を集めた。
Catharsis/Крылья(2005)
ロシアのバンドCatharsisが2005年にリリースしたアルバム『Крылья(Wings)』は、シンフォニック・パワーメタルの要素を強調した作品で、壮大なメロディとクラシカルなアレンジが特徴的である。収録曲には、序曲「Увертюра」から始まり、力強いギターリフとシンフォニックな要素が融合した「Кто Ты?(君は誰?)」、疾走感のある英語詞の「Hold Fast」、キャッチーなメロディが際立つタイトル曲「Крылья(翼)」などがある。また、エモーショナルなバラード「Талисман(お守り)」や、スペイン語で母を意味する「Madre」など、多彩な楽曲が収められている。このアルバムは、バンドの音楽性をさらに洗練させ、ロシアのメタルシーンにおける地位を確固たるものとした重要な作品である。
Moonsorrow/Verisäkeet(2005)
フィンランド出身のバンドによる2005年リリースの4thアルバム。ペイガンメタルとブラックメタルの要素を融合させた壮大な作品で、長尺の楽曲と重厚なサウンドが特徴的。「Karhunkynsi」はアルバムの幕開けを飾る楽曲で、激しいリフとフォーキッシュなメロディが融合。「Haaska」はダークな雰囲気を持ち、荘厳なコーラスと叙事詩的な展開が印象的な一曲。「Pimeä」はブラックメタルの影響が強く、荒々しいヴォーカルとドラマティックな楽曲構成が際立つ。「Jotunheim」はエピックなスケールを持ち、アルバムのクライマックスを彩る壮大な楽曲。本作はフィンランドのペイガンメタルシーンにおいて高く評価され、バンドの独自性を確立する重要なマイルストーンとなった。
Boris/Pink(2005)
日本出身のバンドによる2005年リリースの10thアルバム。ドローン、ストーナーロック、ノイズ、ハードコアなど多様な音楽性を融合させた作品で、バンドの国際的評価を決定づけた一枚。「Farewell」はシューゲイザー的なサウンドと重厚なギターが特徴の壮大な楽曲。「Pink」はアルバムタイトル曲で、激しいノイズギターと荒々しいエネルギーが炸裂する。「Woman on the Screen」はパンク要素の強い疾走感あるナンバーで、アルバムのダイナミズムを象徴。「Just Abandoned Myself」は長尺の楽曲で、ノイズとアンビエントが混じり合う実験的な仕上がり。本作は海外で高い評価を受け、Borisが世界的なカルト的支持を得る契機となった。
Alcest/Souvenirs d'un autre monde(2007)
フランス出身のバンドによる2007年リリースの1stアルバム。ブラックメタルの要素を取り入れつつ、シューゲイザーやポストロックを融合させた独創的なサウンドが特徴的な作品。「Printemps Émeraude」は幻想的なギターサウンドと透明感のあるメロディが際立つオープニングナンバー。「Souvenirs d’un autre monde」はタイトル曲として、優美なアルペジオと夢幻的な雰囲気がアルバム全体のテーマを象徴する。「Les Iris」は穏やかでメロディアスな展開の中にメランコリックな感情が溶け込んでいる。「Tir Nan Og」はアルバムのラストを飾る楽曲で、神秘的な響きとアンビエントな余韻が印象的。本作はポストブラックメタルの先駆的な作品とされ、Alcestの独自の美学を確立する重要なマイルストーンとなった。
Shining/V - Halmstad (Niklas Angående Niklas)(2007)
スウェーデン出身のバンドによる2007年リリースの5thアルバム。鬱屈とした雰囲気と極端な感情表現が特徴のディプレッシブ・ブラックメタル作品で、バンドの代表作の一つ。「Yttligare Ett Steg Närmare Total Jävla Utfrysning」は静謐なアルペジオと荒々しいブラックメタルパートが交錯し、アルバムの世界観を象徴する楽曲。「Längtar Bort Från Mitt Hjärta」はメロディックなギターラインが印象的で、深い絶望感と美しさを兼ね備える。「Låt Oss Ta Allt Från Varandra」は狂気的なボーカルと変則的なリズムが混じり合い、不穏な空気を生み出す。「Besvikelsens Dystra Monotoni」は鬱屈とした詩的な世界観が際立ち、アルバムの終盤を彩る。本作はバンドの音楽性を深化させ、ディプレッシブ・ブラックメタルというジャンルを代表する作品の一つとして広く認知されるようになった。
Equilibrium/Sagas(2008)
ドイツ出身のバンドによる2008年リリースの2ndアルバム。シンフォニックで壮大なスケールのペイガンメタル作品で、民族音楽の要素と重厚なオーケストレーションが融合している。「Prolog auf Erden」はアルバムの幕開けを飾る壮大なインストゥルメンタルで、物語の序章を演出。「Blut im Auge」は疾走感のあるリフとエピックなメロディが際立ち、アルバムを象徴する楽曲。「Unbesiegt」は勇壮な雰囲気を持ち、バンドのパワフルなサウンドが炸裂する。「Mana」は16分を超えるインストゥルメンタル大作で、壮大なオーケストレーションと民族的なメロディが融合し、アルバムのクライマックスを飾る。本作はバンドの知名度を一気に押し上げ、ペイガンメタルシーンの中でも特に高く評価される作品となった。
Аркона/Goi, Rode, Goi!(2009)
ロシア出身のバンドによる2009年リリースの5thアルバム。スラヴ民族音楽とペイガンメタルを融合させた壮大な作品で、フォーク楽器と激しいメタルサウンドが絶妙に絡み合っている。本作はバンドの国際的な評価を高め、スラヴ・ペイガンメタルの代表的な作品の一つとして広く認知されるようになった。アルバムタイトルの「Гой, Роде, Гой!」は「万歳、ロッド、万歳!」を意味し、ロッドはスラヴ神話における宇宙の父神である。
このアルバムは、壮大なメロディと多彩な民族楽器の使用が特徴で、特に15分を超える大作「На моей земле(私の地で)」では、スウェーデンのMånegarm、リトアニアのObtest、ドイツのMenhir、ラトビアのSkyforger、オランダのHeidevolkなど、各国のバンドのボーカリストが参加し、それぞれの母国語で歌唱している。このアルバムは、バンドの音楽性をさらに深化させ、国際的な評価を高める重要な作品となった。
なお、今回のリスト全般に言えるが表記が母国語の場合とアルファベット表記の場合で異なる。たとえば本作だと下記の通り。Apple Musicは英語表記だが、検索するときはどちらでも出てくることがあるので紛らわしい。
1. Гой, Роде, Гой!(Goi, Rode, Goi!) – 6:13
2. Тропою Неведанной(Tropoyu Nevedannoy) – 6:24
3. Невидаль(Nevidal) – 4:34
4. На моей земле(Na Moyey Zemle) – 15:10
5. Притча(Pritcha) – 0:54
6. В цепях древней Тайны(V Tsepyakh Drevney Tayny) – 6:26
7. Ярило(Yarilo) – 2:31
8. Лики бессмертных Богов(Liki Bessmertnykh Bogov) – 5:19
9. Коло Нави(Kolo Navi) – 4:18
10. Корочун(Korochun) – 2:11
11. Память(Pamyat) – 5:46
12. Купалец(Kupalets) – 2:49
13. Аркона(Arkona) – 6:36
14. Небо хмурое, тучи мрачные(Nebo Khmuroye, Tuchi Mrachnyye) – 10:28
2010‐2020年代
2010年代以降でエポックメイキングなのはやはりBabymetalでしょうね。アイドルポップという異質なものを組み合わせたのもそうですが、「日本語」の歌詞というのも特徴です。他、モンゴル(正確には中国の内モンゴル自治区)からTengger Cavalryが、モンゴルからThe HUが。他にもイタリア語のマネスキンがユーロビジョンを取ったり(彼らはハードロックと呼べるでしょう)、非英語のアルバムがだんだんと世界的な話題になるようになってきます。呼応するかのように昔から活動し、基本的に英語だったアーティスト、たとえばOpethが初のスウェーデン語アルバムを出したり、Sighが日本語のアルバムを出したり、Nanowar of Steelがイタリア語のアルバムを出したりといった動きも見られます。
Sólstafir/Svartir Sandar(2011)
アイスランド出身のバンドによる2011年リリースの4thアルバム。ポストメタルとプログレッシブロックの要素を融合させた作品で、広大なサウンドスケープと叙情的なメロディが特徴的。「Ljós í Stormi」は静寂から激しさへと展開するダイナミックな楽曲で、アルバムの幕開けを飾る。「Fjara」はメランコリックなメロディとエモーショナルなボーカルが際立つ代表曲で、バンドの人気を決定づけた。「Þín Orð」は浮遊感のあるサウンドとドラマティックな展開が印象的な楽曲。「Svartir Sandar」はアルバムのタイトル曲として、広大なアイスランドの風景を思わせる壮大な雰囲気を持つ。本作のリリースにより、バンドはポストメタルシーンでの評価を確立し、アイスランドの音楽シーンにおいても独自の地位を築いた。
Dalriada/Ígéret(2011)
ハンガリー出身のバンドによる2011年リリースの6thアルバム。ハンガリーの民族音楽とパワーメタルを融合させたフォークメタル作品で、勇壮なメロディと伝統楽器の響きが特徴的。「Hajdútánc」は疾走感のあるギターリフとハンガリー民謡の要素が融合した楽曲で、アルバムの幕開けを飾る。「Igéret」はタイトル曲として、エピックな構成と壮大なメロディが際立つ代表曲。「Leszek A Hold」は美しい女性ボーカルと力強いバンドサウンドが交差する印象的な楽曲。「A Hadak Útja」はダイナミックなリズムと戦記的な歌詞が特徴で、アルバムのクライマックスを飾る。本作はバンドの人気をさらに押し上げ、ハンガリーのフォークメタルシーンにおいて確固たる地位を築く重要な作品となった。
Tengger Cavalry/远古呼唤 (Ancient Call)(2014)
中国出身のバンドによる2014年リリースの5thアルバム。モンゴルの伝統音楽とメロディックデスメタルを融合させたユニークな作品で、ホーミー(喉歌)や馬頭琴の使用が特徴的。「苍狼(Galloping Towards the Great Land)」は勇壮なリフと民族楽器が絡み合い、アルバムの幕開けを飾る代表曲。「草原之力(Battle Song from Far Away)」は戦士の誇りを感じさせる楽曲で、疾走感あふれるギターと力強いホーミーが印象的。「乌云下(The Battlefront)」は激しいリズムとドラマティックな展開が際立ち、アルバムのハイライトの一つ。「远古呼唤(Ancient Call)」はタイトル曲として、モンゴル文化への敬意と壮大なスケールを感じさせる楽曲。本作はバンドの国際的な評価を高め、モンゴル・フォークメタルという独自のジャンルを確立する重要な作品となった。Tengger CavalryはこのアルバムだけApple MusicにないのでBandcampから。
Babymetal/Babymetal(2014)
日本出身のバンドによる2014年リリースの1stアルバム。アイドルポップとヘヴィメタルを融合させた独自のサウンドで、世界的に注目を集めた革新的な作品。「メギツネ」は和風メロディとヘヴィなリフが融合し、バンドの代表曲として知られる。「ギミチョコ!!」はキャッチーなコーラスと激しいギターが対照的な楽曲で、国際的なヒットとなった。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は壮大なメロディとスピードメタルの要素が際立つアンセム的な楽曲。「紅月 -アカツキ-」はドラマティックな展開と力強いボーカルが特徴的で、アルバムのハイライトの一つ。本作のリリースにより、バンドは世界的なメタルシーンに衝撃を与え、ジャンルを超えた人気を獲得することに成功した。
The Hu/The Greg(2019)
モンゴル出身のバンドによる2019年リリースの1stアルバム。伝統的なモンゴル音楽とハードロック/ヘヴィメタルを融合させたユニークな作品で、ホーミー(喉歌)や馬頭琴を駆使した独自のサウンドが特徴的。「Yuve Yuve Yu」は力強いリズムと民族的なメロディが印象的な楽曲で、バンドの代表曲の一つ。「Wolf Totem」は重厚なグルーヴと戦士の誇りを感じさせるサウンドが特徴で、国際的なヒットを記録した。「The Great Chinggis Khaan」はモンゴル帝国の歴史をテーマにした壮大な楽曲で、バンドのアイデンティティを強く打ち出している。「Shireg Shireg」は静謐な雰囲気の中に伝統楽器の美しさが際立ち、アルバムに深みを加える。本作のリリースにより、バンドは世界的に注目され、モンゴル・ロック/メタルの新たなスタイルを確立することに成功した。
Opeth/In cauda venenum(Swedish Version)(2019)
スウェーデン出身のバンドによる2019年リリースの13thアルバム。プログレッシブ・ロックとヘヴィメタルを融合させた壮大な作品で、バンドのクラシカルな音楽的アプローチが際立つ。スウェーデン語で制作されたバージョンは、独特のリズムや響きを持ち、楽曲のドラマ性をより際立たせている。「Svekets Prins」はダイナミックなリフと叙情的なメロディが融合し、アルバムを象徴する楽曲の一つ。「Hjärtat Vet Vad Handen Gör」はプログレッシブな展開とエモーショナルなボーカルが印象的で、アルバムのハイライトの一つ。「Minnets Yta」は幻想的な雰囲気を持ち、繊細なギターと深みのある構成が特徴的。「Allting Tar Slut」はエピックなスケールを持ち、バンドの成熟した音楽性を存分に感じさせる。本作はバンドのプログレッシブな方向性をさらに推し進め、スウェーデン語による表現が楽曲の奥行きを深める要素となった。Apple Musicは英語版とスウェーデン語版が2枚組扱いなので、2枚目の方。
Måneskin/ Teatro d'Ira, Vol. 1(2021)
イタリア出身のバンドによる2021年リリースの2ndアルバム。グラムロックやオルタナティブロックの要素を取り入れたエネルギッシュな作品で、荒々しいサウンドと情熱的なボーカルが特徴的。「Zitti e Buoni」はユーロビジョン・ソング・コンテスト2021で優勝し、バンドの国際的ブレイクのきっかけとなった楽曲で、攻撃的なギターリフとパワフルなヴォーカルが際立つ。「Coraline」は叙情的なバラードで、繊細なメロディとドラマティックな展開が印象的。「I Wanna Be Your Slave」は英語詞で歌われ、セクシーで挑発的な雰囲気を持つキャッチーな楽曲。「Lividi Sui Gomiti」は疾走感あふれるロックナンバーで、バンドの持つダイナミズムを感じさせる。本作のリリースにより、バンドは世界的な知名度を獲得し、現代ロックシーンを牽引する存在としての地位を確立した。
Nanowar of Steel/Italian Folk Metal(2021)
イタリア出身のバンドによる2023年リリースの6thアルバム。パロディ・メタルの要素を持ちながら、イタリアの伝統音楽とメタルを融合させたユニークな作品で、ユーモアと音楽的完成度の高さが際立つ。「Chupacabra Cadabra」はパワーメタル的な疾走感と陽気なメロディが特徴の楽曲で、アルバムの幕開けを飾る。「La Polenta Taragnarock」はイタリアの郷土料理ポレンタをテーマにした曲で、フォーク要素とエピックなメタルサウンドが融合した代表曲。「Scugnizzi of the Land」はナポリ民謡とメタルをミックスした楽曲で、アルバムの中でも異色の存在。「Sulle Aliquote della Libertà」は社会風刺的なユーモアを含みつつ、バンドの演奏技術の高さを示している。本作のリリースにより、バンドはコミカルな要素と本格的なメタルサウンドを融合させる独自のスタイルをさらに確立し、イタリアのメタルシーンにおいて異彩を放つ存在となった。
Sigh/Shiki(2022)
日本出身のバンドによる2022年リリースの12thアルバム。ブラックメタルを基調としながら、ジャズ、プログレッシブロック、トラディショナルな和の要素を取り入れた実験的な作品で、死や無常観をテーマにしている。「Kuroi Kage」はダークな雰囲気の中に和楽器の響きが溶け込み、アルバムの幕開けを飾る。「Shoujahitsumetsu」は激しいリフと複雑な楽曲展開が特徴で、アルバムの中心をなす楽曲の一つ。「Shikabane」は不穏なメロディと変則的なリズムが絡み合い、独特の緊張感を生み出している。「Mayonaka no Kaii」はミステリアスな雰囲気を持ち、アルバムの中でも特に異色な存在として際立つ。本作はSighの音楽的探求の集大成とも言える作品で、独自のブラックメタルをさらに深化させ、日本ならではの死生観を音楽で表現する試みが高く評価された。
Bloodywood/Rakshak(2022)
インド出身のバンドによる2022年リリースの1stアルバム。ヘヴィメタルとインドの伝統音楽を融合させた独自の「インディアン・フォークメタル」を確立し、社会的メッセージを強く打ち出した作品。「Gaddaar」は腐敗した政治に対する怒りを込めた楽曲で、激しいリフとパンジャーブ語のパワフルなラップが融合した代表曲。「Dana-Dan」は社会的不正義をテーマにし、ブルータルなヴォーカルと民族楽器のタブラやフルートが絡み合うエネルギッシュな一曲。「Jee Veerey」は希望と闘志を鼓舞するアンセム的な楽曲で、インドのメタルシーンを象徴するナンバーの一つ。「Machi Bhasad」は伝統的なメロディとモダンなメタルサウンドが見事に融合し、バンドの音楽的な多様性を示している。本作のリリースにより、バンドは国際的な注目を集め、インドメタルシーンの新たな可能性を示す存在として急成長を遂げた。
Ὁπλίτης/Ψευδομένη(2023)
中国出身のバンドによる2023年リリースのアルバム。バンド名の読みはホプリテス(ギリシア語で「重装歩兵」)。ディソナント・ブラックメタルを基調としながら、マスコアやデスメタルの要素を融合させた実験的な作品で、複雑なリフと変則的なリズムが特徴。「Δημήτηρ」はアトナルなギターと激しいブラストビートが絡み合い、混沌とした雰囲気を生み出す。「Ψευδόμαντις」は攻撃的な展開の中に細かく構築されたメロディが溶け込み、アルバムの中心をなす楽曲の一つ。「Ὁ τῶν δακρύων ψεῦδος」は長尺の楽曲で、スラッジ的な要素と静寂を生かしたコントラストが印象的。「Αἰνιγμάτων Λύσις」は不穏なメロディと重厚なリズムが組み合わさり、アルバムの終盤を彩る。本作はブラックメタルの枠を超えた独自の音楽性を確立し、エクストリームメタルシーンに新たな視点を提示する重要な作品となった。
以上! 30枚でした。メタルボーカルの中心がハイトーンスクリームからグロウル、ガテラルといった歪みが強い声になるにつれて母国語でのリリースも増えてきている気がします。節回しとかメロディとかがあまり言語に依存しなくなったからかもしれません。ただ、ここに見てきたようにさまざまなスタイルのバンドが存在しますし、各地の民族音楽と融合した多様性こそが非英語メタルの醍醐味。このリストをきっかけにあなただけの推しが見つかり、世界音楽への扉が開ければ望外の喜びです。
それでは良いミュージックライフを。