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【4選】Amazonプライムで配信中のおすすめミニシアター系映画

 ミニシアター系(単館系)映画。それは日本ではあまりメジャーな作品ではなくて、上映される映画館も限られてしまい、気軽に観られるものではないマイナーなもの、マニアックなものかもしれません。
 でも、実は海外の映画界では注目されている作品もあるし、何より、誰が注目していなくても自分にとっては人生最高の一本になるかもしれないという可能性を帯びています。

 2022年10月の3連中も間近。そこで今回は、私がおすすめするAmazonプライムで配信中のミニシアター系映画をご紹介します。(タイトルの後ろは、日本公開年/製作国です。)お休みのお供にぜひどうぞ。


心と体と(2018年/ハンガリー)

監督 イルディコー・エニェディ
出演 アレクサンドラ・ボルベーイ, ゲーザ・モルチャーニ, レーカ・テンキ

あらすじ
ハンガリー、ブダペスト郊外の食肉処理場。代理職員として働くマーリアは、コミュニケーションが苦手で職場になじめない。片手が不自由な上司のエンドレは彼女を気に掛けるが、うまく噛み合わず…。そんなある日、牛用の交尾薬が盗まれる事件が発生する。犯人を割り出すため、全従業員が精神分析医のカウンセリングを受ける事態に。すると、マーリアとエンドレが同じ夢を共有していたことが明らかになる。二人は夢の中で“鹿”として出会い、交流していたのだ。奇妙な一致に驚くマーリアとエンドレは、夢の話をきっかけに急接近する。マーリアは戸惑いながらもエンドレに強く惹かれるが、彼からのアプローチにうまく応えられず二人はすれ違ってしまう。夢の中ではありのままでいられるのに、現実世界の恋は一筋縄には進まない。恋からはほど遠い孤独な男女の少し不思議で刺激的なラブストーリー

Amazonプライム作品ページより

おすすめポイント
 静かで美しい色合いの画面に、突然色鮮やかに表れる食肉処理場の鮮血。主役の女性のコミュニケーションの不器用さと、男性の人生を諦めきった雰囲気……そして夢の中の鹿。もしかしたら、目に見えるものすべてがなにかを示唆しているんだろうか、と思える不思議な雰囲気。淡々と進むのに目が離せない映画です。熱烈なラブストーリーではなく、「そこに緩やかに表れたものに静かに手を伸ばす」ような作品。

淡々とした景色の中に浮かび上がる赤(公式予告編より)
夢の中の光景も、寒々とした森の中でありつつ暖かい不思議な描写(同上)

 本作の監督、イルディコー・エニェディは日本で2022年に公開されたレア・セドゥ主演『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』も手掛けています。

 『ストーリー~』の男女関係は、「動的な運命」を感じるところがありますが、『心と体と』はそれとは真逆な景色が見えて、とても興味深いです。


燃ゆる女の肖像(2020年/フランス)

監督 セリーヌ・シアマ
出演 ノエミ・メルラン, アデル・エネル, ルアナ・バイラミ

あらすじ
画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から、娘のエロイーズの見合いのための肖像画を頼まれる。だが、エロイーズ自身は結婚を拒んでいた。身分を隠して近づき、孤島の屋敷で密かに肖像画を完成させたマリアンヌは、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを否定される。描き直すと決めたマリアンヌに、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。キャンバスをはさんで見つめ合い、美しい島を共に散策し、音楽や文学について語り合ううちに、恋におちる二人。約束の5日後、肖像画はあと一筆で完成となるが、それは別れを意味していた──。

Amazonプライム作品ページより

おすすめポイント
 登場人物が聞こえてる音しか鳴らない、BGMがない静かな映画。その分、海の音や生活音、登場人物の呼吸音が耳をくすぐって臨場感があり引き込まれます。
 まるで油絵のようなカメラワーク・色遣いも多く、まさに「美しい映画」です。恋に落ちるマリアンヌとエロイーズが、いわゆるイエベ・ブルべの色味というのも視覚的に計算されているように思いました。

まるで油絵のような質感の映像(公式予告編より)
衣装の色味は勿論、生まれ持った色彩が美しい二人(同上)

 この、静けさの中で鳴る音・語られる言葉・彼女たちが見せる表情の一つ一つが、登場人物の繊細な胸の内を表現していて、本当に胸が苦しくなりました。女性二人の恋愛が、海辺でどのように始まりどのように展開していくのか、最後まで見届けて頂きたいです。


ぶあいそうな手紙(2020年/ブラジル)

監督 アナ・ルイーザ・アゼヴェード
出演 ホルヘ・ボラーニ, ガブリエラ・ポエステル, ホルヘ・デリア

あらすじ
ブラジル南部、ポルトアレグレの街。エルネストは78歳の独居老人。老境を迎え、ほとんど目が見えなくなった。もうこのまま人生は終わるだけ。そう思っていたある日、一通の手紙が届く。差出人はウルグアイ時代の友人の妻。エルネストは、偶然知り合ったブラジル娘のビアに手紙を読んでくれるように頼む。「手紙の読み書き」のため、一人暮らしのエルネストの部屋にビアが出入りするようになるが……それは、エルネストの人生を変える始まりだった。

Amazonプライム作品ページより

おすすめポイント
 高齢者映画好きな私ですから、Amazonプライムでも高齢者映画をおすすめせずにはいられません。
 本作は主人公エルネストの家や生活圏を舞台にしている物語。思い出が詰まった書斎、綺麗に掃除された息子の部屋……。それらの描写が、彼の人生を優しく手で労わるような雰囲気で暖かいです。

室内の描写もお洒落に見える(公式予告編より)

 そして、彼の部屋にやって来るビアが必ずしも清廉潔白な人間ではないのが、本作を「陳腐な感動映画」にしないスパイスとしてよく効いているんですよね。

エルネストとビア(同上)

 ところで、海外の「独居高齢者映画」ってその多くがアパートの隣人や友人との繋がりを描いていて、実はそこまで孤独ではないよな? なんて思います。日本の高齢者映画と言えば、『PLAN75』みたいな作品の方がリアリティを感じてしまいますね……。

 


私は確信する(2021年/フランス・ベルギー)

監督 アントワーヌ・ランボー
出演 マリナ・フォイス, オリヴィエ・グルメ, ローラン・リュカ

あらすじ
2000年2月、フランス南西部のトゥールーズ。3人の子供を残してスザンヌ・ヴィギエが忽然と姿を消し、夫である大学教授ジャックが彼女を殺した容疑で裁判にかけられた。メディアがセンセーショナルに取り上げる中、彼の無実を確認するシングルマザーのノラは、敏腕弁護士デュポン=モレッティに弁護を懇願。自らも助手として250時間にも及ぶ通話記録を丹念に調べ始めるうち、新たな真実と疑惑が浮かび上がってくる。

Amazonプライム作品ページより

おすすめポイント
 実際に起きた事件・実在する人々を題材にした映画。それ故のリアリティにハラハラしっぱなしの映画です。

通話記録を聞くことにのめり込んでいくノラ(公式予告編より)

 公開当時に鑑賞した私は、えらいモンを観てしまった……と呆然としました。上記あらすじを読んで、「よし、犯人捜しするぞ!」と張り切る気持ちになった人や、「自分は普段から冷静で中立な立場を保てるから」と無意識に信じている人には、ぜひ鑑賞して頂きたい映画。足元からガラガラ崩れていく何かを味わえるはずです。

 また、熱量の高い法廷の場面も見所。

法廷に立つデュポン(同上)

 フランスの司法の場では、陪審員の「うちなる確信(原題直訳)」が求められるそうです。そのため、弁護士が陪審員に対して、感情に訴える・真実に近づくための熱意を示す必要もあるのだとか。
 実在する弁護士・デュポン=モレッティは、この事件で実際に1時間ほど名演説をしたという逸話が残っています。流石に映画で1時間は使えないけれど、オリヴィエ・グルメの名演技に圧倒されました。


 今回は、私がぜひともおすすめしたい映画、しかしあまり広くは公開されなかったと思われる映画をご紹介しました。おうち時間を利用して、この機会にお楽しみ頂ければ嬉しいです。


最後に


※追記:ありがとうございます!



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© 2022 Aki Yamukai

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矢向 亜紀 / やむかい あき
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