梨の秘密。
千葉県はこの時期になると、一気に一つの果物に人気が集中する。その果物とは梨です。私は、梨を食べたことはあるけれど、その詳しいことを聞かれた時に答えられるのは「甘いか、甘くないか。」とか「品種がどうとか。」そのレベルだ。
ただ梨ことは、お客様に聞かれたりするし、他の店舗では販売もしている。扱っているお店の方のことを気にしてみると、いつも「不足している。」や「少しでも余裕があれば、他の店舗のお客様にも。」と、梨の情報が飛び交い、見るからに不足しているのがわかる。
それは作り手の農家さんが減っているのか、またはそもそもそんなに量がないからなのか。だけど千葉県は、梨の産地として有名とも言われている。その梨を出荷してくれる農家さんは、年々増えてはいる気がするけど、それでも量が足りないそう。
疑問だ。
加えて梨は、8月のお盆に【幸水】と言う品種が出荷のピークを迎え、その後に【豊水】とか【秋月】とか、さらには【かおり】なんて品種まであるんだそう。何だかいつも食べているばかりで、特に気に留めることもなかったけれども、今回梨の農家さんのお宅訪問に同行する機会をいただけたので、少しでも梨のことを知ろうと農家さんに話を聞いたり、千葉県の梨について調べてみました。ご興味あれば、ぜひご一読ください。
千葉県は梨の産地。
千葉県は梨の産地と言うけれど、一体どれほどなのかを調べてみました。千葉県のホームページによりますと、その歴史は古く江戸時代から続くのだとか。収穫量ともなるとやはり全国でも1位で、その収穫量は30,000トンにも及ぶそうです。
千葉県がなぜ梨の産地になったかを調べてみると、千葉県のホームページにこう記載がありました。
「どこか落花生に似ているなぁ。」と思ってしまったのですが、火山灰土壌が梨の生育に適しているんだそうで、良い作物を育てるには良い土壌とか、水はけとかを必ず目にする気がする。さらに言えば、海に囲まれ温暖な気候と言うのもあり、さまざまな面で千葉県というのは恵まれた環境にあるんだなぁ。と言うことを改めて感じました。
そして千葉県の中でも最も多く栽培されているのが白井市になるそうで、果樹園の面積としては304ヘクタールにものぼるそう。だけど今の私には、その広さがイメージできない。そこでインターネットで調べてみたところ、比較対象は東京ドームで64個分と言われたところで、何だかよけいわけがわからなくなりそうだったので「広いんだ。」ということだけを認識しようと思いました。
その白井市に続いて、市川市、鎌ヶ谷市、船橋市、市原市と続いていく。こんだけ梨の量はありそうなのに、なぜ毎年のように「梨が足りない。」と言う声を耳にするのか。そんな中、こんな記事を目にしました。
近年、こういった天候による作物の被害が増えている気がする。梨に関しても同じで、今年の6月に雹(ひょう)の被害があったようです。これには、千葉県知事の熊谷知事もツイートしていたのをお見かけしました。
実際に市川方面の農家さんを伺った際の上司のツイートを見ることで、その被害が手にとるように分かりました。
農家さんと言うのはその土地という自然に恵まれていることもあれば、時にはその自然によって影響を受けてしまうという、この環境に少し複雑な思いを抱いてしまいました。
歴史ある農家さん。
そんなこんなで、少し調べてみると今まで食べていただけの私にとっては、いい刺激もあり、自然を相手にするという複雑な気分とを感じさせてくれて、すでに梨への興味や知識が深みを増していくばかり。
そして肝心の梨を作っている農家さんの話を伺ったのが、市原市で梨農家を営んで、70年以上にもなるというヤマニ農園さんです。
今の代の根本さんで、4代目にもなるそう。根本さんのまわりにも梨農家さんが結構あり、周辺には梨の畑であろう青いネットがはり巡らされ、そこらじゅうに広がっているという印象でした。
千葉県には長年住んでいる私も、間近に梨の樹々たちが広がるのをはじめて目の当たりにし驚き、ついついその畑の中で梨の凄さに見惚れてしまいました。
ヤマニ農園の根本さんによりますと、今年の幸水梨はなんでも小ぶりだそうで、しかも実るのが遅くなってしまったんだそう。あまり農家さんと話したことがない私は、ちょっとためらいもありましたが勇気を出して、その理由を聞いていみました。
それは、花が咲くのが遅かったからだそう。
今年の1月、2月が特に気温が低く春先の果物や野菜なども、言われてみれば出荷時期に遅れがあったような記憶が蘇ってきた。先程の雹(ひょう)の被害に加え、梨が実までの育つ過程でもまた自然の影響を大きく影響を受けていることに、また驚きがあった。
そしてヤマニ農園の根本さんは、はじめましてな私の不躾な質問にも、笑顔で答えてくれた。そんなところからも、人柄がうかがえて私自身も何だか嬉しくなってしまった。
基本的に、幸水梨は花が咲いてから110日から120日間で実るんだそう。花が咲いてから、実までがおおよそかもしれないけど、日数が決まっているなんて初めて知った。花が咲いてしまえば、素人ながらカレンダー見とけば私でもわかるんではないか。そんなことを考えながら、話を伺っていった。
のちのち調べてみて分かったことですが、この生育期間は品種によっても違うということでした。
しかし幸水梨という品種は主に、お盆の贈答品として利用したいというお客様がとても多いと聞きます。それは店舗だけでなく直接買いに来られるお客様もいるそうで、お盆を過ぎて出荷するものに関しては、お客様のご期待に添えないことを意味してしまう。さらに言えば、梨という果物は早めに収穫してそこから甘くなるなんていうこともないそうなので、ある程度の大きさになったところで、早めに収穫することもできない。
梨の実を大きくし収穫を早めるために、成長促進をうながす植物ホルモン剤があるようですが、ヤマニ農園さんではもちろん使わずにいかに大きく実らせるかという栽培方法で取り組まれているのだそう。
幸水梨は、主な用途としてお盆に向けた贈答品がほとんどになります。なので、どうしてもお客様からは、大きいサイズ感のものを求められることがほとんど。とは言えお客様のことを考え、できる限りの栽培方法でお客様のご期待に添えられることを考え、取り組まれているんだそうです。
ヤマニ農園の根本さんは言います。「自分たちは農家だからわかるけど、お客様は知識がないから農薬というだけで、不安になってしまうこともある。実際に口にするものでもあり、大切な人への贈りものとしてもご利用いただくので、安心して食べていただけるような育て方を続けていきたい。」
農家さんの考えを間近に聞いてしまうと、それだけで梨の見方というものがすでに変わっていく感覚が何だかわかった。農薬を使う使わないがどうこうではなく、何を大切にしているかが感じ取れたのが私個人として嬉しくなってしまいました。
もっと梨のこと知りたくて。
冒頭にも書かせていただきましたが恥ずかしい話、私は梨を食べたことはあるけども、知識はほとんどないのです。幸水や豊水があるのは知っているが、その成り立ちについてなど全く知らなかったのです。
世間でも農家さんの中でも、きっと当たり前のことだろうことでも、今回いただいたせっかくの農家さんとの直接お話しする機会。無礼を承知で、梨の気になったことを根本さんに聞いてみました。
根本さんは口調は、とてもやわらかく伝え方とか説明してくれる言葉も、優しいかったので、知識のあまりない私でもわかりやすくなるように答えてくれました。
【ジョイント】とは簡単にいうと接木のことで、例えば木の根っこの部分が幸水で、枝の部分が豊水みたいなことです。実際には、もっと違う品種【石井や松島】という聞いたこともない樹が、根っこの部分になっているそうです。
そして実際に梨の樹をよく見てみると、接木されているところが多く、素人目にはどれがどの品種かわかない枝が多く、目で追って見てもよくわからなくなってしまうほどだった。
そんな中でプロの方々も、枝で見分けることは難しいとのことで、接木されている部分には、わからなくならないように品種の名前が書いてあるタグが吊るされていた。手書きの文字が、何だか可愛らしくもありました。
ヤマニ農園さんは長い間、房の駅に梨を納品してくださっています。もちろん房の駅に納品していただける以前からいたお客さまや、取引先もあったとのことですが、そんな中でもできる限りの数を房の駅に納品してくださる姿勢には、本当に頭が下がる思いでした。
それはきっと、こちら側の販売する人たちの気持ちというのも伝わったことがあるのだとも思うし、実際に取引をさせていただくうちに伝わる農家さんへの信頼感というものがあるからこそ。そんな風にも感じ取れました。
梨の知識なんてまったくない私を、お忙しい期間にもかかわらず快く対応していただいたヤマニ農園さん。房の駅には、他にも多くの梨を作られている農家さんがいる。より多くの方に接して梨の魅力を引き出していけるように取り組んでいきたい。
とりあえず今年は、しっかりとぜーんぶの品種を美味しく食べてみるところから始めようと思います。
引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。