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温泉チャンス!その15【熱の湯温泉】(2024.06.30)

妻から買い物を仰せつかったので、温泉へ行くチャンスだと思った。私は無数の湯けむりが立ち昇る鉄輪(かんなわ)地区へ向かった。

鉄輪には長らく無料の共同駐車場があったのだが、それが遂に有料となった。私はコインパーキングへ車を停めて、鉄輪をしばし歩く。

猫がそのへんにたくさんいる


この幾重にも折り重なった感じがたまらない


無電柱化が必ずしも良いとは限らない


謎のオブジェ


由緒ある旅館で今はギャラリーやカフェになっている建物


旧富士屋旅館。いつか行ってみたい


お寺に続く階段


階段に咲いた花


門の奥の芝生が鮮やか


お寺の上から見下ろした景色。たくさんの湯けむりが立ち昇っている

私は努めて観光客のように振る舞った。私は元来人の目を気にする性格なので、「私は観光客ですよー。だから写真をパシャパシャ撮りますよ」というふうを装うと楽なのだ。

私はスマホ片手に町のあちらこちらを撮って回りながら、買い物せねばならない事を忘れて、気持ちが軽くなっているのに気づいた。観光客のように振る舞う事で、気持ちまでそういうふうになってしまっていたのだ。

私は私が独り者で、自由気ままな旅の途中、この鉄輪を散策しているという自分を夢想した。「私は自由で、私を待つ人間など誰もいないのだ」

やがてしかし、私は目的地である「熱の湯」へ行った。


右の建物が「熱の湯温泉」


素晴らしい面構えをしている

なんとこの「熱の湯温泉」は無料だ。別府の共同浴場はどこも安いのだが、ここに至ってはきっぱり潔く無料だ。なかなか町中にある温泉で無料というところはないのではないか。

建物の中に入ると地元の方々らしきおじいちゃんたちがいらっしゃって、私は軽く挨拶をして脱衣し、かけ湯したのちに湯へ浸かった。

「熱の湯」の名前のとおり、お湯はとても熱かった。46℃くらいあったんじゃないだろうか。一瞬体がピリッとしたが、やがて慣れて、私は浴槽の反対側で浴槽の淵に頭を預けながら天井を仰ぐようにお湯に浸かっている方の真似してみた。

熱い。とても熱い。が、それが良い。もくもくと湯気が湧いて、窓の外に吐き出されていく。どこかの男性が「お先!」と言って、出て行った。浴槽の傍らにぺたっと座って体を黙々と洗うおじいちゃんがいて、体毛がどこにも見当たらない。

気持ちが良いものの、さすがに熱くて私は5分程度しか滞在する事が出来なかった。しかし無料である。こんな貴重な温泉体験ができたのに、お金が一切かからないなんて、すごい事だ。

身も心も軽くなった私は近くのスーパーで夕飯用の買い物をした。4割引きの惣菜がたくさん出ていたので、大量に買って帰ったが、家族には不評だった。「だよね」と思った。



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