やすべい

好きなものを好きな時に好きなだけ。 好きなもの:藤子不二雄、クリント・イーストウッド、…

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好きなものを好きな時に好きなだけ。 好きなもの:藤子不二雄、クリント・イーストウッド、ルパン三世、写真、京都、映画、歴史etc.

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「クライ・マッチョ」―老境のイーストウッドが放つ人生賛歌

鉄は熱いうちに打て、感想は熱いうちに書け。ということで、昨日、第34回東京国際映画祭のオープニング作品として上映されたクリント・イーストウッド監督の最新作「クライ・マッチョ」の感想を書きたいと思う。 ハリウッドの生きる伝説、クリント・イーストウッド監督の第40作目にして、監督業50周年に公開される映画「クライ・マッチョ」。 ストーリーは、老いたる元ロデオスターと少年の交流を通じて、人生における「本当の強さとは何か」が描かれるロードムービーである。 ※以降ネタバレを含みま

    • 「鉄道員(ぽっぽや)」の「憤死」―没後10年・高倉健(前編)

      はじめに2024年11月10日、映画俳優・高倉健が亡くなられて10年となった。 東映スター時代がリアルタイムでない私にとって、私の中の高倉健像は、映画「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)で厳寒のホームに立つ駅長・佐藤乙松の姿だ。 高倉健が好んだ言葉「寒青*」を彷彿とさせる真っ白な世界に屹立する姿が目に浮かぶ。 *漢詩に表れる語で、「凍てつく風雪の中で、木も草も枯れ果てているのに松だけは青々と生きている様子」を表す。王陽明の語とされている。 以前に「鉄道員(ぽっぽや)」に

      • 清水坂の“焼き”生八ツ橋―旅の途中で

        かれこれ20年ほど前になる。 学生の貧乏旅行で京都へ行った時のことである。 格安の夜行バスで午前6時に京都に着いた私は、八条口のなか卯でうどんをすすった後、早朝の京都観光に出かけた。 閉門時間のない仏閣をさまよい歩いて、ようやく店なども開こうかという時間には清水寺に向かっていた。 五条坂から清水寺へ。朝のためか人気がない。 今でこそインバウンドの波を回避するために、早朝の京都観光を勧めるガイドブックなどあるが、当時は平日の清水周辺などは修学旅行生がいる程度であった。まして

        • 「山田康雄の戦い」の誤りを正す

          名優・山田康雄の誕生日(9月10日)に合わせ、ネット上に出回っている動画の誤りを正してみたいと思う。 現在、Googleで「山田康雄」と動画を検索すると、上位に以下のような動画が表示される。 これは元々、2009年9月10日(金)(※)に放送された、日本テレビ系列の情報・バラエティ番組「おもいッきりDON!」内の「きょうは何の日」のコーナーである。 ※動画内のナレーションでは「今から78年前」とあり、山田の生年1932年から計算すると2010年になるが、「おもいッきりD

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        「クライ・マッチョ」―老境のイーストウッドが放つ人生賛歌

          売り声もなくて買い手の数あるは

          落語の「売り声」を聞くと、江戸の頃は様々な売り詞が通りを賑わしたようだ。往来の雑踏から一際目立つように工夫した売り声は、単に商売のための販促以上の趣きがある。 5代目古今亭志ん生の「井戸の茶碗」で聞ける「くず~い」という屑屋の掛け声なども随分と風情がある名演だ。 同じ風情でも、風鈴屋の風情は売り手ではなく商品そのものにある。 「売り声もなくて 買い手の数あるは 音に知られる風鈴の徳」 とは、江戸時代に流行した江戸風鈴の売り子を良く表した狂歌だ。 吹きガラスで作られた鈴に

          売り声もなくて買い手の数あるは

          旅考

          年始の「令和6年能登半島地震」はじめ、地震・台風等自然災害により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。 旅行のリスク旅行が好きである。 年に何度かは国内旅行に出かける。 旅行の目的は様々だが、そこでしか見られないもの・食べられないものを求めて行くことが多いだろうか。 旅行中の非日常的な部分はもちろんのこと、旅程を考えたり、電車やバスの乗り継ぎを調べたり、現地で1時間に1本しか無い電車待つことさえ、楽しみになっている。 ところが近年、旅行を楽しむこともままならなくな

          耳障りの良いアヤシイ言葉たち

          自戒を込めてだが、世間で使用される語彙が減ったなぁと思う。 思えば、90年代に「超むかつく」のようになんでも「超」を付けるようになり、「ロン毛」とか「キムタク」とかなんでも略すようになった頃から怪しくなったように思う。 まぁ嵐寛寿郎を「アラカン」、断然トップを「断トツ」と言ったように、昔からあるにはあるのだが、なぜ90年代かというと、その後の通信端末の発展と関係があるように思うからだ。 PHSやガラケーの進化とともにメールやチャット文化が浸透し、文字はすべて入力・変換が当

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          ヒーローは必ず帰ってくる―帰ってきたあぶない刑事

          「アンコールの声が聞こえたら…」2016年1月30日、「さらば あぶない刑事」の初日舞台挨拶。 大下勇次役・柴田恭兵の言葉である。 前作「さらば あぶない刑事」は、監督・村川透、製作総指揮・黒澤満、脚本・柏原寛司、撮影・仙元誠三、キャストにこの映画のためだけに俳優復帰した山西道広含め、レギュラーメンバー総出演の、まさに「最終作」に相応しい作品であった。 私もそれを強く感じたので、小雨降る横浜ブルク13の初回上映後舞台挨拶と夕方からの丸の内TOEIの舞台挨拶に参加した。

          ヒーローは必ず帰ってくる―帰ってきたあぶない刑事

          「名探偵コナン」の30年

          今年の1月で連載30周年を迎えた「名探偵コナン」(青山剛昌/1994-)。 連載当初は地味な印象のあった推理漫画というジャンルで30年におよぶ長期連載となり、かつ先月公開の映画が昨年に続いて興行収入100億円を突破するなど、むしろ人気が高まっていることを感じさせる、国民的人気作だ。 30年と言えば、ほぼ平成の期間に相当し、「失われた30年」と言われる経済低迷期にも相当する期間である。 この30年での目覚ましい変化は、何と言っても通信環境だろう。 連載初期は、蘭に対して公衆

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          新緑の紅葉

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          声優交代―山田康雄から栗田貫一へ

          本日3月19日は、初代ルパン三世の声で有名な山田康雄の命日である。 今年で29年になる。 長寿アニメの声優交代は、この20年で事例が増え、受け手である視聴者も慣れたところがある。 また、声優の方もニュアンスを残しつつモノマネにならない巧みさを持つようになり、納得感のある声優交代も増えたように思う。 しかし、29年前のルパン三世役の交代は、まだまだ事例も少ない頃で、声優と役が不可分となっている場合、その交代には激しいショックと抵抗があった。 今回はその頃の経緯を振り返ってみ

          声優交代―山田康雄から栗田貫一へ

          巨匠の人間力~藤子不二雄Ⓐ先生 生誕90周年

          2024年3月10日、漫画界の巨匠、藤子不二雄Ⓐ先生が生誕90年を迎えた。 今回は90周年を記念して、2014年6月21日に行われた「手塚治虫文化賞特別賞受賞記念&@ll(オール)藤子不二雄Ⓐ刊行記念トークショー&サイン会」の模様を振り返りたいと思う。 「@ll(オール)藤子不二雄Ⓐ」とは生誕80周年を記念して刊行された記念本。 数々の作品を生んだ藤子不二雄Ⓐ先生の仕事ぶりに迫る内容で、インタビューや貴重な資料の掲載の他に、QRコードを読むことで、主要33作品合計3000ペ

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          【追悼】天下一の漫画家―鳥山明

          2024年は、少年漫画の金字塔「ドラゴンボール」の連載40周年であり辰年でもある、まさに「ドラゴンイヤー」だ(次に周年と辰年が重なるのは連載100周年となる2084年)。 本来周年企画などで盛り上がるはずが、3月8日午後、まさかの訃報が伝えられた。 2024年3月1日、漫画家・鳥山明死去。68歳。 この記事ではあまり取り上げられない点から漫画家・鳥山明を振り返り、追悼としたいと思う。 パロディからのスクラップ&ビルド特に最初期において、鳥山明の作品にはパロディやデフォルメ

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          給食戦線、異常しかなし

          給食の思い出「給食」と聞いて何を思い出しますか? カレーの日にテンションの上がる男子、お代わり争奪戦、給食特有の揚げパンやソフト麺、やたら牛乳が飲めない子・・・各世代でそれぞれに思い出があると思います。 私がまず思い出すのは、窓から差す光に照らされてもうもうと巻き上がる砂煙―。 私は給食が食べられない子どもでした。 毎日が憂鬱例えば、体育が苦手な子は、体育がない日は幸せです。 嫌いな食べ物がある子も、そのメニューでない日は楽しく過ごせます。 ですが、給食全般が苦手な子にと

          給食戦線、異常しかなし

          陽気な楽団と真夜中のエレベーターボーイ

          午後11時過ぎ―。今日はやたらと喉が渇く。 朝までを考えたら部屋の水分は心許ない。 えぇい、面倒だが飲み物を買いに行くか。 ここはビジネスホテルの最上階。 館内の案内によれば、自動販売機は2階らしい。 田舎とは言え寝巻きで出るのはまずかろう。 雑にズボンとシャツを着直して廊下に出る。 館内は静まり返っている。 19時頃にホテルに来た時点で、周囲は真っ暗だった。 日曜の夜にあまり泊り客もいないのだろう。 一基しかないエレベーターもすぐにやってきた。 2階で降りて自動販売機

          陽気な楽団と真夜中のエレベーターボーイ

          「忠臣蔵」今昔―文化の栄枯盛衰

          320年のロングセラー赤穂浪士の討ち入りが創作物の題材になったのは、討ち入りの翌年(年をまたいで討ち入りの一か月後)、1703年の「傾城阿佐間曽我」である。 以来320年。「忠臣蔵」は、歌舞伎・浄瑠璃・落語・浪曲・端唄・小唄・小説・映画・テレビドラマ・舞台・漫画etc.と媒体を変えながら、今日まで語り継がれてきた日本における一大モチーフである。 明治維新~大戦期を経て、生活様式や価値観がすっかり変わっても、耐え忍んで義を貫く赤穂浪士の物語は、幾世代にも渡って日本人を感動させ

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