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日本の原点に辿り着くと、そこは日本酒の原点だった。
学生時代からの彼此20年ほどの間、常に海外と身近に接する人生の中、日本人の心性の本質は「自然へのリスペクト」にあると気付いた。
日本人の持つ自然への敬意を体現した日本酒は、そのままの姿で日本文化を表しているということ、そして日本酒の芯を形作るものが、そのまま自分に繋がっているということを前回記事に書いた。
今回はその関連記事。
奈良県の三輪にある大神神社(おおみわじんじゃ)を参拝した。
何でもない平日、珍しく何の予定もない。
心静かになれる絶好の参拝日和だ。
「三輪にあって、お酒の神様が祀られている」といった程度の圧倒的情報不足のまま赴いた。
入口の鳥居の前に立って驚いた。
そこだけ空気が凛と澄んでいるのだ。
鳥居の先に遠くまで広がる"林"が、既に神聖な雰囲気を存分に纏っている。
日本の原点に辿り着いた
日本人は古来、八百万の神と言って、大きな石や大木を見つけてはそこに綱を巻いて神様にした...
という、古来の日本人の心性のあり方をこの神社はまさに体現していた。
到着後、境内の案内看板で勉強したところによると、大神神社はその創祀に関わる伝承が『日本書紀』や『古事記』にも記されている、日本最古の神社だという。
神さまは山に鎮まるという信仰のもと、古来から本殿がなく、大神神社のすぐ後ろにそびえ立つ三輪山(自然)に直接祈りを捧げるという、古来日本人が自然に向き合った原初的な在り方を今に受け継ぐ神社。綱に巻かれた杉の大木は「神杉」として祀られ、大きな石は「磐座神社」として綱が巻かれ祀られている。
社殿ではなく、自然を拝む。
神さまというのは、大自然そのもの。
山に祈りを捧げる。
日本人の心性のあり方をこんなに分かり易く示してくれる場所は他に無いだろうと思った。
そう、ここは日本の原点なのだ。
さらに勉強すると、
神酒(ミキ)は、昔は「ミワ」と呼ばれていた。そして、昔は神さまのことも「ミワ」と呼んでいたと。現に「大神神社」と書いて、「おおみわじんじゃ」と読む。
神に捧げるお酒、そして神さまの呼称がそのまま現在の地名=三輪(みわ)になっているのだ。
これは、すごいところに来てしまった。
日本人の心性のあり方をそのまま体現したような、大自然に祈りを捧げる日本最古の神社。
その地名ミワの由来が「神さま」「神に捧げるお酒」。
日本の原点に辿り着いたら、そこは日本酒の原点だった。
日本酒とは日本文化のこと
やっぱり、日本酒とは日本文化のことなのだ。
日本人は古来から一貫して自然(神さま)に敬意を払いながら、この貴重な飲み物を醸し続けてきたのだ。
だから、
海外の方に日本のことを語って欲しいと言われたら、日本酒を語ればいい。
日本を一言で言い表すと?なんて聞かれたら、シンプルに「日本酒」と答えればいい。
ぼくらの始まりは日本酒だ。
日本人の優しさの起源はお米の優しさだ。
ぼくらは、そこからやってきたんだし、これからもそこを歩き続ける。
その静かな歩みを誇りにして。