お客さまと「農ある暮らし」の素晴らしさを共有し、健康、美味しい、サステナブルな暮らしの新しいモデルをつくる。サステナブルの輪 Vol.013 秋川牧園
皆さまこんにちは。ヤマト運輸公式note編集部です。
ヤマト運輸公式noteがお届けしている「サステナブルの輪」では、ヤマトグループとともにサステナビリティへの取り組みを推進しているパートナーさまに、サステナビリティに関する活動や想い、狙いについて語っていただいています。
今回は、さまざまな品目の生産から加工、お届けまで一貫して行う農業の会社・秋川牧園さまのサステナビリティへの取り組みをご紹介します。
秋川牧園は山口県山口市を拠点として、自社生産の鶏肉、たまご、豚肉、牛肉、牛乳・乳製品、冷凍食品、スイーツなど、300品目以上の商品を販売。1997年には農業の会社として初めて株式上場。生協を中心とした生産卸売事業とともに、全国への直販事業も展開し、現在の宅配会員数はおよそ2万8,000人となっています。
今回、取締役経営管理部部長の原田良人さま、直販業務課課長の尾兼直樹さま、マーケティング室室長の光井祥子さまにお話を伺いました。
創業時より根底にあるサステナビリティへの想い
私たち秋川牧園のルーツは、秋川牧園の創業者・秋川実の父・秋川房太1927年に単身で中国・大連に渡り、理想の農園をつくり上げたことが始まりです。当時、「食の安全・安心」という概念のない時代に、「口に入るものは間違ってはいけない」と、人の命の源泉である食づくりの大切さを説きました。現在、この言葉は秋川牧園の信念となっています。
その後、初代の意志を継いだ現会長・秋川実が、1972年に、現在の山口県山口市仁保の地に秋川牧園を創業。秋川実は創業にあたって、真に安心、安全な食べ物づくりを目指して、5つの目標を掲げました。「残留農薬の心配のない食べものづくりを実現する」「鶏の無投薬飼育を確立させる」「より自然に、よりおいしく、卵と鶏を育てる」「生産者と消費者の結び付きを強くする」「希望の持てる農業、後継者のできる農業を目指す」です。
現在、秋川牧園が掲げるビジョンやミッション、SDGsへの取り組みも、すべて創業時の5つの目標に基づいたものです。実は秋川牧園のビジョンやミッション、SDGsへの取り組み策定するにあたっては、社内でさまざまな議論がありました。というのも、私たちがこれまで取り組んできたことは、持続可能で真に豊かな農業を実現することです。ですので、ここで改めて発信するまでもないという想いと、まだまだ十分にやりきれていないという想いもありました。
しかしその一方で、お取引先やお客さまから、「秋川牧園って、こういう会社だよ」「こういうことをやっているよ」と説明してほしいというお声もいただきました。サステナビリティやSDGsという言葉が社会に普及する中で、私たち秋川牧園が取り組んできたことを伝えやすくなったのではないか、そういう想いもあり、これまで取り組んできたこと、まだまだ、チャレンジしていきたいことをまとめ、さらにサステナビリティを追求していく体制を社内で整えていきました。
現在、秋川牧園では「FARM 農ある暮らし」というビジョンを掲げています。FARMとしての進化を続け、消費者と「農ある暮らし」の素晴らしさを共有することで、健康、美味しい、サステナブルな暮らしの新しいモデルづくりを目指しています。
ミッションには、「私たちは、食と農をホームグランドとして、持続可能で真に豊かな社会への変革に貢献します」を掲げ、チャレンジし続ける3つのテーマを策定しています。
一つ目は「化学物質の汚染の心配のない健康な暮らしづくり」です。
秋川牧園では創業時より、食料の生産から消費に至るまで、できるだけ農薬、抗生物質、食品添加物など、化学物質の心配のない健康的で、自然と共生できる暮らしづくりに取り組んでいます。
二つ目は「地域循環型で自然と共生する農業のモデルづくり」です。
2009年から飼料用米の生産と利用に地域の農家の皆さんと取り組んでいます。そのお米を食べさせた鶏からの畜糞を発酵させた上、また地域の水田に戻していきます。
三つ目が「個を活かすネットワーク型の新しい会社のモデルづくり」です。
秋川牧園は創業以来、社員一人ひとりの主体性を尊重し、いかに引き出すかを重要視してきました。主体性をもった個人がネットワークを作ることで、チームとしての価値創造力を高め、社会に貢献するために新しい会社づくりに取り組んでいます。
「口に入るものは間違ってはいけない」を具現化する取り組み
ここからはSDGsへの具体的な取り組みのいくつかを紹介させていただきます。まずは創業以来、一貫して取り組んでいるのが「化学物質に依存しない食づくり」への取り組みです。例えば野菜づくりでは、殺虫剤や除草剤などの化学合成農薬及び化学肥料を使わない有機栽培を基本としています。
特に力を注いできたのが若鶏の無投薬飼育です。鶏肉の生産現場では、鶏の病気を防ぐために数種類の抗生物質を混ぜた飼料を与えることが主流でした。現在でも、多くの養鶏場で行われています。秋川牧園では1970年代から飼育方法から鶏舎の構造などの改善を重ねることで、日本で初めて無投薬飼育を確立させました。現在、採卵鶏も若鶏もすべてより自然に近い環境となる開放型鶏舎で飼育されています。
飼料においても、肉やたまごに化学物質が残るリスクを減らすために、いち早く秋川牧園独自の植物性飼料を開発。結果として肉などの風味も良くなり、安全と美味しさに繋がっています。飼料原料においても、主原料となるトウモロコシは、ポストハーベスト農薬(収穫後に輸送中などに使われる農薬)や遺伝子組み換えのないトウモロコシを使用しています。1989年には会長や社長が自らアメリカに出向き、穀物分別輸出ができるルートを開発しています。
現在、特に力を入れているのが「飼料用米プロジェクト」です。現在、日本では家畜の飼料原料として大量の穀物を輸入しています。一方で、人口減少に伴い日本の水田は今後さらに余ることが予想されています。そうした問題意識を背景に、秋川牧園では、畜産と農業が手をつなげる「飼料用米」の地域循環型農業を支援するために、2009年から「飼料用米プロジェクト」をスタートさせました。飼料用米の持続可能な生産と活用に向けて、山口県内の生産者と一緒に取り組んでいます。現在、秋川牧園では、800t収容可能な飼料用タンクで保管し、1年をかけて飼料工場に出荷しています。この安全・安心な飼料をつくる地域循環の仕組みは、秋川牧園の基盤の一つになっています。
こうした取り組みは、「口に入るものは間違ってはいけない」という秋川牧園の信念を具現化したものだと思っています。
秋川牧園では、全国の生活協同組合などと連携し、冷凍形態の肉及び冷凍食品の普及活動を通じて、生産から消費までのサプライチェーン全体でのフードロス削減に取り組んでいます。冷蔵品の販売は、すぐに調理できるなどのメリットもありますが、消費期限に伴う廃棄も起こりやすいというデメリットもあります。さらに畜産品においては、人気部位以外の余剰ロスが起こりやすいとも言われています。冷凍の普及により、一定の期間内で需給調整を販売提携先と共に行うことが可能となるため、結果としてフードロスの削減が実現できているのです。
環境負荷軽減の取り組みでは、2020年に刷新した鶏肉の凍結機について、環境負荷の低い、省エネ型の自然冷媒機器を採用しています。引き続き、主要冷凍冷蔵機器のうち、新規導入する機器の100%を環境負荷の小さい自然冷媒機器への更新を推進していく計画です。その他、本社、工場の照明のLED照明化や屋根への太陽光パネル設置による電力の自家利用なども進めていますが、カーボンニュートラルに向けては解決すべき課題が多く残っています。
今後は「サステナビリティ推進委員会」を設置し、脱炭素、脱プラスチック、地域連携など総合的な取り組みを加速していきます。
健康で、美味しく、楽しい「もうひとつの台所」を提供
私たち秋川牧園では、全国の消費者とのつながりを大切にしており、安全・安心で健康に良い食品をお届けするだけではなく、美味しくて、食卓が楽しくなるような食品をお届けしたいと思っています。安全・安心で健康に良いから少しくらいに味が落ちても構わないとは考えていません。安全・安心を追求するとともに、美味しさの追求も私たちの大切な使命です。生鮮から加工品まで、多くのオリジナル製品が生まれてきたのも、「健康」と「美味しさ」を追求する中で、健康に、手軽に、食卓で楽しんでいただける「もうひとつの台所」を提供したいという想いがあったからだと思っています。
これは現社長・秋川正の言葉ですが、「秋川牧園はこんなにいろいろつくるのに、どれもおいしいなのはぜ?」「その謎を知りたい!」と言ってもらえるような秋川牧園を目指したいですね。
現在、秋川牧園では、地域の生産者の方と連携することで、新たな価値を創造していこうと考えています。例えば、当社の人気のひとつに「鶏とおからのチキンナゲット」があります。この新商品は近隣にあるお豆腐屋さんとの連携から誕生しました。このお豆腐屋さんは地元山口の大豆を使っていて「美味しい」と評判で、そのおからを入れたら「美味しいチキンナゲット」ができるのではないかという発想から生まれました。
地域にある価値あるものを、連携することでさらに価値あるものにしていく。地域の生産者と連携することで、新たな価値が生まれてくるのではないかと思っています。
2023年には、グリーン購入ネットワーク(GPN)が主催する第24回グリーン購入大賞の農林水産特別部門において大賞を受賞いたしました。
グリーン購入大賞は、環境や社会に配慮した製品やサービスを環境負荷低減と社会的責任の遂行に努める事業者から優先的に購入する「グリーン購入」の普及・拡大に取り組む団体を表彰する制度です。
第 24 回グリーン購入大賞では、持続可能な調達(消費と生産)を通じた SDGs の目標達成、とりわけ、脱炭素社会やサーキュラーエコノミーの実現に寄与する取り組みを募集し審査が行われ、特別部門では、持続可能な農林水産業の実現に向けた取り組みを対象とした「農林水産特別部門」が設けられました。
創業以来、たまごや鶏肉を中心とした生産から加工、消費者へのお届けを自社で一貫して担っており、今回、その生産・加工の方法、お客様へのお届けに関する仕組みの構築、情報発信に関する点を評価いただき、受賞にいたりました。
サステナビリティの項目には、環境問題だけではなく、「人権」や「雇用」といった項目もあります。それぞれの個性、主体性を尊重しながら、チームで共に取り組んでいくことで、お客さまへの「もうひとつの台所」の提供も、持続可能な社会の実現にも貢献できると考えています。
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今回は、秋川牧園さまのサステナビリティへの取り組みをご紹介させていただきました。次回からも引き続き、パートナーさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介し、「サステナブルの輪」を広げていきたいと思います。
次回の配信もお楽しみに。
編集・著作:ヤマト運輸株式会社
秋川牧園
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