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科学技術コミュニケーションを学ぶ

毎年度、テーマをひとつ決めて、新しい学びに挑戦したいと思っています。今年度のテーマは「科学の興味深さ・面白さ・難しさを伝えるための心がけを学ぶ」。

ということで、北海道大学の CoSTEP という、科学技術コミュニケーションを学ぶことができるプログラム(選科コース)に参加してみることにしました。私が受講する選科コースの場合、講義はほとんど全てオンデマンド配信。演習は、今のところ対面で実施される予定で、7月に3日間ほど札幌に行ってきます。

さて、この CoSTEP を無事に修了するには、モジュール毎に課題文を提出したり、サイエンスイベントを企画運営したりと、まあまあ大変な気がしています。とくに、演習がある7月は「ひらめきときめきサイエンス」というアウトリーチ活動の準備もあるので、大丈夫かな?とちょっと不安。

そこで、これからはじまる1年間の学びのために、応募するときに提出した「志望理由」と「課題文」をここに晒して、「くじけそうなときに戻ってくる拠り所」にしたいと思います。

志望理由

北海道大学科学技術コミュニケーター養成プログラムで学びたい理由、学びたいこと、また、修了後学んだことをどう活かそうと考えているかを整理し、以下に記してください。

2022年度 CoSTEP 募集要項

CoSTEP で学びたい理由は、科学技術の専門家(科学者と書くことにします)として、研究活動を通して体感している科学の興味深さ・面白さ・難しさについて、科学者ではない方(市民と書くことにします)に上手に伝えるための態度や技術を学びたいと思うからです。また、市民との科学技術コミュニケーションを通して、科学について市民が持つざまざまな思いを知り社会における科学活動の目的・意義・価値について、市民の皆さんと一緒に理解を深めたいと思っています。

CoSTEP では、科学技術コミュニケーションの知識や技術を習得することに加えて、講師の先生方、そして、さまざまな立場で参加されている受講生の皆さんとの交流を通して、科学に対するさまざまな立場・向き合い方・考え方を互いに尊重する態度を身につけたいと思っています。

CoSTEP で学んだことは、私自身がこれまで取り組んできたアウトリーチ活動をアップデートして新たな活動にチャレンジするためだけでなく、科学を学ぶ学生たちに、科学の興味深さ・面白さ・難しさを市民と共有する楽しさ、そして、科学技術コミュニケーションを通して社会を学ぶ大切さを伝えるために活かしたいと考えています。

課題文

科学技術コミュニケーションに関わる問題を1つとりあげ、解決へ向けて今後自分がどんな役割を果たしたいかを述べてください。

2022年度 CoSTEP 募集要項

科学技術コミュニケーションについて、科学技術の専門家(科学者と書くことにします)から科学者ではない方(市民と書くことにします)への「一方向的な発信」から「双方向的な対話へ」という在り方に、私は興味を持っています。

科学者が市民に科学技術のことを伝えようとするときに、「不確かな意見しか持たない市民に、確固たる真実を手にした科学者が、科学的に導き出した最善の対処方法で導く」という態度を無自覚に取ってしまうことがあるように思います。このような態度は、科学技術コミュニケーションの可能性を狭めてしまうだけでなく、場合によっては、科学技術に対する信頼を大きく損ねることに繋がってしまう恐れがあります。

たとえば、新型コロナウイルスのワクチンに対して、有効性についての心配や安全性についての不安を持つ方が少なからずいらっしゃいます。その方々に対する専門家の態度が、科学的知見についての説明が分かりやすかったり、丁寧だったとしても、その心配や不安の背景にあるかも知れない文化的背景に気付くことなく、あるいは、気付いたとしても「非科学的なこと」として寄り添うことないままに説得しようとする場合には、お互いを分かり合うための対話を続けることは難しいのではないでしょうか。

科学技術コミュニケーションの在り方として、私自身は、社会における科学活動の目的・意義・価値について、科学者と市民が互いの文化的背景を尊重しながら対話を続けること共に理解を深めることを目指したいと思っています。そのために私たち科学者は、科学について市民が持つさまざまな声に真摯に・敬意をもって耳を傾ける技術と態度を身につけることが大切だと思っています。

発信から対話へ、まずは CoSTEP の学びの中で、その態度を実践してみることにチャレンジしたいと思っています。


参考になりそうな本

科学技術コミュニケーションを学ぶときの助けになりそうな本についての覚え書き。これらの本を参考にしながら、CoSTEP での学びに取り組んでいきたいと思っています。

科学を伝え、社会とつなぐ サイエンスコミュニケーションのはじめかた

国立科学博物館のサイエンスコミュニケータ養成実践講座というプログラムのノウハウを集めたテキスト。

科学コミュニケーション論

東京大学科学技術インタープリター養成プログラムの講義をもとに、科学コミュニケーション論の理論的枠組みをまとめたテキスト。

研究者・研究職・大学院生のための対話トレーニング

京都大学 iCeMS 科学コミュニケーショングループの研究者たちが中心になって開発した「社会と研究者との対話に重点を置いたトレーニングプログラム(DST)」のテキスト。

専門知を再考する

専門知とは何か?専門家とは誰か?について問いなおし、「対話的専門知」の可能性を探るためのテキスト。

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山本典史
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