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気候変動と闘い、生物多様性を尊重し、天然資源を守り、地球の美しさを保護するためのサステナブルな行動へ サステナブルの輪 Vol.015 日本ロレアル

皆さまこんにちは。ヤマト運輸公式note編集部です。

ヤマト運輸公式noteがお届けしている「サステナブルの輪」では、ヤマトグループとともにサステナビリティへの取り組みを推進しているパートナーさまに、サステナビリティに関する活動や想い、狙いについて語っていただいています。

今回は、フランスに本社を置く世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人である、日本ロレアルさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介します。

日本ロレアルは1963年に日本での事業をスタート。「世界を突き動かす美の創造」をパーパスとして掲げ、スキンケアをはじめとしてメイクアップ、ヘアケア、フレグランスなど、あらゆる分野の化粧品を展開。現在、ランコムやイヴ・サンローラン・ボーテ、シュウ ウエムラ、ヘレナ ルビンスタインなど18のブランド(グループ全体では37のインターナショナルブランド)を傘下にもち、輸入・製造・販売を行なっています。

今回、コーポレート・レスポンシビリティ本部ヴァイスプレジデント本部長の楠田倫子さまと、オペレーション本部フィジカルディストリビューションディレクターの小林久敏さまにお話を伺いました。


ビジネス自体にサステナビリティを実装する

私たちロレアルグループでは、サステナビリティへの取り組みに関して、グループ全体で取り組むべき共通課題・目標と、世界150カ国の地域で展開しているローカルマーケーットで取り組む課題・目標に役割分担をしながら進めています。まずはグループ全体、全世界で達成すべき共通の課題・目標についてお話をさせていただきます。
 
ロレアルでは、1970年頃からサステナビリティへの取り組みを行っています。その最初の取り組みがアニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮し、動物による試験・実験を行わずに「美」を追求していこうというものでした。化粧品成分や製品が人の皮膚にどのように作用するかを評価できる「ヒト再構築皮膚(ヒト皮膚モデル)」を他社に先駆けて開発しています。規制によって動物による試験の禁止が義務づけられる14年も前のことです。
 
その後、さまざまな分野でのサステナビリティ目標に取り組んでいく中で、2013年に初めて一つのプログラムに統合したグローバルサステナビリティプログラムである「Sharing Beauty With All 美のすべてを次世代へ」を策定しました。このプログラムは、2020年までに達成すべき具体的なサステナビリティ目標を定めたものです。
 
2020年を迎えた時、次の10年はどうすべきか、何をすべきかを考え策定したのが、現在の「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」というコミットメントです。前回のサステナビリティプログラムを立ち上げた2013年当時と比べ、私たちが直面している課題は、前例のないほど規模の大きなものとなっています。新たに目標を引き直し、活動の質と量を上げていかなければならない。抜本的な改革に向けて、世界が直面する課題に対応するために、私たちロレアルのあるべき企業のビジョン・目的・責任についての見解を示しました。
 
グループ全体のサステナビリティに対する考え方として一番大切にしているのが、私たちのビジネス自体にサステナビリティなあり方を実装していくことです。企業のイメージ戦略のためにやるとか、メセナ活動的にやるというのではなく、私たちの本業であるビジネスをよりサステナブルなものに変えていくこと。そのために何をすべきなのか、どのような数値目標を掲げるべきか、どういうリソースが必要なのか、本当にビジネスの継続のために取り組んでいるのか。こうした観点がロレアルのサステナビリティに対する考え方の特徴的なところだと思います。
 
ロレアルグループでは、私たちの持続的な発展のために、3つの戦略的な柱、「ロレアルは、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を尊重し活動すべく変革しています」「ビジネスのエコシステムを強化し、よりサステナブルな世界への移行を支援します」「私たちは火急の社会的・環境的ニーズを支援することで、世界の課題解決に貢献しています」と、取り組むべき4つの重要課題「気候変動への対策」「サステナブルな水資源管理」、「生物多様性への配慮」、「天然資源の保全」を掲げています。

気候変動への対策と成長の両立に向けて

ここからは日本ロレアルとしてのサステナビリティへの具体的な取り組みを紹介させていただきます。先ほどお話をさせていただいたように、グループ全体では4つの重点課題がありますが、日本ロレアルではこのうち「気候変動への対策」と「天然資源の保全」として「廃棄物削減」の取り組みに注力しています。
 
まず「気候変動への対策」ですが、2030年までに当社のバリューチェーン全体のすべての温室効果ガスの排出量を、2016年と比較して、完成品あたり50%削減する目標を掲げています。生産・流通拠点だけでなく、原材料のサプライチェーンや、最終的に消費者が製品を使用することに伴う間接的な影響など、活動のあらゆる側面について数値目標を設定しています。
 
それぞれの数値目標にKPIを設け、途中経過や結果をフィードバックし、レビューをし、どうすれば達成できるのかを分析しながら取り組んでいます。例えば、どの部分でどれだけのCO₂が発生しているのか、当社では3つのルートに分けています。まずは製造工場から海外の拠点倉庫まで。二つ目が海外の拠点倉庫から日本の倉庫まで。三つ目が日本の倉庫からお客様までです。
 
日本の場合、物流から生じるCO₂は圧倒的に二つ目の国際輸送の部分が多く、全体の約75%を占めています。そのうちさらに70%以上が航空輸送によるものです。私たちはそこを削減するために、厳しいコントロールを行なっています。本当にその数量が急いで必要なのか、厳密に細かく精査しながら取り組んでいます。基本的には海上輸送を行なっていますが、海上輸送ではどうしても天候などの事情で時間がかかってしまうことがあります。お客様に迷惑をかけないということが大前提になりますので、リードタイムも重要な要素になります。私たちは、第3の方法はないのかということで、現在、鉄道輸送を導入し、フランスから輸送の30%を鉄道輸送に切り替えています。

鉄道輸送では海上輸送よりも大幅にリードタイムを減らすことができますが、航空輸送よりは時間がかかります。私たちは航空輸送を根本的に減らすことを目標に、三つの輸送方法を最適に組み合わせながら国際輸送を行なっています。ただ非常に難しいのは、化粧品というのは少量多品種のビジネスですので、形や重さ、色、一回に運べる量もバラバラです、さらにブランドも多数ありますので、1回1回の輸送ごとに最適な貨物にする必要があります。面倒な手作業になるのですが、いかに効率よく最適化していくかが重要になります。
 
製造に関しては、製品が持っている環境負荷を数値化する独自のプラットフォームを構築しています。これは原料の調達から製造・物流・消費まで、製品のライフサイクル全部を分析し、すべての製品に関する環境負荷の数値をデータベース化しています。グループには、新しく開発する製品は以前の製品よりも環境負指数が良くなっていなければ発売できないルールがあります。いかにサステナブルな製品を開発していくかに取り組んでいます。

製造工場では、再生可能エネルギーの導入であったり、エネルギー効率の高い生産設備の更新だったり、さまざまな取り組みを行っています。実は、設備の更新とか、製造上の取り組みにより、CO₂は減っていますが製造量は増えています。ビジネスとしての成長を阻害することなく、CO₂排出削減が可能であることの証明になっています。グローバルでの数値ですが、2023年度実績では、2019年比でCO₂排出量が74%減に対して、製造量は12%増になっています。

サステナビリティに取り組む本気度の高さ

二つ目の「廃棄物削減」では、グループ全体で2030年までに、製品に使用するパッケージの量を2019年比で20%削減(原単位)、2025年までに、プラスチック製パッケージの100%を詰め替え可能、再利用可能、リサイクル可能、あるいは堆肥化可能なものに切り替えることを目標として掲げています。
 
日本ロレアルでは、事業活動で使用する紙を100%FSC認証紙へ、製品輸送時に使用する梱包材ならびに緩衝材を100%紙ベースのものに切り替えました。また「テラサイクル社」と包括的なパートナーシップを締結。全事業部が化粧品空き容器の回収を行っています。
 
廃棄物ゼロというのが大きな目標ですが、化粧品の場合、消費財ですので、色物があったり、流行りがあったりする中で、廃棄物ゼロにするのは非常に難しいと思っています。現在、いわゆる3Rを軸に取り組んでいます。
 
廃棄される製品の一番の理由はやはり流通返品です。返品が生じないように売り切ってもらう取り組みを積極的に行なっていますが、どうしても返品が生じた場合、NGO団体に寄付したりしています。それでも廃棄物が出る場合、捨てるのではなく、どうリサイクルするかに積極的に取り組んでいます。
 
まずは製品の中身と容器に分けて、中身の方はケミカルリサイクルに回し、容器の方はプラチック再生へというアプローチを取っています。日本の場合、プラスチックは分別され捨てられ焼却されますが、EUの基準ですと焼却はCO₂が排出されるので、リサイクルにカウントされません。日本ロレアルでは、焼却に回さず、どう再利用するかが重要な課題の一つになっています。
 
例えば、2年前に新宿本社オフィスをリニュアールした際に、壁のペイントの顔料として廃棄予定の口紅やアイシャドウを使ったり、インテリアに製品容器の一部をを使ったり、試験的に、廃棄される製品を再利用するさまざまな試みを行いました。もちろん工業用スケールまで持っていくには、量的にもなかなか難しいのですが、試みの一つとして取り組んでいます。

その他、できるだけプラスチックを使わない取り組みを行っています。例えば、内容物に対して容器をできるだけスリム化したり、どうしてもプラスチックを使う必要がある場合は、バイオベースプラスチックを使ったりしています。
 
もう一つはレフィル(詰め替え)ですね。日本では洗剤とか、シャンプーとか、詰め替え文化というのがありますが、グローバルでは非常に特殊なことなのです。現在、グループでは、このレフィルを業界の中で先陣を切って推進していこうとしています。例えば、香水のレフィル化ですと、レフィルファウンテンというのですが、店頭で香水の原液を入れられるような販売方法を海外では始めています。日本での取り組みとしてはイヴ・サンローラン・ボーテの主力製品の一つ美容液で行っている「レフィル定期便」があります。これは、オンラインの定期購入システムで、最初に本体とレフィルが送られ、次回からはレフィルのみが送られるという仕組みです。

また、キールズというブランドでは、紙袋の要不要をお伺いして、不要なお客様に対しては、紙袋コスト分を寄付金としてプールさせていただき、植林活動に活用しています。こうしたお客様の協力も仰ぎながら、結果としてサステナビリティにつながる商品を選択しいただく、そんな試みにも力を入れています。

当社の場合、サステナビリティに関して、全社員の取り組みへの本気度の高さが特徴的だと思います。先ほど、KPIのお話をさせていただきましたが、当社では40項目余りの数値目標がある中で、その中からさらに「ボーナスKPI」という重点的に取り組む項目があります。この項目はボーナスの査定に組み込まれていまして、達成できなければボーナスが減額されるという仕組みです。これは全社員がサステナビリティを「自分ごと」として積極的に取り組んでいこうという、ロレアルグループの考え方と本気度を示したものです。
 
日本ロレアルは今後も、より責任ある、持続可能(サステナブル)なビジネスモデルを目指して、環境・社会課題解決への貢献のために取り組んでいきます。

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今回は、日本ロレアルさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介させていただきました。次回からも引き続き、パートナーさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介し、「サステナブルの輪」を広げていきたいと思います。
次回の配信もお楽しみに。

編集・著作:ヤマト運輸株式会社


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