本番を生きる
国内外問わず、メキメキと人出が増えている京都。自粛生活の記憶がどんどん薄れてゆく。
春休みなのか、若い人たちもたくさんでわいわい。
春が得意ではないので、なまあたたかく、人々が浮き足立っているこの空気感に呼吸が浅くなる。
今日はギャラリーへ再度確認したい事があり、四条方面へ出た。
ギャラリーへ向かう前に、行きたい展示を見に行く。
以前、Eテレの番組「日曜美術館」で知った三島喜美代さんの展示と、
坂口恭平さんのパステル画を見る。
パステル画展へ向かう途中、四条木屋町の交差点で路上生活者らしき
おじいさんが地べたに白い紙を置き、
絵を描いている。
行き交う人は近寄らないが、何の絵を描いているのか気になり、信号待ちをしながらじりじりと寄ってみた。
わたしの視線を感じたのか、おじいさんがこちらを見上げて目があった。
微笑んだらほほ笑み返してくれた。
この瞬間、大丈夫だと思い。
財布から小銭を出し、話しかけてみたる。
よく見ると鳩の絵だった。
鳩なのだが、細胞のような丸い粒で鳩の絵を描いている、独特のタッチ。
小銭を置いたタイミングでおじいさんがお礼を言い、話し出したが
会話の内容が嘘か本当か分からない
内容で、ひとつも理解できず
ニュアンスだけはそれとなくつかむ。
話しが長くなりそう。
「絵、がんばってください」と挨拶し立ち去った。
「神のご加護をー」と二拍手されたのを背中で聞いた。
わたしが話している間、行き交う人はどんな目で見ていただろう、
周囲の視線以上に
路上で絵を描いてお金を得るという行為の本番性。
坂口恭平さんが言っていることと
重ね合わせてみた。
自分の絵を評価して落ち込むのと、
まったく違う現実がそこにあった。
おじいさんの手元には1,000円分の小銭。
いま収入源がメルカリぐらいしかないわたしより、はるかに生活力がある。
そういえば、わたしに商人精神がまるで無いことを今朝夫と話していた。
「お金が悪いものと思ってるんじゃない」と言われ、それはあるかもしれないと思い、お金にまつわる幼少期の話をする。
わたしが未就学児の頃、旅行先のホテルのゲームセンターがたのしくて
朝食を食べ、ひとり先に部屋へ戻り父親の上着から小銭をくすねようとしたところをみつかったこと。
保育所帰りによくスーパーへ行き、母の買い物中ガチャガチャを眺めていた。
ある日、家の台所近くに置いてあった100円玉をカバンにこっそり入れた。
ガチャガチャをするために。
しかし、保育所で落としてしまい、「わたしの」と言っても信じてもらえず「お金を持ってこないで」と言われた記憶。
6歳頃の記憶が今も頭の片隅にある。
夫曰く、
「それめっちゃお金好きやん」
商人精神ではなく、商人スキルが低いのだという考えにいたる。
たしか小学生のころビーズでブレスレットを作って、
友だちに欲しいと言われ作っていたが
それを売るという発想は無かった。
このあたりは熊本へ行った時に、
坂口恭平さんと千葉雅也さんのトークショーで話していた内容に
つながっていきそう。
そろそろくまもと旅のnoteを
書けそうだ。
野生の女
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