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休養 入浴法その4 シャワーと冷水浴

前回まで入浴による健康法を紹介してきましたが、一人暮らしの方や浴槽の無い暮らしをしている方などは、日頃ゆったりお風呂に浸かりたくても、なかなか浸かれない場合も多いのではないでしょうか。
シャワーでは体温が一定以上に高まらず、からだの働きを活性化させるヒートショックプロテインを増やすことはできないと前回は書きましたが、湯船に浸かるのとはまた別の健康増進効果もあるため、今回はシャワー入浴法の紹介をしたいと思います。

シャワーのみの入浴を習慣としている人は、お風呂大国日本においても年々増え続けています。
住宅リフォーム専門誌『リフォーム産業新聞』によれば、「季節に関係なくいつもシャワーで済ませる」「季節に関係なくシャワーで済ませる場合が多い」人の割合は、2008年の12.4%から、2015年には18.9%に増えています。
また2020年9月、日本全国の15歳〜59歳の男女を対象にしたLINEリサーチの調査によると、普段のお風呂は湯船派47%に対して、シャワー派が52%と過半数を占めるまでになっています。
年代別では、50代のシャワー派が45%なのに対し、20代では64%と、若い世代でシャワー派が多くなっています。

入浴による三大健康効果としてあげられる、温熱作用、静水圧作用、浮力作用の内、シャワーで得られるのは温熱作用のみですが、朝の目覚めや暑い夏の日に浴びるシャワーはまた格別です。
朝の起き抜けは副交感神経が優位な状態ですが、シャワーを浴びることで交感神経が目覚め、からだもあたまも活動体制に切り替わります。
特に普段体温の低い方は、朝のシャワーで体温を上げることにより、日中が活動的に過ごせるようにもなり、新陳代謝も免疫力もアップします。

ヒトは冬でも毎夜コップ1杯程度の寝汗をかくのが普通で、暑い夏の夜にはそれが2杯分3杯分と増えます。
ストレスやからだの疲れが溜まっていると、汗と共に大量の皮脂も分泌するため、翌朝不快感を感じることも多いと思います。
そのままでは皮脂が遊離脂肪酸となり、酸化して雑菌が繁殖しやすくなるうえ、体臭や炎症の原因にもなるので、朝のシャワーでスッキリさせましょう。

朝は気温が低いため、夜の入浴と同じくヒートショックには注意が必要です。
予め温かいシャワーを出して浴室内の温度を上げておき、少し熱めのお湯を手足の先から徐々に当てていくと良いでしょう。
短時間で体温を上げるためには、足のくるぶしや膝、肘、仙骨、背骨の突起や胸骨など、皮膚のすぐ下に骨がある部分を温めるのが効果的です。
特に、肩先から鎖骨にかけての部分には、全身を循環したリンパ液が心臓へ戻るための合流口があり、ここに温かいシャワーを当てることで、血液やリンパの流れが良くなって、免疫系の働きも高まります。

朝の熱いシャワーは、このように人生をより健康的で豊かにしてくれる素晴らしいアイテムであるといえますが、逆に冷たいシャワーの効果を提唱している人もいます。
通称「アイスマンThe Iceman」として世界中で知られる、オランダ人健康実践家ヴィム・ホフWim Hofです。
ホフは氷キューブのコンテナに1時間50分浸かるなど数々のギネス記録を持ち、2015年には難病患者を含む18人の実践者たちと共に全員短パン一丁でキリマンジャロに登頂して、改めて冷水メソッドの効果と可能性を世に知らしめました。
ヴィム・ホフ・メソッドによれば、呼吸法と氷風呂や冷水シャワーの組み合わせによって、自律神経系や免疫系が整えられ、リウマチや糖尿病を始め、あらゆる病気の90%が治せるようになるということです。

ホフによる冷水シャワーメソッドの系譜を遡ると、19世紀ドイツで自然療法を提唱したセバスチャン・クナイプ神父(1821-1897)にたどり着きます。
神父は水温5〜10℃のドナウ川で冷水浴することにより、当時不治の病とされていた自らの肺結核を克服しました。
司祭として赴任していたバート・ヴェーリスホーフェン村にクナイプが建てた保養浴場には、年間1000人を超える療養者が訪れるようになり、村の中心産業ともなりました。
「水博士」として知られるようになったクナイプの水療法は瞬く間に広がり、今ではドイツ中のクアオルト(保養地)で実践される自然療法メニューの一つとなっています。

日本にも古来より、冷たい滝に打たれることで心身を鍛錬する「滝行」という技法があります。
自宅で冷たいシャワーを浴びることは、修験道の伝統に即した「ミニ滝行」であるとも言えます。
いきなり冷たいシャワーでは躊躇するという方には、温水シャワーで十分からだを温めてから、冷水に切り替える方法をお勧めします。
心臓や血圧に問題がある場合には、決して無理はせず、からだの声をしっかりと受け止め、あくまでも自己責任でお試しください。

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