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雑談集④
【読書について】
以前、Twitterで岩波文庫がトレンドに上がっていたんで見に行ったら「岩波文庫全部読め」みたいな放言がどこかであったらしくて目を剥いている。
「全部読め」が問題じゃなくて、岩波文庫が他の文庫レーベルより持ち上げられているのが問題のような気もする。
岩波文庫が格式高いレーベルに見えるのは確かなんだが、岩波文庫が他のレーベルではあまり刊行されない教養書の類を多く収録しているのでそう見える部分もある。
それはそれとして、岩波文庫は訳文が古く、解題も古い場合があるので、モノによっては光文社古典新訳文庫などで読むほうが適切な場合もある。
本はただ読めばいいというものではなく、読んで、その内容をいかに取り込むかが大事なので、読了冊数マウントは実は無意味。読んでも自分の血肉になっていなければ意味がない。哲学書を読みふけっていても理解できてなければ読書の意味がなく、ラノベばかり読んでいてもそこから何かを得られれば実のある読書と言えると思う。
【最近のテレビ特番】
最近のテレビ特番は昔(~2000年代)みたいに一つのテーマを掘り下げるものが無くなり、トピックを数多く出すタイプに変わってきている。
歴史系の番組などもそうなのだが、見ているとちょうど学生だった頃(~2010年代初頭)にKAWADE夢文庫などの歴史雑学本で読んだ内容がそのまま取り上げられていたりして、シラケることが多くなった。
Twitterを始める前、読んだ本の内容は主に両親に話していたので、親(特に母)は僕から教えられるかたちで歴史の雑学を得るようになり、テレビを見るたびに「この話、息子(僕)に聞いて知ってるわ」と思ってシラケていたらしい。
【胡散臭い本が増えている】
久しぶりに本屋へ行ってきたんだが、人文・社会科学系の読み物で良質なものが減り、センセーショナルだが胡散臭い内容の本が増えている気がする。これが一部の教養新書にもみられる。
学術系出版部門を持つ講談社や筑摩書房などにはその傾向がないので、専門知識を得ようとすると、学術系部門に強い出版社(特に、特定の分野に特化している出版社で、論文集などを刊行している出版社)の本を選んで読む必要がありそうである。
ガチの陰謀論系の本が「歴史読み物」「時事読み物」の仮面を被って売られている。『ムー』みたいな感じで楽しむならいいが、内容を真に受けてそれを信じ込んでしまうと陰謀論に傾倒するのは目に見えている。
こうした本を規制できないなら、読者側がそれを回避できるようリテラシーを高める必要がある。
【稀覯本の復刊について】
2024年、稀覯本となっていた古典ミステリーの復刊&文庫化が相次いだ。しかし、なぜ今になって復刊されたのだろうか。
中公文庫に収録されたチェーホフの『狩場の悲劇』とドゥーゼの『スミルノ博士の日記』は東都書房の『世界推理小説大系』が底本で、バウチャーの『密室の魔術師』は『別冊宝石』に訳出されたのが底本だという。
入手不可になっていたものが読めるようになったのはありがたいが、実を言うと「今さら感」がなくもない。海外古典推理小説の翻訳ブームも過ぎ去ってしまった感があり、しかも新訳ではなく旧訳のままの復刊&文庫化である。
嬉しいが、いささか違和感が残る。