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最強(たぶん)漫画で漫画術

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漫画の、特にコマ割関係に特化した技法について漫画を使って説明してます。 実践的ですよ(たぶん)。
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自分で自分の漫画を作る

と言っても、同人誌を作るわけではないです。 過去にやった作品で単行本になってないものを単行本にしよう、と 何年も前から考えていた、それを実行したのです。 作品は『笑え、ゼッフィーロ』。 週刊連載で370回7年半に及んだ。 連載途中にはいろいろあった。海外旅行に行った先からデータ入稿したり 家人が重い病気になったり、 母が亡くなったりした。 母が亡くなった時は葬儀の合間見て入稿してて、父に怒られた。 その父も亡くなった。 編集プロダクションに頼んで、編集をして貰った。 毎回6

漫画描く気あります?3

(トップ画像はAIに作らせた「漫画専門学校の授業風景」。ものすごく圧迫感がある!) 自分が体調不良で漫画描く気がなくなったのを良いことに 「描く気と描く材料の組み合わせ」 を並べてみて、対策を考えていくひどく自己中心的な連載。最終回。 1 描く気がある + 描く材料がある 2 描く気がある + 描く材料が今はない 3 描く気がある + 描く材料が見つからない 4 描く気がない + 描く材料がある 5 描く気がない + 描く材料が今はない 6 描く気がない + 描く材料が見つか

漫画描く気あります?2

(トップ画像はAIで作ってみた「漫画専門学校」。なんだこれ?) さて、自分が体調不良で漫画描く気がなくなったのを良いことに 「描く気と描く材料の組み合わせ」 を並べてみて、対策を考えていくひどく自己中心的な連載。 1 描く気がある + 描く材料がある 2 描く気がある + 描く材料が今はない 3 描く気がある + 描く材料が見つからない 4 描く気がない + 描く材料がある 5 描く気がない + 描く材料が今はない 6 描く気がない + 描く材料が見つからない のうちあたま二

漫画描く気あります?1

(トップ画像はAIで作ってみた「漫画専門学校の漫画の先生」。AIらしく指が変) ない時だってありますよね。ボクは二ヶ月くらい喘息で咳と痰に苦しんでてスッカリやる気がこそげ落ちてしまいました。専門学校の先生は日が来ればいかなきゃいけないので何とか続けていましたが。 そんなこと思ってたら思いついたのが「描く気と描く材料の組み合わせ」。下に列挙してみます。 1 描く気がある + 描く材料がある 2 描く気がある + 描く材料が今はない 3 描く気がある + 描く材料が見つからない

縦スクロール漫画の画面構成の特質

突如縦スクロール漫画について話す。 「ウェブトゥーンって言わないのか?」 と、疑問を持つ方もいるだろうが、この小文は縦スクロールという事象も含めているのでそれで通す。 縦スクロール漫画をほとんど読んだことがない。描いたことは……6年くらい前に学生にいろいろ話すための経験として、comicoに何本か掲載したことがあるだけ。あまりに勝手が違うのでそのまま立ち入らなくなってしまった。 最近『漫画の未来』という本を読んだ。見開き漫画と縦スクロール漫画の商業的な展開について語っていた

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー10「そのキャラクターである意味がわからない」 2

実は続きがある 前に 「キャラクターの状況より心情を描こう」 と言ったけど、実はまだ続きがあります。 それはキャラクターのどういう心情にフォーカスするか です。これは実は割りに簡単で キャラクターが大事な選択を迫られてる時の心情にフォーカスする です。 ストーリー漫画ではそこが読者にとってもっとも面白いところだからです。 数ページのお話しでもストーリーがあるなら、必ずこれを盛り込む。 「自分の作品のどこがそれかわからない」 という場合もありますが、その時は繰り返し読み直して

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー9「何が言いたいのかわからない」

いや、オレはお前が何を言いたいのか、わからない 本当に良く聞かれる言葉 「何が言いたいか、わからない」 についてである。 初めてこれを聞いたときは 「そんなにボクの表現の仕方が悪いのか」 と自責の念に駆られたけど、今は 「ボクはアンタが何を言ってるかわからないよ」 と、他責の心持ちで聞いている。 なんでこんな偉そうに聞いてるかっていうと、ボクの中で編集者の機能ってのが 「問題を摘出する人」 というふうになってきてるから。問題を上手く摘出して、それに対し漫画が対策を講じ、さら

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー8「もっと絵を上手くした方が良いよ」

ふざけんなよ! そんな偉そうな事言うならお前描けよ! 描けるようになったら言えよ! と、言いたくなるけどそれでは橋下徹くらいの知性になってしまう。そして漫画家としての立場を自ら放り出すことになってしまう。 編集者は編集者だから言えることがあるんだ、と思ってこの言葉を拝受し、分析していく方がいいと思う。 じゃあ、上手いってなんだ? まず考えて欲しいのは編集者が言う「絵を上手くする」「上手い絵」ってのはなんだ?って事であろう。 例えば上はフランシス・ベーコンというイギリ

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー7「まぁいいか」

まぁいいか 編集者からリテイクを出される。直してみせる。編集者がボソッと言う。 「まぁいいか……」 おい……。本当にいいのか? そうなのか? これは漫画家が相当傷つく言葉だ。特に自分の作品を見せているときの漫画家はものすごく敏感だから、なおのことである。編集者が実際どういう意図で言ってるかどうかに関わらず、 「これ以上こいつに言っても何も出来ないだろう。  あとは本人が責任とれば良いんだから、無駄に時間使うのはやめよう」 と言う風にしか、聞こえないのだ。 いきなり打ち棄てら

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー6  「担当から連絡がないんですよ」

担当編集者ってのは同じ漫画を作るチーム……なんだが 漫画専門学校の講師をやっていると学生越しに編集者の態度がしばしば伝わってくる。ボクも自分の仕事をするときは担当の編集者と折衝をするので、自分と重ねながら聞いている。あるとき学生の一人に持ち込みの状況を訊いたら 「担当から連絡がないんですよ」 と情けなさそうな顔をして言っていた。二ヶ月ないという。 「そりゃあもう、よそへ行った方がいいよ」 とアドバイスしたが、実際はなかなか思い切れないだろう。 「その雑誌で面白い漫画を描いて

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー5「それじゃあ売れっこないよ」

子どもの頃の興味は 週刊少年マガジンで仕事してたとき とにかく始めた連載が終わっちゃって編集会議。当時のマガジンは(多分今も)担当編集チーム制だった。 「さぁ次はどうしようか、柳葉さん、子どもの時どういう事に興味があった?野球とかさなんかないの?」 少し考え込んだ。スポーツなんか全然興味なかった。漫画と絵画と……あ、一つ興味あることがあったな。 「歌舞伎を見に行きましたね」 「歌舞伎?」 「歌舞伎。当時まだ先代鴈治郎が生きてて、北条秀司も生きてて。新作歌舞伎なんかを一人で見

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー4 「そのキャラクターである意味がわからない」

どうしてこのキャラクターにしたの? この質問も編集者がよくする。 主に短編とか長編の出だしで聞かれる言葉である。 「他のキャラクターでも良かったんじゃない?」 とワンセットになってることもある。これを聞いてアナタ(もちろんボクも)は思うだろう。 どうしてって……なんとなく。 発想の根っこなんてそんなものである。それでも精神分析でするように深掘りを続けていくと 「実はボクの両親の特に父は毒親で、学校に行ったら『お前に学問は必要ない』と言うし休んだら『人としてダメだ』と言うし、

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー3

一年ぶりに書くので書き方を忘れました 操作の仕方そのものを忘れました。なので前と同じ体裁で書けるかどうかは不明。まぁとりあえず前回の話を続けてみます。 わからないコマ割り=情熱的なコマ割り? そういうわけで『チェンソーマン』を引用しながら、わかりにくいコマ割りの話をしたわけですが、正直言えば藤本さんのコマ割りはそんなにわかりにくくない。80年前の手塚先生と比べればわかりにくいけど、例えば1990年代から20年間の集英社系少女漫画と比べれば圧倒的にわかりやすい。 じゃあ

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー2

もっと情熱的なコマ割りを と編集者に言われた学生がいた。 「なんでしょう、これ」 と訊かれたが、知りませんがな。言った本人に訊いて下さいよ。 というのは、大人の正論だ。長く社会人をやってたら「傷つけられたら牙を剥け」ってどっかで心得てくるものだからだ。 しかし、二十歳くらいの学生が自分より年上の社会人に、むきだしの個人が会社人に質問できるかっていったら、それは難しい。 じゃあどうしましょう? 編集者が訳のわからない要求をしてくるのは前の項でも書いた。こう言う変な…とい