女性の年齢には触れてはいけない、関わってはいけない【短編エッセイ】
大学生の頃、スポーツジムの受付のバイトを始めた。
「今日から入りました矢間田です。よろしくお願いします!」
元気よく挨拶をして、良い印象を残せたようだ。始めは先輩から指導してもらい、業務を覚えるように頑張った。
それから数週間経ったのちに、1人の先輩と2人で受付に立つことになった。たわいもない話をしながら「ねえ、私っていくつに見える?」と質問をされた。
さて、これは爆弾質問である。
全世界の男性が悩んでいる問いだ。
見た目年齢よりも若い数字を言っておけば、大体満足して終わるのだが、あまりにも若すぎる数字を言ってしまうと、お世辞感が強くなってしまうのだ。
お世辞言ってるじゃんと思われるのも少し恥ずかしい。
この時は少し悩んだ後、そうだ、逆に年齢をぴったりと当てに行ったらどうだろうかと思った。
「ほら、いくつだと思う?当ててみ!」と先輩女性はニヤけながら僕を試すかのように言ってきた。
いや、そうか、待てよ、これはあまりにも自信満々に見える。ということは、年齢を言われた後に…
「実は〇〇歳でした。」
「えぇ!見えない!めちゃ若いですね!!」
このようなやり取りが今までも行われてきたのではないかと頭に浮かんだ。
ということは、見た目よりも意外と歳を重ねているということではなかろうか。
それならば、見た目で感じた歳よりも+5歳くらいの年齢がピタリ賞の確率を高めてくれるのでは?と考えた。
さて、この頃の僕を叱りたい。
無難に大袈裟に若い数字を言って「それは見え見えのお世辞だろぉ!」と叱られていたほうがよかった。
なぜ本気で当てにいってやろうと考えてしまったのか。過去に戻れるのなら、口を縫いつないでやりたいし、空からカンペを出して指示を出してあげたい。
「そうですね、えっと、当てに行きますね…(見た目より5歳くらい上を言って…)ズバリ39歳ですね!?」
そこから先の物語は語らずとも分かるだろう。
先輩から笑顔は消え、静かにバックヤードへと歩いていった。そこから1週間は口をきいてくれず、新人の僕は半人前のまま受付の仕事を1人で対応していた。
あの時の出来事を今でも謝りたい。
そしてその事件後から、年齢を聞かれたときは、真剣に悩んだふりをして「…え?2、20歳とかですかね?」と答えるようにしている。
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