西洋風異世界ファンタジー小説を考える時頼りになるあれこれ
はじめに
西洋風の異世界ファンタジーはお好きですか? この手のコンテンツは大人気ですから、よく目にしますよね。小説やゲーム、映画にドラマ……。
こうした世界観にたくさん触れている方は、自然と「自分も西洋風異世界ファンタジーのお話を書いてみよう!」と思い立ち、すらすらと世界観を考えられるのかもしれません。
ところがどっこい。
私は今まで、ほとんど西洋風の異世界ファンタジーに接して来ませんでした。特に理由はなく、自然とそうなっていただけです。
だもんで、いざそうしたお話を考えようとした時、圧倒的にインプットが足りておらずかなり苦戦しました。
困ってしまった私は色んなものを頼りにし、今も参考にしています。そこで今回は、こういった場面で頼りになる【本・テレビ番組・場所】をまとめました。
既にRPGや小説、本などでそうした世界観に馴染みがある方、ご自身で勉強されている方には基礎的過ぎて物足りないかもしれません。
しかし、「はじめて西洋風異世界ファンタジーを考える」という方や、「感覚的にはわかるけれど改めて情報収集して発想の幅を広げたい」という方には参考にして頂けると思います。
本
中世ヨーロッパの都市世界
街の状況をざっくり理解するのに使える本。私のように、「そもそも中世ヨーロッパの街ってどうやって出来たの? 何があるの?」という初歩段階の人にお勧め。
中世ヨーロッパの都市の生活
先述の『中世ヨーロッパの都市世界』からもう一歩踏み込んだ内容が知りたい人に。場所や職業、ライフサイクルの観点から詳細が書かれているので、人々の生活を想像したい時に重宝する。
中世を旅する人々 ─ヨーロッパ庶民生活点描
タイトルの通り、庶民に特化した生活や職業について扱った本。最初から通読するのもいいけれど、目次を見て気になった職業のところへ進んで読むという辞書的な使い方が出来るので、個人的には結構便利だなと思った一冊。粉ひきや水車小屋、パンについての話辺りは当時の市民感情が伺い知れて興味深かった。
「怖い絵」シリーズ
中野京子氏による、美術館で見られる絵画に潜む怖い物語を解説したシリーズ。先述の三冊は中世ヨーロッパ(500~1500年頃)についての本だが、こちらは近代ヨーロッパ(15~16世紀以降)の話題がメイン。
絵画に描かれている景色の解説なので、貴族・王族といった高貴な立ち位置の人たちのことが話題に上がりやすい。愛憎入り乱れ、政治的陰謀蠢く彼らの世界で何が起きていたのか・どんな価値観だったのかがわかってとても面白い。
シリーズの試し読みも出来るので、こちらから覗いてみるのもよさそう。
名画の中で働く人々 ───「仕事」で学ぶ西洋史
『怖い絵』シリーズの著者による、絵画に描かれた職業についての解説本。
ただその職業を解説するだけでなく、どういった状況なのか・人物たちの表情から読み取れることは何か・当時の流行や価値観はどんなものかを教えてくれる。例えば、表紙の絵画の意味合いもこの本を読むことで「うわあ……」と残酷さが感じ取れるようになる。
エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人
2022年に亡くなったエリザベス2世が主人公のミステリー小説。思いっきり現代が舞台、且つ創作の物語ではあるけれど、「西洋の皇室メンバーは日頃どんな人と接し、何を気にかけてお城で暮らしているのか」がうかがい知れる。もちろん、ミステリーとしても面白い。
テムズとともに――英国の二年間
こちらも現代が舞台の本。徳仁親王(令和の天皇陛下)が1983年から約2年間を過ごしたオックスフォード大学での留学経験を綴った回顧録だ。当時のイギリスの大学寮の雰囲気、大学での教育の仕組みや手法などがわかるので、西洋風異世界ファンタジーの参考になる要素が多い。
また、日本における“やんごとなき”の最高峰に位置する人の心情がわかるのも貴重な資料と言えるし、文体が堅苦しくないのに品があるため、小説で「国の高貴な人から手紙が届いた」といった描写をしたい場合には文章の参考にも出来る。
テレビ番組
日立 世界ふしぎ発見!
38年続く長寿番組、2024年3月をもってレギュラー放送を終了との寂しい報が入った時は本当にやりきれない思いがした。世界の色んな国の歴史を楽しく知れる名番組。
世界ふれあい街歩き
NHKだからこそ出来る、ゆるいお散歩番組。どこかの街を徒歩で旅する様子がわかるので、よりリアルな人の生活を想像する際の手助けになる。(ただし、現地の事情を知らない観光客の場合は、治安等に鑑みるとこの番組のように旅が出来るとは言えないので注意。)
場所
現地
なんやかんやで、自分が考えたいと思ってる世界観に一番近い場所、ヨーロッパの現地へ行くのが一番手っ取り早い。本や画面越しではわからない、石畳の街を歩いた時に足裏に感じる凹凸、建物の空気感、現地で暮らす人たちが話す時の音色、その場に初めて足を踏み入れた心の高揚などを実際に感じられる。現地は情報量いっぱいだ。
拙作で恐縮だが、カクヨムで公開中の『アオイのすべて 〜第四十一代司教に係る司教記録本』は、マルタ共和国を旅した際に知ったことを色々取り入れている。一緒に旅をした友人が、教会で熱心に司祭の衣装についてメモしている私を見て不思議そうにしていたのは忘れない。
※マルタ共和国については、こちらのエッセイ『世界のどこかで音を買う 〜海外旅行CD屋さん巡りのススメ』でも扱っている。
ただ街歩きをするだけでも色々な情報収集が出来るけれど、博物館へ行ってみたり、古城ホテルに宿泊してみたりすると、現代とは違う空気感を味わえる。
私はポルトガルのPalace Hotel Bussaco(建築は1888年。1917年に改修、ホテルとして営業開始)に宿泊したことがある。古城の窓から見える景色や底冷えする寒さ、夜の薄暗い階段で騎士の甲冑と遭遇する驚きなど、インターネットや本ではわからない感覚を知れるのは貴重な経験だった。
日本国内でヨーロッパを感じられる場所
(1)ハウステンボス
公式ホームページが「憧れの異世界」と言っているので、胸を張って西洋風異世界ファンタジーを考えるためのインプットとして訪問しよう。
特に見事なのは、建物の造形。オランダにある本物にかなり近い。私は何度かハウステンボスへ行ったことがあるが、オランダ訪問後にハウステンボスで観察した建物の再現度の高さにはかなり驚いた。(ハウステンボスの設計に関わった方とお話した時、その辺りについてはかなり綿密なやり取りをオランダ側としたと教えてくれた。)
更に、オランダ都心部と郊外をひとところにまとめてあるので、実際に現地へ行くよりも簡単に両方の景色を楽しめるのも魅力。
最近はイルミネーションが盛り上がっているのでわかりにくいが、夜の街並みは結構オランダを感じた。というのも、街灯の明かりが日本の普通の街よりも黄色っぽくて、アムステルダムの夜の色によく似ていたからだ(訪問当時は……)。もしイルミネーションイベントがない時期に訪問した際には、夜の散策もしてみてほしい。
また、日本からオランダへ行く飛行機がオランダ上空を飛んだ時、客席の至るところから「ハウステンボスみたい……」と声が上がったのも印象的。
※オランダについては、こちらのエッセイ『世界のどこかで音を買う 〜海外旅行CD屋さん巡りのススメ』でも扱っている。
(2)志摩スペイン村 パルケエスパーニャ
ハウステンボスほど再現度は高くないけれど、グエル公園やコルドバ、マヨール広場などの街並みの再現は結構張り切っていると感じた。ホテル内にもゴルドバのメスキータ(モスク)が再現がされている。
あと、本記事の趣旨とは全く関係ないけれど、パルケエスパーニャのチュロスは私が人生で食べたチュロスの中で一番おいしい外はさっくり・中はふんわりチュロスなので、ぜひ食べて欲しい。(なぜかチュロスのぬいぐるみも販売中。)
(3)神戸北野異人館街
明治大正期に建てられた洋風建築物が多く、暮らしていた人の国に応じた文化も感じられる。観光地とは違う「人が住んでいた家」の様子がわかるのは、創作の際に貴重なインプットになる。この辺り一帯は坂道だらけ、建物内は階段が多いので、訪問の際は歩きやすい靴を選ぶのが吉。
※どの場所にも言えることだが、訪問前には必ず、ご自身で最新情報を公式ホームページやSNSで確認して欲しい。
おわりに
こんな感じで、西洋風異世界ファンタジーに疎かった私は色んなものから情報収集をしました。そのおかげで、異世界のお話を想像しやすくなったのはもちろん、西洋文化に触れる際に観察したいポイントが増え、興味を持てるようになったのも嬉しい自分の変化です。
じゃあ、私が書いた西洋風異世界ファンタジーはいい出来だったのかと言えばー……おっと、それ以上は踏み込んではいけません。「ご興味があれば、カクヨムの作品を覗いて頂ければ幸いです」という文言に留めておきましょう。
もしあなたが「はじめて西洋風異世界ファンタジーを考える」という方や、「感覚的にはわかるけれど改めて情報収集して発想の幅を広げたい」という場合に、この記事がお役に立てればとっても嬉しいです。
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