ママが好き(2024.11.07)
「ママが好きー!」と長女(5歳)が言った。
そんな事は知っていた。あの怖くてイライラしがちなママのどこがそんなに良いのか。機嫌が良い時と悪い時のギャップがすごいではないか。
でも子供たちがママを好きな事は本当で、それは仕方ない。子供とはそういうものだ。
しかし問題は「パパよりママが好きー!」と長女が言った事だ。
「え?マジで?」と真顔で聞き返した。場所は風呂場。どういう経緯でその話になったか覚えてないが、長女はモジモジしながらもはっきり「ママが好きー!」と言ったのだ。ガーン!
恥ずかしいのか?照れがあるのか?元来父親に対してはそういうものなのか?長女の意外な答えに私はまぁまぁ傷ついた。私は「もうポケモンカード買ってあげない」などと大人げない事を言ったりした。冗談ではあったけど、その事で長女は泣きそうにいなったので、「うそうそうそ!」と取り繕った。
長女がいなくなった風呂場で私は天井を仰いだ。
「そうか、ママが好きか」
私は一人風呂場を片付けた。浴槽の蓋を閉じて、床の泡を流した。それから次男の肘に貼ってあった絆創膏を二つに折ってゴミ箱に捨てた。
風呂場を出ると妻が洗濯物を洗面台で下洗いしていた。視線はそちらに落としたまま私の方は見ない。妻はさっきの長女の言葉を聞いていただろうか。妻の中に勝ち誇ったような気持ちがないだろうか。私は確かめなかった。
ここのところ急に冷え込んできた。冬が来る。