2020年の秋から始まった映画『ヨコハマメリー』リバイバル上映。年をまたいだ現在も全国各地で絶賛公開中のようです。
このタイミングで、いまもっとも知名度を誇るであろう民俗学者の畑中章宏さんに、メリーさんに関する原稿を依頼しました。
なぜ民俗学者だったのでしょうか。
拙著『白い孤影 ヨコハマメリー』を一読していただければ察しが付くでしょう。
僕は十代の頃、文化人類学者になりたいと思っていました。
文化人類学と民俗学はひじょうに近しい学問です。
畑中さんが指摘するように、拙著にはその痕跡が残っていると思います。
映画『ヨコハマメリー』は一種の人情ものとして、彼女を巡る物語をまとめました。
一方拙著は後出しです。真似をしても仕方ありません。取材を重ねるうちに生身の彼女を追うことよりも、むしろ彼女の伝説の生成過程の方に関心が移っていきました。
それはもし彼女の半生が明らかになった場合、どこかで聞いたような物語である可能性が高く、それを開陳した途端彼女の伝説は霧散してしまうと考えたからです。
そんな生産性のないことをするよりも、彼女が人の目耳を集める理由を探った方がずっと面白いに決まっています。
そしてそのツールになりそうなのが民俗学なのです。
トップ画像:紫式部(土佐光起・画)