今月の短歌 23年11月1日~11月15日
ヘブンリーブルーの押し花に見ゆる活きる力よ晩秋越えて
スマホ越しでしか事実を覗けない SNSと爛れた文化
紅葉狩りは霜月が良い 赫を背に風のない路当てなく走る
温かく染まる横顔あなたへのアンサーの先見たいけれども
西側の暖気もたらす円やかな空気も朝は肺引き締める
緋の色のガーベラを見た あの花は少しあなたの「赤」に似ていた
私には夢があります子供の頃からの夢です…ので進みます
サフランのめしべに祈る水曜日 朝寒の空 僕は産まれた
はじめての「女神転生」シリーズはギャルゲー評価の「ペルソナ4」
好々爺のような顔の愛犬と河原でダッシュ 日が暮れるまで
視覚的なリリックでは興味など起こるはず無いステレオタイプ
「受け止めて」の言葉が遠くに落下 きっと僕に外野は向かない
NBのM1500UKの何度でも蘇る情熱
決めないさ 人と景色に感謝して日の出とともに岬は見えた
デカルトは「変われること」を伝えたい PS5もそう光ってる
握れない 黒く染まった旅先を見つめるは6インチの鋏
踝を出して歩くよ純銀のアクセサリーも時計も外して
肉体と精神が乾いた器 鳴るは穂の音 あと少しだけ
J2の練習場を見学し沸き立つ気持ち 走って帰宅
ムラ染めのこだわりぬいたシンプルなダメージデニムになったみたい
フレンチの虜となった北野坂 箸で食すフォアグラソテー
またひとつ病名増える危機の日を誤魔化すための銀縁眼鏡
雨模様の朝に履いたボルドーのワラビー 俺様だぞと主張
ライラックのワンピースを着た少女ふと眼前で「またね」と告げた
視力とは何なのだろう 眼科医が驚くほどの悪化、自覚なし
平熱が36.6℃のガラスに触れた冷たい食器
終わりなんてそんなものだよ 大きくも小さくもないこのもどかしさ
あなたへの強い悲しみはしばらく消えそうにない 嫌いなくせに
眠らないアントワープを飾る窓 眠る矜持とアルチザンの美
仔羊と不可逆的な蜃気楼 アラビア数字〈5〉の上で待て
有線のイヤホンを引き抜いた夜 新月に雑音は要らない
透明になれる方法 生成り色の白鉛筆では白になる
悪夢から目が覚めたんだ どこまでも 旧友に追い掛けられるんだ
川霧を見て冷たさを感じてはくしゃみする近所のブルドッグ
伸びをしてメキメキメキと唸る節 竹の伐採かな 雷火かな