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自由をてなずける(2024.08.11)
※この文章は8月11日夜に書いています。
今日は去年亡くなった会社の会長の、初盆会だった。
私は初盆会へ出て、お焼香を上げ、その後は晴れて自由だった。
私が初盆会から帰るまで、子供たちは待てなかった。早く、妻の実家へ行きたくてたまらないのだ。なぜならそこには自由と無限のおやつがあるから。
その一方で私も自由を手に入れた。今度は前みたいなヘマはやらないと決めていた。あの失敗からまだひと月と経っていないのに、同じような事をやったらそれこそ大バカ者だ。
私は一度家へ帰って、喪服から私服へと着替えてから、バスに乗って別府の街へ出かけた。行き先は以前からずっと行きたかった「青い鳥∞黄い蜂」というカレー屋だ。
すべてが、思い描いていたとおりのカレー屋だった。カレーにまつわる思想やイメージがあちこちに表出しているのが見て取れた。そしてやはりビールはハートランド。間違いない。
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隣の席ではどこかの関西弁のバンド(オーガニックな演奏をするやつ)が打ち合わせをしている。男性一人と女性二人。柔らかい関西弁。みんな肌触りの良さそうな緩やかな服装をしている。
ビールをちびちび飲みつつ、店に置いてあった草木染めの本や小泉今日子のエッセイなんかをパラパラ読みながら待つこと10分。私のサグカレーが運ばれてきた。店長さんだろうか、カレーを運んできてくれた女性のその方はよく日焼けしていて、目から、表情から、パワーがみなぎっているのをひしひしと感じた。
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カレーは美味かった。美味いのは最初から分かっていた。私は全然思うようにあちこち行けないので、あまりにも調べ過ぎていた。店について知り過ぎていた。カレーが美味い事なんて重々承知だったのだ。
だけど私は終始幸せだった。カレーを待っている間も食べている間もずっと。カレーがなくならなければ良いなと思った。カレーが美味しいというより、このカレーを食べている事実そのものに多幸感が溢れていた。
カレーを食べ終わると私はパワーあふれる女性店員さんに負けないよう、ありったけのポジティブさを表情に湛えて「ごちそうさまでした」と言った。
店を出た私はなんとなく別府市街地のさらに中心部を目指した。というか、カレー屋は中心部からはだいぶ外れたところにあったから、私は暑い中けっこう歩かなければならなかった。
そうして歩いていると、別府の街の、朽ち果てていく過程のような、うらびれた、しかし時間の経過を克明に刻んだような風景をたくさん目にした。私はビールのおかげで少し頭のネジが緩んでいたし、少し穏やかになったとはいえまだまだ強い日差しを脳天に受け、さらにイヤホンでドローンな音楽を聴き続けていたので楽しくなってあちこちを写真に撮った。
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私は朝飯を抜いていたので、カレーを食べた直後であるのに、今度は古い町中華に入った。「大陸ラーメン」という店。
またビールを頼んだ。
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そして〆の冷麺
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私はかつてない程別府の街を堪能し、そして歩いた。
なんだかフラフラしてきたので、再びバスに揺られて私は帰ったが、家に一人でいると言いようのない寂しさが募った。前回はこの寂しさを打ち消そうとビールを呷って酔いつぶれた気がする。私はペースに気を付けて、袋麺などを夕飯に食べ、適度にビールを飲んだ。水風呂にも入った。
私は今度は自由をちゃんとコントロールする事ができた。しかしなぜだか空虚だ。昼間の、別府の街を歩いている時間の反動だろうか。たまに幸子(ポメラニアン♀)が身じろぎする音が響く程度の静かな家が、とてもよそよそしく感じる。まるで自分の家じゃないみたいだ。
明日は家族全員で妻の実家に行く。私はあんなに妻の実家に行くことが嫌だったはずなのに、今ではその事で少し安心している。
何かが間違っている気がする。