芥川賞「破局」読んだ
こんばんは。
芥川賞受賞作は気が向いたら読むようにしていて、前回はなんだか気が乗らなかった(余裕がなかった)のだけれど、今回は気が向いたので手に取ってみた。
今更ながらね。
ちなみに同受賞作「首里の馬」は読んでいる途中。
私は読書はすごく好きで、純文学はその中でも特に好き。知識は全くないけれど、言葉一つひとつ追っていくたびに著者の世界に引き込まれていくようで、美しいなあ、この人は日常の中のこの現象を、この動作を、こうやって言葉にするんだなあ、と感心してしまうから。
まあ、読むときはそれ相応の覚悟が必要というか、一周回ってスーッと流し読みしてしまいそうにもなるんだけれど。
きちんと向き合って、自分が著者の表現に追いつけたときの感覚がなんとも言い難い快感で。
そんなことはさておき、この「破局」。気持ちのいい気持ち悪さだったなあ。
まず主人公がラグビーの指導をしているっていうのが、文章の中から浮かび上がってくる彼の人物像にすごく違和感を与えるんだけれど。(オチはこの設定だからこそ納得がいくものになっている気もする)
でも主人公が同世代だからなのか、こういう人いるなあーそこらへんに、とすごく思える内容だった。
彼は公務員を目指す大学生で、自分の中のこだわりやモラル、ルールに縛られているというよりは、公務員を目指している自分、そして自分を作り出した環境に縛られていて、自律心を保っている。
その心理が彼の行動一つひとつに回りくどく描かれているんだけれど、またそれが癖になる。こんなに回りくどいのに、この主人公、めちゃくちゃ薄っぺらい人間だなと感じられるから。
この気持ちのいい気持ち悪さに追いつけると、読んでいてすごく面白くなってくる。
あまりにもその彼の思考を丁寧に書きすぎていて、こいつ、、、サイコパスだなと思ってしまいそうになるけれど、全くそんなことない。自分の外側にあるものでしか自分を律することのできない、空っぽの男の子ってだけで、現実にも絶対にいて、現実にいたら絶対に仲良くなれない人。
こんな空っぽの人間を、こんなに魅力的に表現できる著者、日々の生活をどのように捉えているのか気になってしまう。
久しぶりに読みやすく、シンプルな言葉で書かれている作品に出会った。そこに著者のこだわりがあるのかな。シンプルな言葉でここまで読者を引き込んでしまうのは驚きだった。
では、この辺で。気になる方は一度手に取ってみては。