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文学の感想

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小説・評論の感想です。
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記事一覧

文学の力

 私は若い頃は小説が好きで、哲学は小説を読むための肥やしであった。  実際、吉本隆明や柄…

結城保典
2週間前
16

吾輩は猫である(夏目漱石著)

 作品のタイトルは重要であって、タイトルによって作品の印象がガラリと変わってしまう。で、…

結城保典
12日前
7

狭き門(ジイド著 淀野隆三訳)

 この作品のテーマは「プラトニックな両思い」である。  それ不可能だろ、とツッコミ入れた…

結城保典
2週間前
6

フランドルへの道(クロード・シモン著 平岡篤頼訳)

クロード・シモンはずっと気になっていた作家なのだが、どうしてなのか分からず、なにしろ、同…

結城保典
2週間前
14

「言語にとって美とはなにか」(吉本隆明著)を読む

 本書はフロイトの引用から始まるのだが、吉本の言語理論にとってフロイトは無関係なのだから…

結城保典
1か月前
11

「罪と罰」(ドストエフスキー著・亀山郁夫訳)

 この小説は主人公が高利貸殺しの観念にとりつかれて、実際にヤってしまう話だけど、殺人の観…

結城保典
1か月前
9

三島由紀夫の言葉

 三島由紀夫の作品を読むたびに、やっぱ読んじゃうよな、天才だよな、と思ってしまう。具体性のない観念的な言葉でありながら、文の配置が立体的で、読ませどころがある。その中から衝撃を受けた言葉を抜粋してみた。  失うとは極まりなき支配である。  人々はただ己が身がここに在ることの幸を考えた。幾百年の歳月を隔てようとも、その幸を偲ぶ人の胸に切ないもえ立つごとき時空への憧れが生まれるような幸いである。今ここに在ることの永遠が思われたのだ。 (以上「中世」。説明は不要だろう。著者20

「トーニオ・クレーゲル」(トーマス・マン著 高橋義孝訳)

 トーマス・マンの「トーニオ・クレーゲル」という小説は、私自身、かつて男子校で同級生に惹…

結城保典
2か月前

バルトのサド論

 考えてみると現代思想の中でロラン・バルトはイロ物というか、関連出版も相対的に少ない。フ…

結城保典
4か月前