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有機農業とプラスチックの共犯関係

稲作でメジャーに使用されている「一発肥料」という堆肥があります。プラスチックの殻を使用することで、堆肥の効果が穏やかに進行するという利点を持つ製品です。この一発肥料のマイクロプラスチック問題がNHKで取り上げられたと知りました。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210518/k10013037271000.html

稲作によるマイクロプラスチック問題

農薬や化学肥料に対する消費者・生産者の感度は上がっていますが、生産過程で発生する廃棄プラスチックについては、これまであまり問題視されていませんでした。単純に知られていなかったということもあるかもしれません。一発肥料に関しては、生産者でさえプラスチックが使用されていると認識していないケースも多いと聞きます。

有機野菜ではビニールマルチの使用が常態化

また、消費者にはあまり知られていないことですが、有機・無農薬栽培の畑作では、生産過程でほぼプラスチックが使用されています。農薬や化学肥料を使用しない代わりに、保温・防草・保水のために畝全体を覆う資材としてビニールシート(通称マルチ)が常用されているのです。いっぱしの有機栽培者ならばマルチは必須という認識さえあります。これらは一回の利用で、使用後ほぼ廃棄されます。

プラスチックの微量残渣は土壌に堆積する

畑作でのマルチの使用が稲作での一発肥料と違うのは、排水によって河川・海には流出するのはごく一部と考えられ、マルチの大部分は廃棄・焼却されるという点です。ただし、一部は日光や風雨による劣化で土壌中にもマイクロプラスチックが流出・堆積します。https://spc.jst.go.jp/hottopics/2009/r2009_zhanghua.html

「有機・無農薬」のもとで見過ごされるプラスチック問題

こうしたプラスチックに関わる環境負荷は、「有機・無農薬」という価値の下に、これまであまり問題視されずにいました。家庭菜園レベルでもマルチを使用することは常識的な手段になっており、私自身も有機栽培を行うなら手間がかからないのでマルチを使うのが賢明な選択だと思っていました。パートナーの反対により最終的に使用を取りやめ、手間のかかる草マルチにしましたが、特に深く考える機会がなければ使用していたと思います。

今後はプラスチックフリーが付加価値に

何がエシカルか、という価値観は、時代とともに移り変わっていくものだと思います。今後は無農薬・有機に加え、プラスチックフリー、フードマイレージやカーボンフットプリント(生産〜流通にいたるまでのCO2排出量)に配慮した農産物が付加価値となる気がします。物そのものとしての官能よりもコンテクストの方が付加価値が高いというのは、アートの世界を見れば一目瞭然ですが、食という極めて官能的な分野でさえも、コンテクストが勝る時代になりつつあるのだと思います。

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