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はたらく人と猫の暮らし—音楽クリエイター・ヒャダインとポンちゃんの場合—

日常に癒しと豊かさを与えてくれる猫との生活。老若男女を問わず、さまざまな分野で活躍する猫好き仕事人の方々に、猫と過ごすことで得られるひらめきや創作の源を聞いていく新連載がスタート。

初回は、音楽クリエイターとして活動するヒャダインさんが登場。私生活のパートナーとして溺愛する飼い猫ポンちゃんの魅力や、創作活動に変化を与えた愛猫との暮らしについてお話を伺いました。

TV番組『PON!』の収録で出会った愛猫ポンちゃん

— さまざまなアーティストへの楽曲提供など幅広く活躍されているヒャダインさんですが、改めて具体的なお仕事の内容を教えていただけますか?

音楽クリエイターとして音楽を作る仕事として、作詞、作曲、編曲、ボーカルディレクション、プロデュースなどを行っています。

— 音楽作りに関わるほぼ全てですね!そんなヒャダインさんの忙しい日々を支える存在として、Instagramにもたびたび登場している愛猫のポンちゃんとの出会いについて教えてください。

ポンちゃんとはちょうど10年前に出会いました。きっかけは、自身の楽曲プロモーションで当時放送されていた情報番組の『PON!』(日本テレビ系)。以前から猫を飼いたいと周囲にも話していたことから、番組内でペットショップの子猫を紹介してもらうという企画がありまして……。今考えるとすごいですよね(笑)。そのときにスタジオに来ていた3匹の子猫のなかにいたのがシンガプーラのポンちゃんでした。

— 3匹のなかでポンちゃんに惹かれたポイントはどこだったのですか?

スタジオのなかでぴょんぴょん飛び跳ねて、放っておくとどこかにいなくなるくらいひときわ元気な子で、一目見たときから「は!この子だ!」と思い、その日のうちに連れて帰りました。『PON!』で出会ったことから名前も「ポン」と名付けました。

— ゲスト出演をきっかけに新しい家族を迎えられたとは、激動の一日でしたね。それまで猫と暮らしたことはあったのですか?

実家では僕が10歳の頃から猫を飼っていて、猫との生活の楽しさはよく知っていました。一人暮らしをするようになってからも、猫のように可愛いものと一緒に暮らしたいなという気持ちはずっとあって。仕事柄、家での作業も多いですし、寂しい思いをさせずに一緒にいられるはず……と思っていたところに運命の出会いがありました。

子どもであり、兄妹であり、友達で恋人。全てを備えたポンちゃんという存在

— 第一印象はおてんばだったというポンちゃんですが、どのように絆を深めていかれたのですか?

最初はやっぱり家族になりきれていなかったので、喧嘩というかお説教もたくさんしました。

— お説教ですか?!

そう、お説教。猫のイメージとして、独立独歩で我関せずみたいなイメージを持たれてる方もいると思うのですが、全員が全員そうではなくて。うちの子はすごく甘えてきたりする依存型メンヘラ系猫なんですよ。小さい頃は特にそうで、どこにでもついてきてしまうので、「そういうのは良くないよ。君は独立して生きていかないといけないんだ」と、座らせてコンコンと説教したこともあります。

— 可愛い反面、厳しく育てられたのですね。

甘やかしてあげたい気持ちはもちろんありますが、万が一僕がいなくなったときに、心が耐えきれなくなってしまうのは可哀想じゃないですか。だから、独りでもちゃんと生きていける強さを身につけなきゃいけないですよというふうにずっと言い聞かせていて、最近ようやく納得してくれるようになりました。

— ポンちゃん賢いですね。なんだか、飼い主と猫というよりは親子のような絆を感じたのですが、ヒャダインさんからみたポンちゃんはどういう対象なのでしょうか?

もう全てですね。子どもでもあり、友達でもあり、兄弟でもあり、恋人でもある。全ての条件を満たしてくれる。ポンちゃん1匹で僕に必要な関係性が全てパッケージされています。

— まさに理想的なパートナーです!実際に暮らしてみて生活サイクルにも変化はありましたか?

やはり家にいることが楽しくなるので、自宅で制作をしたいという気持ちも増えましたね。あとは良くも悪くも熱い。寝るときも隣に来てくれるので、夏場は「暑い」と思うんですけど、今くらいの季節には「暖かい」になってきて、そういった感情が心の温かさにもつながる。本当にいいことづくめです。

— 物理的にも精神的にもぬくもりが増えますよね。

部屋にこもって曲作りをしていると、いつも同じ部屋のなかでじっと「なにをやっているんだろう」と見守ってくれます。また、作業中に僕が歌って仮歌を録音することがあるのですが、結構大きな音量で歌うので「大丈夫か?!」と心配して、ニャーニャー言いながら近くに寄って来てくれることもあります。そういうときはポンちゃんを抱き抱えながら一緒に歌ったりしています。

— 優しくて、頼もしい存在ですね。

うちの猫は10年間“自宅警備員”をやっているだけあって、本当にすごいんです。自宅警備のプロ。この間も珍しく自宅にゴキブリが出て、第一発見者はポンちゃんでした。椅子と椅子の間をずっとカリカリしていて、「どうした?もしも虫がいたらやっつけてよ」なんて言っていたら、すごい大きいヤツが出てきて…。僕が驚いて「うわぁーーー!!!」と叫んだら、その声にポンちゃんが驚いて逃げちゃって、やっつけられなかったんですけど(笑)。

— コントみたいですね(笑)。

そのあとにまた違うところでポンちゃんが発見して、ひたすらに猫パンチをくらわせて弱らせてくれていたので、「こっからは任せな!」と凍結スプレーで僕がトドメをさして無事に退治することができました。

— ナイスコンビプレーですね!10年来の絆を感じます。

本当にあの時はハイタッチしたいくらい興奮しましたね。ポンちゃんは自宅警備員として侵入者は絶対に許さないという強い意志を持ってくれています。

二人のマイブームは“だるまさんが転んだ”?!

— ポンちゃんとの最近のマイブームはありますか?

最近はよく一緒に “だるまさんが転んだ” をして遊んでいます。

— ポンちゃんとですか?

そうなんです。僕がいつも鬼なんですけど、陰に隠れて「だるまさんが転んだ」と言うと、シュッとその場で止まって、また「だるまさんが転んだ」と言っている間に近づいてきて、最後は本当にタッチしてから逃げていくんです。ひたすらそのループ。あとは、最近テラスのある家に引っ越したので、晴れている日に外でだらーんと日向ぼっこするのが好きみたいです。

— そこまでコミュニケーションが取れるのはすごいです。

気分転換になりますし、人間相手だとここまで都合よく遊んでくれないですからね。僕のオフに合わせて遊んでなんて言えないし。かといって、犬だったらお散歩とか行かないといけないけど、そういうことも猫にはないので。僕のように自宅での作業が多い職業には、猫との暮らしが向いている気がします。

— ポンちゃんと暮らすことで、音楽クリエイターとしての創作にも影響はありましたか?

基本的にポンちゃんは休憩担当。いざ作業を始めると、いつも3、4時間くらいガーっと集中して無休憩で進めるのですが、急に甘えた声を出して膝に乗ってきたりするんです。「なに私のことほっといてるのよ!」と言わんばかりにこちらを見てきて、必然的に休憩タイムを作ってくれるんです。カーナビとかでよくある、「2時間経過しました。休憩しますか?」といったアナウンスみたいなイメージ。

— ポンちゃんタイマーでオンオフの切り替えを教えてくれるんですね。休憩タイムはどのように過ごされているのですか?

ポンちゃんで“猫吸い”をさせてもらって、エネルギーチャージをしています。猫吸いするとすごく嫌な顔してるんですけど、なんやかんや許してくれる。あとは先ほどの “だるまさんが転んだ” をしたり。今までオンオフの切り替えがあまり得意ではなかったのですが、ポンちゃんと時間を過ごすことでリフレッシュできて、綺麗にオンに戻すことができるようになりました。マネージャーとしても非常に優秀な存在です。

— 猫ってキーボードや配線など好きなイメージがあるのですが、ポンちゃんはいかがですか?

それはあまりないんですよね。鍵盤を邪魔したり、パソコンのキーボードを邪魔したりすることがないので、やっぱりよくできた猫ですね。そういった仕事の邪魔は1回もしたことないかもしれないです。

一緒にいる年月によって常に更新していく「今が一番可愛い」

— そのような環境下で長年楽曲制作をされてきたヒャダインさん。ポンちゃんとの思い出の曲もありますか?

中川翔子さんがマミタスという大事な猫を亡くされたときに、愛猫への想いを込めた「大好き」という楽曲を書かせていただいたのですが、その仮歌を入れる作業のときにポンちゃんがぐるぐる言いながら入って来たんです。じゃあポンちゃんもレコーディングに参加しようということで、ぐるぐるぐるぐるという音を録って、実際に楽曲にも使用しました。

— ポンちゃんもレコーディングに参加したんですね。ポンちゃんと暮らして10年が経ちましたが、10年前に思い描いていた猫との暮らしにギャップはありましたか?

まさかこんなにも年々、可愛くなるものが存在するとは驚きました。飼うまでは子猫のうちが可愛さのピークだと思っていたのですが、実際は「一番可愛い」を毎年更新していくんです。むしろ、子猫のときは全然懐かなくて他人って感じ。ずっと一緒に過ごしてきたからこそ、今が一番可愛いですね。

— 距離が縮まるにつれて、どんどん愛着が増しているのですね。

関係性も年によって変わってきたりします。それまではベッドに来てくれなかったのに、急に一緒に寝てくれるようになったり。逆に、この時期は寝てくれないんだなとか、変化も多いので、そういうところは人間関係にも近いなと思ったりします。

— ポンちゃんのお気に入りの遊び道具はありますか?

本当にそれも年によって変わっていて、猫じゃらしが好きだった時期もあれば、あるメーカーのおもちゃにクレイジーなまでに反応したかと思えば、ある日いきなりすんとして「なんですかそれは。下げてください」みたいに冷めるんです。好きだと思ったから、三つも買ってきたのに……みたいなこともあったり。歳をとったというのもあるかもしれないですけど、なぜか今はそういうおもちゃ系みたいなものを見たら逃げ出すようになりました。

— 予測不能ですね。

今はビニール袋が好きみたいです。ビニール袋を置いておくと、自分から入ってくるので袋の上下を持って、2階から1階のベッドまで運搬をする遊びをしています。ビニール袋のなかで目をキラキラさせながら、「何が起きるんだろう」ってワクワクしてるのがたまらなく可愛いんです。

— 最後に、音楽クリエイターであるヒャダインさんにとって、ポンちゃんはどんな存在ですか?

創作活動において、オフの作り方を教えてくれる存在。オフがないとオンも作れないですし、とくに複数の曲作りを抱えているときは本当に助かっていて、一曲終わるごとに“猫ブレーク”を挟むことで、次の作業にすんなり取りかかることができるんですよね。ポンちゃんはオフがどれだけ大切かということを教えてくれる大切な存在です。

プロフィール
ヒャダイン(ひゃだいん)
本名は前山田健一。3歳の時にピアノを始め、音楽キャリアをスタート。作詞・作曲・編曲を独学で身につける。ももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」などアイドルへの精力的な楽曲提供を行う一方、SMAP、ゆず、郷ひろみなどのビッグアーティストや、アニソン・CM音楽・映画劇伴の制作など多岐に渡りその才能を発揮し、圧倒的な世界観でシーンを席巻し続けている。

スタッフクレジット
photo:Kyouhei Yamamoto
edit&text:Mikiko Ichitani
Produced by MCS(Magazine House Creative Studio)

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