連載百合小説《とうこねくと!》冬の気配、東子さまの気配(2)
《前回のあらすじ》
朝目覚めた時、恵理子ちゃんの腕の中には東子さまが。
すやすや眠る東子さまを見て、恵理子ちゃんは昨夜の出来事を思い出していました。
東子さまと大切なことを確認し合った恵理子ちゃんは、幸せな気持ちで眠りにつくのでした。
そして、翌朝。
「すぅ……すぅ……」
私の腕の中には、静かな寝息を立てる東子さまの姿がありました。
「……えへっ」
私は小さく笑い、東子さまの前髪をサラリとかきわけました。
「ん……」
東子さまはかすかに声を出します。
私は東子さまの頬をなでました。
「んぅ……」
東子さまは小さくうなってかすかに動きます。
私はもう一度頬をなぞり、そのやわらかいほっぺをプニっとつねってみました。
「……むぎゅ」
東子さまが変な鳴き声を上げたものですから、私は思わず吹き出してしまいました。
「東子さま」
私はつぶやきます。
「むにゃ……」
東子さまはまだ寝ぼけている様子です。
こんなに愛おしい人が、こんなにすぐ近くにいる。
手のふれる距離に。
吐息を感じる距離に。
それはきっと、当たり前のことではないんです。
愛する人を近くに感じること。
それはきっと、奇跡に近い。
「……ありがとうございます」
だから、いつでも感謝を忘れてはいけません。
今、私の隣に東子さまがいること。
それはきっと、かけがえのない奇跡だから。
「……恵理子ひゃん」
目をつむったまま、東子さまが舌っ足らずな口を開きました。まだ少し眠そうです。
「はい、東子さま」
「あにゃた……さっきから私のほっぺをぶにぶにして……」
「あっ、気づいていましたか」
「ほら今も……」
「東子さまのほっぺ、すべすべのぷにぷにで気持ちいいんです」
「やめなひゃい」
「手が吸いついて離れないんです」
「んもぉっ……」
吐息混じりの色っぽい声を出したと思ったら、東子さまは私のほっぺをムギュっとつまみました。
「ふぎゅっ」
思わず変な声が出た私を見て、東子さまはニヤッと笑いました。
「お返しよぉ」
そのまま東子さまは、ぶにぶにと私のほっぺをつまみます。
「東子ひゃま、やめてくらしゃい」
「んふふ、可愛い子〜」
私の手を振り切り、完全に反撃に転じた東子さま。さっきの眠気はどこへやら、無邪気に私のほっぺをつねり続けます。
布団の中でじゃれ合うこの時間も、すべてが愛おしい。
東子さまは、私のすぐ隣にいます。
冷たい空気を呼ぶ冬の気配など、今はまったく感じません。
東子さまの気配はあたたかい愛の香りをまとって、今この瞬間を優しく包み込むのでした。
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