消えない「自分を構成する5つのマンガ」を四象限で味わう(前編)
ある日ふと、自分の名前で検索したら上位にどのページが出るんだろう? と不思議に思って、Googleで検索してみました。
その結果……。
ずっと前に軽い気持ちで画像を作った自分を構成する5つのマンガが、今も残っているようです。
ピックアップしているのは以下の作品です。
このラインナップは今見ても違和感がなくとても納得出来るので、せっかくならば各作品の好きなところをしたためておこうと思いました。
今回ご紹介する作品は少ないですが、どうせなら何か分類したい。そこで自作の四象限を用いて、それぞれの作品について振り返ることにしました。
また、各軸の定義はこんな感じです。
静か⇔にぎやか
登場人物のテンションの高さや台詞の多さ、マンガを読んでいる時に感じる無音・静寂の多さを基準にしています。深いことを言う⇔深いことを言わない
心の状態によっては読んでいて泣いてしまいそうになる言葉が多い作品は「深いことを言う」、それどころではない・そういうことではない・そういう次元を超えている作品は「深いことを言わない」に分類しました。
いずれにせよ、褒め言葉としての定義づけであるという点をご認識頂ければ幸いです。
全体的には……
顔ぶれからお分かり頂ける通り、私は程よいシュールギャグマンガが好きです。
お恥ずかしながら私はあまりマンガを読むのが得意ではなく、長編作・登場人物が多い・話が込み入っているものについては上手に読めません。吹き出しの台詞が誰の発言かわからなくて混乱したり、コマを読む順番で苦戦したりすることが多くて……。
そんな私の味方はシュールギャグのマンガたち。1話完結、登場人物がわかりやすい、そして何よりその場の空気感を味わえれば思う存分楽しめる。凡人の私の目の前に現れた、訳の分からない個性の塊たち。
そうしたマンガたちに支えられ、今の私が出来上がった訳です。
※以下、マンガの概要は注意書きがない限り先述のリンクより引用。
にぎやか×深いことを言わない枠
ここに入っている2作品、『すごいよ!!マサルさん』と『ギャグマンガ日和』は、特に私の自我形成にかなりの影響を与えました。これらの作品がなければ、私は「自分好みの面白味」とは何か知らないまま大人になっていたでしょう。
両方ともジャンプ掲載作なのは偶然です。私はリアルタイムでジャンプを読んでいたわけではなく、コミックスを後から友達に教えてもらって読みました。ありがとう、各友達。
これらの作品が、私の自我にどんな影響を与えたのか。色々な要素があるけれど、特に実感しているのは私の価値観に以下の2つを根付かせた点です。
・本当の変わりものは、変わりものを自称しない
『すごいよ!!マサルさん』と『ギャグマンガ日和』に登場するのはどこか変な人たちばかり。でも、「自分は変人だ」「自分を変な人だと思ってくれ」と言う人は出て来ません(多分)。
私は子ども心に、「本当に変な人って、自分で『変だ』って騒がなくても”変さ”が溢れ出るんだなあ……」と感心しました。(そばに居て欲しいかと言われるとそれはー……。)
※その価値観のもと書いた感想文がこちらです👇
・自分に面白味がなくても、面白いものは幾らでもこの世にあるから探した方がいい
私は幼い頃から、自分には面白味がないことになぜか気付いていました。凡人である自覚があったと言い換えればわかりやすいでしょうか。
そんな中『すごいよ!!マサルさん』と『ギャグマンガ日和』は、自分に面白味がなくても外の世界には幾らでも面白いものがあると教えてくれました。自分の好きなものは自分で探せば探すだけ見つかる。それに気付いたから、今でも好きな音楽を探すのが好きなのかもしれません。
この考え方がなかったら、今の自分はもう少しつまらない人生を送っていたと思います。そういう意味で、『すごいよ!!マサルさん』と『ギャグマンガ日和』は私の人生を変えたマンガですね。
【1】すごいよ!!マサルさん
うすた京介 著 / 集英社
私が人生で最初にハマったマンガです。このマンガのおかげで、「個性的」とは何かを体感出来ました。
本作はアニメ化していて、オープニングテーマはPENICILLINの『ロマンス』でしたね。絶妙なセレクト。
🌞ここ好きポイント
個性の塊、マサルさん
マサルさんは至って真面目にセクシーコマンドーに励んでいる高校生。それがどう見ても変。彼は誰の真似をするでもなく、誰と比較するでもなく、自分が正しいと思った行動を全力でやっているだけです。それがこんなにも面白い。これ以上の個性がどこにある?
でも、よくよく周りを見渡せばマサルさんの周りに居るフーミン・真茶彦・キャシャリン・スーザンもどこかおかしい。それでも、マサルさんの存在感は一級品です。本当に奇跡のバランスだと思います。
未知のものを生み出し、既存のものを未知のものに変える
『すごいよ!!マサルさん』の面白さは色々ありますが、「今までにこんなもの見たことがない」と、「知っているもののはずなのに訳が分からない」を両立しているのが大変面白いです。
前者の例を挙げればキリがありません。セクシーコマンドーだのメソだのなんだの……。この作品を読めば、嫌でもわかることでしょう。
ですので、ここでは後者の例を挙げてみます。セクシーコマンドーを嗜む人達の間で交わされる挨拶のひとつ、「クリナップクリンミセス」。これは作者による造語ではなく、クリナップの高級システムキッチンの商品名です。
こうした、既存のものを訳の分からない使い方をすることで、シュールな面白味を見せてくれるのが『すごいよ!!マサルさん』のすごいところ。うすた京介さんのシナプスは、一体どうなっているんでしょうね。
オチに下ネタを使わない構成
子ども向けのギャグマンガでありながら、『すごいよ!!マサルさん』には下ネタ(Wikipedia曰く”笑いを誘う排泄・性的な話題”)ゴリ押しで笑わせる場面がありません。
これ、なかなかチャレンジングな構成だと思います。要はテッパン・王道の笑いを封じている訳ですから。(その代わり?、謎の薬を飲んで登場人物がおかしくなる描写はあります。)
例えば、セクシーコマンドー部……ゲフンゲフン、ヒゲ部……セクシーコマンドー部には女の子の部員・モエモエが居ますが、彼女はお色気担当ではありません。部のマネージャーでありながら、彼女もまたシュールの一端を担っています。(登場人物が、彼女にもじもじ・ドキドキする描写は多少あります。)
『すごいよ!!マサルさん』が週刊少年ジャンプで連載されていたのは1995~1997年。その時代の少年向けギャグマンガでは、可愛い女の子がセクハラ行為をされて読者に笑われる流れがまかり通っていたことでしょう。でも、『すごいよ!!マサルさん』でそうした場面を見た記憶がありません。
あれ?! もしかして、『すごいよ!!マサルさん』って令和の価値観に即した安心してお子さんにおすすめできるマンガなのでは……? いつか『すごいよ!!マサルさん』が教科書に載る日が来るかもしれませんね。
💭おまけの思い出話
私は新卒の就活の際、『すごいよ!!マサルさん』についてのレポートをエントリーシートに書いて書類通過したことがあります。確かお題は「好きなエンタメについて」といった感じだったかと。
スペインに行った際に、観光地の建築物のひとつが工事中で白い布を被っていたことがありました。残念な気持ちはしましたが、それ以上に「マサルさんの実家みたい……」と笑えたのでプラマイゼロだなと思いました。
【2】ギャグマンガ日和
増田こうすけ 著 / 集英社
初めてこのコミックスを読んだのは授業中でした(よい子は真似をしてはいけません)。でも、開いた瞬間目に入った最初のコマで私は爆笑してしまい、先生に「どうしたの?」と言われそれ以上読み進められなかったです。
本作もアニメ化しています。
🌞ここ好きポイント
古今東西の歴史について学べる(学べない)
第1話が「なめられペリー」であることからもわかる通り、本作は“歴史上の人物が題材”のお話と、“よくわからないものが題材”のお話があります。
白い船に乗っている部下になめられっぱなしのペリー(黒船で来航するはずのあのペリー)はもちろん、ジャージを着ている聖徳太子(偉いからジャージが長袖)や当たりのキツイ弟子と旅をしている松尾芭蕉も好きですが、私が特にギャグマンガ日和で印象に残っているのはドガさんです。画家の。
当時の私は、『ギャグマンガ日和』で初めてドガさんのことを知りました。そのおかげで、大人になってから美術館でドガさんの絵を見る度に、「ドガさんって絵が上手いんだなぁ」としみじみ出来るようになりました。
上質な不条理を味わえる
『ギャグマンガ日和』の醍醐味は「歴史上の人物が題材」のお話だけではありません。「よくわからないものが題材」のお話で炸裂する増田こうすけワールドは、クセが強すぎてクセになります。
やっぱり、代表的なのは2巻に登場する「モッヂボール」でしょうか(アニメ6話以降のOPアニメに利用されています)。ただ、モッヂボールについては公式でイラストなどが上がっていないようなので、代わりに「スイカ割り入門」を置いておきます。
クセが強いのに、一度受け入れてしまうともう何も知らなかったあの頃の自分には戻れない。これもまた、唯一無二の強すぎる個性です。
私にはこんな不条理生み出せないよ……。今でもそう思いながら生きていますし、人生の端々で『ギャグマンガ日和』の一場面を思い出しながらニコニコしています。一過性の笑いではなく、記憶に残る不条理。こんな上質な不条理に出合う機会はなかなかありません。
後半へ続く
この2作品については思い入れがあるので、ついつい長くなってしまいました。他の3作品のご紹介は後半にて。思い立って書いた折には、ぜひ覗いて頂けると嬉しいです。
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