温泉チャンス!その9【渋の湯】【地獄原温泉】(2024.03.20)
風邪を引いていた。私も妻も。
お昼少し前、「薬がないから買ってくる」と言って、私は出かけようとした。子供たちはドラえもんの映画のやつを見ていたので、付いてこようとはしなかった。しかし出かけようとする私に妻は大量の買い物をするよう言い渡した。それも重い物ばかり。
まぁいいやと思った。私はこのチャンスを生かして温泉に行くのだ。私は内心でざまみろと思って外出した。
私が向かったのは別府の鉄輪地区。鉄輪は観光客が多く、旅館や立ち寄り湯が所せましとひしめいている。そこかしこで湯気がもくもくと噴き出していて、浴衣で路地を歩く人などもよく見かけるような地区だ。
が、天気が悪い。朝から雨が降ったりみぞれになったり、それが雪に変わったり。かと思えば晴れ間が覗いたりして、まるで山のような天気だった。
私が鉄輪のコインパーキング(最近有料になった)に車を停めると外は少し雨が降っていた。にもかかわらずコインパーキングはぎっちり満車で、そのへんを観光客であろう人たちがたくさん歩いている。
私は急ぎ足で「みゆき坂」という、道の端々から湯気がわんさと立ち昇っているような坂を歩いていった。
しばらく歩き、どこの温泉に入ろうかと思い立ち寄ったのがここ「渋の湯」
中へ入ると運よく貸し切り状態だったので、写真を撮った。
お湯はめちゃくちゃ熱かった。湯温計を見ると45℃もあった。さすがにちょっと冷まそうかなと思ったが、我慢して入ってみると案外いけたので、そのまま入っていた。
お湯は熱いけど、浸かっている間は風邪を引いているのを忘れてとても良い気持ちだった。窓の外から坂を歩く人たちの声や足音が聞こえてきた。なぜだか浴室は明かりが点いておらず、暗いままだたったけど、それがまた良かった。
しばらくお湯に浸かっていると、いかにも観光で来たふうな男性が後から入ってきたので、私は出た。とても謙虚な男性だった。
外へ出ると待ってましたとばかり雨脚が強くなってきた。私は坂を急いで下ったが、湯上りの、しかも風邪を引いている体には雨が堪えるので、雨宿りがてらもう一軒温泉をはしごする事にした。それが「渋の湯」から歩いて3分程度しか離れていない「地獄原温泉」だった。
中に入るとお二人の地元の方と思わしきおじいちゃん方がいらして、私がお二人に挨拶をすると、「こんにちは」と応えてくれた。なんだか受け入れてくれたようで嬉しい。
しかしお二人はすぐに外へ出ていかれたので、私は中の写真を撮る事が出来た。
誰もいなくなった湯舟に私はゆっくり浸かった。年季の入った天井やタイルを眺めながらお湯に浸かっていると、自分がその脈々と受け継がれている歴史の一部となったようで、心地よかった。
滞在時間はものの10分程度だったが、私はゆっくりお湯を堪能できた。
外へ出ると雨は上がっていて、青空が覗いていた。
私の体は軽やかになっていた。私は風邪を引いていたのも忘れてドラッグストアへ向かった。大量の買い物をするために。