物語の季節が秋ばかり ~私の作品紹介(小説)
あなたには、好きな季節はあるだろうか?私はある。秋が好きだ。そのせいか、無意識に物語を書いていると、だいたいの場合季節が秋〜冬の設定になっていることが多い。
自分にとって、秋は割とテンションが上がるというか、そわそわわくわくする季節だ。苦手な夏が終わり、冬が近づき、空は青が高くなり、過ごしやすい天気が続き、美味しい食べ物が増え紅葉は綺麗で、年末ほどの忙しなさもない。最高の時期だ。
秋はいい。無くならないで欲しいと思うものの一つだ。
さて。そんな自分の作品を振り返ると、秋〜冬の期間を舞台にしたものがたくさんあった。
・秋が舞台の物語
「ディスプレイ越しに魔法をかけて」※現在非公開
・ジャンル:恋愛,青春、長編
高校1年生の主人公は、席替えをきっかけに隣の席になった同級生が苦手。仲良くなりたいと奮闘する最中、親友にバーチャルアイドル(Vtuber)を勧められ、同級生との仲について相談するが……。
現代日本を舞台にしている。2学期の始まりから年明けまでのお話だ。
「ティーンズ・イン・ザ・ボックス」
・ジャンル:SF,恋愛、中編
内気な少女と顔のないDJ。学校行事で偶然出会ったことをきっかけに、2人の青春は慌ただしさを増す。そこには苦しい過去の出来事が関係し……という、青春×恋愛×SF×音楽の物語。
未来のどこかのお話だが、9/30から10/31までの秋の時期を舞台にしている。季節柄のイベント(ホームカミングやハロウィンパーティー)もある。
「アオイのすべて 〜第四十一代司教に係る司教記録本」
・ジャンル:異世界ファンタジー、長編
瞳の紋で階級が決まる正方形の街が舞台。若手の新聞記者が、街の実質的な統率者、教会の若き司教に密着取材をする……という、ドキュメンタリーに近い異世界ファンタジー。
私たちが暮らす世界とは違う場所が舞台なので、明確に秋だと断言はできないが、10/31からの5日間を描いている。
それにしたって、秋に偏っている。こんな風に、何も考えずにいると物語の中の季節が秋になってしまうのは、自分がいつも秋に焦がれているからだろう。
でもよく考えてみると、夏の方が本当は描写がしやすいように思う。特に、沈黙の場面を書きやすいのがいい。黙っていても周りで蝉がじわじわ鳴いたり、何もしなくても背中に汗をかいたりするので、そういう時に夏は使い勝手がいい。
それなのに、秋が好きだから秋の物語を書いてしまう。特に何の描写もなく、ただ淡々と秋である世界を。
・違う季節を書こうと思った物語
そんな中、「夏の話を書こう」と決めて作った作品があった。その時、本当に夏は書くことが多いなと驚いた記憶がある。そして同時に、何を書いて/書かないかの選択の難しさも。夏とはとても賑やかで、情報量の多い季節だ。
「この夏の、延長線上で」
・ジャンル:現代ファンタジー、中編
2020年の夏が舞台。そのため、みんなマスクをしたり外出を控えたりしている。墓参りに出かけた主人公が、父の墓前で妙な少年と出会い、ひと夏を共に過ごす物語。
(有難い事に、本作は『ことのは文庫×魔法のiらんど「泣ける文芸」小説コンテスト』入賞作品。現在2箇所で公開中。)
書き手にとって、好きな季節やついつい設定してしまう季節というのはあるのだろうか?
人それぞれにクセがあるのだとしたら、なんだか面白い。色んな人の物語を並べて、一年の季節をなぞるカレンダーが出来たら楽しそうだ。
※本エッセイは、以下の記事を元にしたものです。
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