マックの物語(14)
マックはひどく疲れていた。
「俺はもう世界一の無気力星人一号だ」光線を
体全体から発している。
髪も伸びてしまい
眼鏡を覆っている。
初めて会った時のマックだ・・・
「お~久しぶり~
元気だったか~」
必要以上に明るい僕、
「・・・」
二ヶ月前に逆戻りか・・・
「ゴールデンウィークは何やってたの?」
少し元気に聞きすぎた?
「ええ、まあ・・・」
「何、どこか行ったの?」
「外には絶対に出ませんでした」
何でそんなことを
キッパリと学級委員のように言うのだ。
本当に一歩も出なかったらしい。
ほとんど毎日寝転がって過ごしたようだ。
気力がわかず、体が言うことを
きかないのだと・・・切なそうに言った。
自分でも原因不明なのだろう、
まだ、まだ力がたりないんだ。
「今日はよく頑張って来たな!」
率直にほめた。
「ええ・・・ずっと来たかったので・・・」
おおっ、そうか、そうか、そういう気持ちは
あったんだな。
マックの気持ちが少しずつ
溶けてゆくのが分かる。
自分で本棚に向かい、
物色し始めた。
本棚に向かうマックから
「無気力光線」が消えていた。
本がマックを刺激したのか?
「歴史もん・・・シリーズでしたよね・・・」
「おっ・・お~、そうだよ。歴史だよ
歴史だよ、歴史だよ!!そうなんだよ歴史だよな!」
何回繰り返すんだ、嬉しさを隠せない。
前向きな姿勢が猛烈に嬉しかった。
マックやる気あるじゃんか!
ゴールデンウィークの前に二人で
打ち合わせした計画で。
坂本竜馬、武田信玄、織田信長、徳川家康、
などの歴史ものを読み切ろうというものだ。
マックはすごく乗り気だった。
しっかり覚えていたんだな。
よし、最初からやり直しだ。
頑張ろうぜマック!!
何度くじけたっていいじゃないか、
「男の強さ」とは「倒れない」ことではなく、
「何度倒れても立ち上がること」だ!
短時間で出来上がったものは
壊れやすいが、
長い時間をかけて積み上げたものは
壊れにくいんだ。
まだたったの2ヶ月だ、
1年かかったって、2年かかったって
いいじゃないか。
そうだな
「焦っちゃいけないんだよな・・・」
マックが駄目になったのではないか?
完全に戻ってしまったのではないか?
と表面的なことで一方的に決め付けていた。
俺も所詮、子どもの心の分からない
大人だ。情けない。
マックは心の中で闘っていた、
そして今も闘っている。
そうなんだ
一直線に真っ直ぐ伸びてゆく
やつなんていない。
「三歩進んで二歩下がる、
365歩のマーチだな・・・」
言ってみて
変なたとえだな
と思った。
マックがお気に入りの席で
読み始めた。よく集中している。
マックよ勝負はこれからだ!
「焦るなよ」
僕は自分に言い聞かせるように
つぶやいた。