今月の短歌 23年10月1日~10月15日
幾重にも積み上げていた夏の砂 時の言葉を丁寧に読む
近鉄か阪神なのか山陽か曖昧な名で西へと向かう
踏み込みの重低音は君のもの差されるものか あと1ハロン
ヘイゼルと煉瓦と煉瓦の間でガラムに恋し僕は生きてた
選ばれた香りとボトルは愛の比喩 主張無い香に君が見える
削れたり千切れたりする巻雲は繊細な気に優しく触れる
酸味ある風に吹かれて瀬戸の橋旅路の果ての一枚の蕎麦
初秋から具合の悪いエアコンに応急処置を、紅柿の空
おしゃべりの止まらなかった少年は怖い恐いと閉じた世界へ
いつもより叙情、今宵は特別でペールカラーのハグ終えてから
空を眺めてただけで今日が終わる なんて贅沢な日なのだろう
24:30(れいじはん) 乗り過ごしては梅田駅 雑踏の中時計がゆらり
下味を付けていないモモ肉を揚げているよう秋の呼吸は
ほんのりとただ、熱源のあるものと認知されてるだけでいいです
認知症の祖母に寄り添っていた介護人形がやたら元気
蜉蝣が橋に寝そべるようにして銀杏のような足音と色
現れて流れて消えた羊の大団円に見ゆ ああ雨ですね
体重が8kg減っていてスーパーモデル、明日もきっと
赤い靴なら秋雨を拒絶してトンと弾けるバレエダンサー
彩る夢 どこかで君がまだ傍で ある筈のない会話をしてる
ミュンヘンに旅立つ前の台北は職場であった思い出の場所
ジャンプマン 初めて履いた「11」は見た目重視コートのローファー
勘違い。詠う理由はそれでいい 戻れない過去恍けてみせる
悲しみがそれほど多くない部屋で極めてアナログなアンチテーゼ
柊に水をあげる度強いねと誤解の輪廻 あなたが好きだ
靴箱を片っ端から潰してる特に誰かに譲るでもないし
パーマ液を片っ端から流してる特に誰かを巻くでもないし
一人焼肉に憧れ今日こそと意気込むが身構える顛末
まるまるとしたピオーネを頂くは当たり前ではない味を知る
渓谷の音色に乗るは黄緑の葉と葉を愛すムラサキシキブ
夜職とは違う ナンパと同じ所作 必死だったさ 美容の世界
「愛してる」とダイレクトに伝えれたことのある人、尊敬するよ
フューリーを履くなら今が丁度良い 季節を選ぶ魔法の下駄よ
コークハイでいいよ僕は 難解な言葉の羅列読んで酔うなど
世界一ブルーグリーンのジャケットが似合う吾が赤いニット着る
大丈夫 ガーベラが咲くあたりはね 澄んだ空気に満ちているから
人生の中間点を「アラフォー」とぼかしてみては黄昏る夜に
やわらかい小春日和と川風よ この物語、唄いませんか?
寝れなくて瞼の裏の藍色に巡る血の管朝見る、そして
儚くはこんな淋しい君の前 囚われの声、潮騒に逝く