京の紅葉~錦秋の装い
はじめに
春に花、夏に祭、秋に紅葉、冬に雪。
歴史ある風情と共に移ろいゆく季節を感じるとき、
日本人として生まれながら、日々の生活で忘れてしまっている何かに気付かせてくれる。
千年の都・京都にはそんな魅力があるように思います。
暑さが和らぎ、ようやく季節が進んできました。
朝晩の冷え込みなど感じると、気になるのは木々の色付き。
野山の錦とも言われる紅葉は、春の花見と並んで日本の四季を強く感じる自然の贈り物です。
紅葉の名所は全国各地にありますが、その美しさと密度では、やはり京都が圧倒的です。
今回はいくつかその魅力を紹介します。今後の旅行の計画などに役立てば幸いです。
質量ともに圧倒的―禅林寺(永観堂)
南禅寺と哲学の道の南端の間にある、浄土宗西山禅林寺派の総本山。
通称は「永観堂」と言い、「秋はもみじの永観堂」と言われるほど圧倒的な質と量を誇ります。
緑から朱、あるいは緑から黄色に美しいグラデーションを見せ、いずれの葉も形がきれいに揃っているので、遠くで見ても近くで見ても、その美しい印象を損なうことはありません。
また、永観堂には東山方面を一望できる多宝塔、首を90度左に向けた姿が珍しい「みかえり阿弥陀」、水面に紅葉の反射も楽しめる放生池などもあり、見どころ満載です。
朱に染まる参道―毘沙門堂門跡
観光客であふれる京都市の中心を離れ、山科駅から北上すること20分。
天台宗京都五門跡の一つ毘沙門堂門跡があります。
境内の周囲にはモミジやドウダンツツジが約150本あり、主に朱と赤で構成された美しい紅葉を見ることが出来ます。
市の中心部から離れるため、少しは観光客の雑踏を避けることが出来るかもしれません。
いくつも観光スポットを巡りたい場合は不向きな立地ですが、毘沙門堂と併せて、山科疎水を散策してみるのもおすすめです。
秋も絶景かな―南禅寺
石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな。春の眺めは値千金とは。小せえ、小せえ。」(楼門五三桐)の台詞で同じみの南禅寺ですが、秋もやはり絶景です。
紅葉が境内を埋め尽くすというほどではありませんが、荘厳な境内と紅葉のアンサンブルは思わず写真を撮りたくなってしまいます。
境内の奥には、明治時代に作られた赤レンガ造りの疎水もあり、和洋が交錯した美しさを見ることも出来ます。
非公開の魅力―興臨院・高桐院
京都市街の北西、北大路通の北側にある大徳寺。
その境内には20を超える塔頭(大寺院の敷地内にある小寺院や別坊)があり、普段非公開としている寺院がいくつもあります。
これらの寺院が「秋の特別公開」など銘打って公開されるのも、シーズンの魅力です。
それぞれの寺院は、石庭や花手水など微に入り細に入り手がかけられていて、都会の喧騒を離れて心が洗われるような気持ちになります。
特別公開の寺院は、超メジャーな寺社と異なり、観光客も若干減るので平日などであれば静かに見学することが出来るかもしれません。
おわりに
今回紹介の写真は、いずれも11月下旬に撮影したものです。
2023年も、11月25日頃が紅葉の見ごろのようですが(日本気象協会9/12時点発表)、ちょうど週末にかかるため、少しずらした方が良いかもしれません。
紅葉シーズンには、特別拝観以外に夜間拝観を行う寺社もあります。
紅葉がライトアップされたり、プロジェクションマッピングで華やかに彩られたりして、それはそれで幻想的ですが、純粋に紅葉を見るなら天気の良い昼間が一番良いでしょう。