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『破邪の門~HAJAーNOーMON』マーシャルバトル☆エビルの影 第4話

ぷっつり中断していた自作の漫画原作を
再開させることにいたしました。

ここまでの話は、以下の記事あらすじと
記事内にリンクを貼ってある第1話~第3話を
ご覧ください。


 ーー話は現在に戻る。ここはツルギとミツルが通う御劔学園みつるぎがくえん校門前ーー

 かろうじて包囲網から脱出したツルギとミツルは、ふたりが通う御劔学園まで逃げてきた。校門脇の通用口から飛び込んで、校門を見渡せる大きなシンボルツリーの上に登り始めた。

「ツルギ、待ってよ、もうここでも見つからないよ」そう言って、太い枝に腰掛けて幹に手を置き、もっと上まで登っていくツルギを見上げる。

「よしッ!ここならよく見える」腰のベルトに、奪った警棒を差し込んだツルギは、ミツルの数メートル上の枝にしゃがみ、右手で幹を、左手で枝分かれしている小枝をつかみ、木の葉の隙間から校門を見下ろしていた。

 ツルギとミツルが登り終えた頃、校門前に男たちがやってきた。
「おい、どこにも逃げ込めるような路地はないぞ」そう言って駆けてきた男に先に来た男が「あいつら、きっとここに逃げ込んだに違いない」そう言うと2人で校門の内側に目を凝らし始めた。

「おい、とりあえず連絡だ」ひとりの言葉に、もうひとりが内ポケットから取り出したスマホの発信ボタンを押した。数秒してから話し出す。
「はい、おそらく学校の中に逃げ込んだようです。え?学校の名前ですか?ちょっと待ってください」スマホを耳から外し仲間に学園の看板を指さして「なんて名前の学校だ」校門の門柱近くにいた男に尋ねる。

「この看板に書いてあるのは」漢字を読めずにいる男を、電話の男が押しやって苛ついた顔で
「えっとですね、うん?あの、なんとか学園と書いてあるんですが。あの御の字の御に難しい漢字で、剣みたいな。あ、そうです、その劍だと思います」自信がなさそうに応えている。

 そのまま耳にスマホを当てて相手の指示を聞いていたらしい男が言った。
「え?このまま踏み込まずに、撤収するのですか」そのあとの相手の返事に、はい了解ですと応えてスマホを胸の内ポケットにしまうと
「おい、撤収だ。引き上げるぞ」そう仲間に声をかけて、そのまま校門の前から走り去っていった。

 その様子の一部始終を、校門近くのシンボルツリーの上から見ていたツルギはミツルを見下ろして
「ミツル、やつらは引き上げたよ」といいながら、するするとミツルが腰掛けている枝まで降りてきた。

「ほんとに?油断させるために引き上げたふりして、どこかに隠れて見張っているんじゃないかしら」枝に腰掛けたまま、心配そうな顔のミツルに手を貸すと
「いや、たぶん、だいじょうぶだと思う。誰かと連絡とっていたけど会話の中で、テッシュウというのが聞こえたから」ツルギの説明にやっと安心した様子で、先に降りろというツルギの言うまま、先に地面に降りてツルギが降り立つのを、待っていた。

 ツルギは途中の枝まで降りると、一気に地面に飛び降りる。飛び降りた衝撃を吸収するように膝を屈曲させて地面に降り立ったツルギが、立ち上がってミツルに向き合うと
「あ、ボタンが」ツルギの制服の胸のボタンがちぎれて無くなっているのだ。その無くなったボタンのあとを指さしたまま、ミツルが、不安そうな表情で立っている。

「え、ボタン」ミツルが指さした胸を見下ろして「あ、ほんとだ、いつとれちゃったんだろ」
「木登りの時に、落ちたのかな?」そうやって、地面に目をこらして探そうとするミツルに
「いや、登るときには身体を木の幹に密着させずに枝と枝を伝って登るから。ここじゃないかも」
「えぇッ!じゃぁ、あの病院で闘ったときかな」今にも泣き出しそうな顔で、右手で左手を包みこみ、心配そうに口元に当てるミツルだったが
「だいじょうぶだよ、もしそうだとしても、心配することないよ、ミツル。それよりこのことを、校長にも、知らせなきゃ」
「そうだね、早く知らせなきゃね」ミツルとツルギは校門とは逆に、学園の奥に向かって走り出した。

 ふたりが向かったのは、塀で囲まれた学園の敷地の奥にあるゴミ焼却炉のある場所。ゴミ焼却炉の塀の向こうからは、気配を感じ取ったのか、甘えたような犬の鳴き声が、きゅんきゅんと聞こえてくる。

「先に登るから、待ってろミツル」そういうと、ツルギはゴミ焼却炉に飛び乗り「さぁ、ミツルも来い」差し出した右手を、ミツルが両手で掴むと一気に身体を反らしてミツルを引き上げると、ゴミ焼却炉を踏み台にして塀の向こうへと、乗り越えていった。

 塀の向こうにも、物置らしき小屋があり、その物置小屋の屋根から段々になるように建てられた犬小屋の屋根を経て、敷地内に降り立ったふたりは、じゃれてくる犬の頭をなでてから、母屋に向かって駆けていった。

 二人が駆け込んだ母屋は、御劔学園理事長の東郷竜盛の屋敷だった。
 東郷竜盛の屋敷は御劔学園と隣接している。もともと御劔家の敷地だったところに御劔学園を創設し、理事長の東郷竜盛の屋敷もその敷地の中に建てられたのだ。東郷家と薬丸家が御劔家の屋敷を挟むよう建っている。

 この東郷家の屋敷が、ツルギの育った場所である。御劔家の向こう隣にある屋敷が、ミツルの育った薬丸家である。この三家は門から玄関までは別々の屋敷として仕切られているように見えるが、建てられている屋敷の敷地はつながっている。

 広い庭の雑木林には、何本もの短棒やテニスボールが、数本の木の枝から吊るされている。両手で輪を作ったほどの太さの丸太が、空間になった場所に埋め込んである。稽古の打ち込みで削られて大きくえぐれており、打ち込み稽古の激しさを物語る。

 この東郷屋敷は、薩摩に伝わる東郷示現流の宗家筋の家柄である。代々の東郷家は、明治維新の頃よりの密命により、内閣国家安全情報調査室、略称「内調」の指揮下にあって国家の安全と平和を護持するために、密かに働いてきた家柄なのである。


ーー東郷家のリビングルームーー

 東郷家の当主でもあり、御劔学園理事長でもある東郷竜盛が、屋敷内で執務するときや来客に対応するときに使っている部屋のソファに、竜盛と向き合うように、ツルギとミツルが腰掛けている。

 東郷竜盛は、太い眉毛にどんぐり眼の顎を濃い髭が覆っている。まるで達磨さんか明治維新の立役者、西郷隆盛のようだと揶揄されるぐらい豪傑そうな雰囲気が似ている。ただしその体型は、胸に厚みはあるが、決して肥満体型ではない。鍛え上げた鋼のような強靱さで、対峙した相手に威圧感を与えるのである。

 豪胆で知られる東郷竜盛の剣術は、ひとたび剣を持たせると一刀両断の凄みを発揮し、彼の実弟でもあり薬丸自顕流を継ぐ薬丸虎徹も、多彩な技を繰り出し両者とも天秤の才を認められていた。
 両者は「ジゲン流の竜虎」と並び称されていた。その薬丸虎徹はミツルの育ての親であり、薬丸家の当主である。
 東郷竜盛は薬丸家から跡取りのなかった東郷本家に婿入りした身である。

「ほんとだってば!父さん」そう熱っぽく語るツルギの顔を薄目で見ながら「ミツルは、どう思う」とミツルに顔を向けると、ウンウンと首を縦に振り「ぜったいに、ほんとだよ伯父さん!ツルギが言ってることって嘘じゃないよ」両手で握りこぶしを突き出すように、真剣な顔でアピールする。

 無断で闘ったことを隠して、ただ目撃しただけという話に変えて、もどかしい思いで事件を説明するふたり。

「確かに怪しいことは間違いなかろう。お前たちがそこまで言うのなら、ワタシのほうでも調べてみよう」すでに何が起こっているのか薄々察知していた竜盛は、ツルギとミツルを厄介事に巻き込まないよう、その陰謀の存在については知らさずにおくことにした。

「よッし!きっと何か大きな事件だよ」そういって張り切るツルギに釘を刺すように
「ツルギとミツルは、しばらく外に出ないで、おとなしくしていることだな。かなり危ない話かもしれん。用心することだ」少しだけ本音を洩らして警告したが、その本心を知らずにいるツルギは、何の不安もない表情で
「わかったよ、稽古と学園でおとなしくしているよ」そういってミツルと顔を合わせて笑い合う。

「だいじょうぶ、ツルギのことは私が見張ってるから安心して」胸を叩く仕草のミツルに
「そうだな、ミツルが見張ってりゃ、ツルギも無茶はできんだろうからな」口元を緩めて、笑いをもらす竜盛であった。

「ところでツルギ、そのちぎれたボタンはどうした」話を聞き終えた竜盛からの質問に
「あ、そうそう、このボタン。きっと逃げ出すときに闘ったから、そのときに」最後まで聞かずに、竜盛の怒鳴り声がリビングルームに響いた。

「ばかもんッ!なぜ闘った?あれほど人前では闘ってはいかんと言っただろう」怒っている竜盛の前で、縮こまったまま小さくなっているツルギだったが、ミツルが助け船を出してくれた。

「ごめんなさい伯父さんッ!私が捕まりそうになったから、ツルギが闘うしかなかったの。私を助けてくれたの。だから許してあげて」目に涙を浮かべて哀願するミツルの顔を見て、おホンと軽く咳をしてから
「まぁ、今回は、ミツルを助けるためだったのなら、許すしかあるまい」そういうと「こっちへ来いツルギ」手招きして呼び寄せたツルギの頭を、ピシャリと叩いた。

「いてッ!」舌をペロリと出して、ミツルの後ろに隠れるようにして逃げるツルギ。竜盛が闘うことを厳しく禁じているわけは、ただ武術を修行する者に私闘を禁じているだけではなかった。それなりの理由があったのだ。

 東郷竜盛の子として育ててはいるが、ツルギの実の父親は竜盛ではない。 ツルギは竜盛にとって、大事な主筋に当たる宗主家御劔家の嫡男だった。

 当人たちにはまだ知らされていないが、ツルギとミツルは東郷家と薬丸家で従兄妹として別々に育てられている。だが実は、双子の兄妹なのだ。

 東郷家にとって、宗主家である御劔家の嫡男を、一族一門の事情により守護家の東郷竜盛が預かり育てている。双子の妹ミツルは、東郷家と同じく御劔家の守護家、薬丸家に預けられた。

 ミツルが預けられた薬丸家もツルギの東郷家も、長年にわたり宗主家である御劔家を守護する役目の家柄なのである。

【第5話へ続く】


ってことで、今回は
「『破邪の門~HAJAーNOーMON』マーシャルバトル☆エビルの影 第4話」という自作漫画原作の続きを投稿しました。😄
※見出し画像のイラストは、メイプル楓さんからお借りしました。


では!

時間切れ  ストック出して  のほほんと


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