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『徒然草』に「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」という一節がある。昔から、日本人は不完全なものにあえて美を見る感性を磨いてきた。例えば、花は満開ではなく五分咲きや七分咲きを愛で、満月のみならず三日月や十六夜月に風情を感じ、散りゆく紅葉に「あはれ」を見た。 日本美術においても「不完全」や「ありのまま」が求められ、また「余白」に美を感じた。谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』というエッセイを書いているが、意図的に陰を残すことほど、日本らしいものはない。陰と陽の調和を愛で、あえてものを
人は生まれた瞬間には自我を持たないので、自分の名前を自分でつけることができない。したがって、名付けるのは他人である。多くの場合、名付けは両親が行うが、両親が自分で考える場合もあれば、姓名判断などで決めてもらうこともあるだろうし、祖父母に決めてもらったり、知り合いに名付け親になってもらったり、そのあたりは多様である。ただ、名前は後から変えることもできるが、多くの場合、一生使うものである。
『神、人を喰う』(六車由実/新曜社)に概要が詳しく紹介されているが、愛知県の尾張大国霊神社に「儺追(なおい)祭」という祭礼がある。岩手県黒石寺の蘇民祭や岡山県西大寺の会陽と似た裸祭りだが、祭の次第は時代によって変容しているものの、選ばれた特定の人を打擲して形式的に追放していたと言われ、一種の厄払いの祭である。儺追祭の名称も、おそらく追儺(ついな)から来ていると思われる。この選ばれた人(儺追人)は、古くは恵方で生け捕りにされてきたそうで、祭の発端からかなり手荒だったようだが、江
今年放送している『わんだふるぷりきゅあ!』は人と動物の交流がテーマになっている。 『わんだふるぷりきゅあ!』にはニコガーデンという異世界が登場するが、ふとYouTubeで動画を見ていたら、ニコガーデン=他界(あの世)という考察が流れてきた。ペットが死んだときの「虹の橋を渡る」という表現からの連想のようだが、いろいろ気になる考察である。ニコガーデンにはすでに絶滅した動物もいて、それがこの仮説を有力にしている。もっとも、他界というのは死後の世界だけではなく、神々が住まう高天原も他
『ドキドキ!プリキュア』はトランプ(元大統領ではない)がモチーフだったが、細かいところまで手が込んでいて好きだった。 例えば、トランプのスート(マーク)にはそれぞれ以下の意味がある。 ハート=聖杯=愛 ダイヤ=宝石=富 クラブ=棍棒=幸福 スペード=剣=権力 これらはタロットカード由来で、スートはそれぞれ聖職者・商人・農民・貴族を表す。主人公4人はこのスートから名前が取られている。 相田マナ→愛→ハート 菱川六花→菱→ダイヤ 四葉ありす→四つ葉のクローバー→クラブ 剣崎
(注:筆者は『葬送のフリーレン』を未読・未視聴のまま考察している。文中、おかしなところもあると思うが、ご容赦願いたい。) 『葬送のフリーレン』は、2020年から『週刊少年サンデー』に連載されている異世界ファンタジー漫画である。「魔王討伐の後日談」として物語が始まるのが異色である。主人公の魔法使いフリーレンは長命なエルフ族の出身。かつて旅をともにした同胞たちに先立たれ、思い悩んだ末に「人間を深く知る」ため旅に出る。 この漫画のハイライトの一つが、フリーレンと断頭台のアウラの対