電話に出んわ #特別編
ガラケーにしがみついている今の生活がなんとも言えなく心地いい。
畑に行く時にもこの防水のガラさんをポケットに入れておけば
スコールに降られようが、転ぼうがぶつかろうが
大して気にすることはない。
まあ、そもそも用事があるとき以外は
ケータイを携帯していないので基本的に電話に出んわであるのだが。
そしてなぜだか畑に持って行けば
大体、畑のど真ん中で
脚が生えているのかと思うくらいにケータイは携帯されることを嫌い
ワタクシのポケットからするりと抜け出すのである。
土が丸出しの畑ならまだいい。
マナーモードで黒マルチの上に落とした日には
とんでもない規模の宝探しだ。
1日目は大体日が暮れる頃にしか気づかないから
一晩経ってからの宝探しを敢行しなければならない。
このナイトタイムに恵みの雨が大地を濡らし、
夜露も大地を湿らせる。
こともある。
故に防水機能を備えていなければ
ワタクシの手元にいる少ないユキチ君たちと
お別れする機会が多すぎるであろう。
現状。
賢い知人ばかりなのでそもそも電話に出んわなワタクシの
電話を鳴らしても時間の無駄であることを皆心得ている。
何なら昼間は必ず万年床の中でゴロゴロしているので
直接家に来た方が早い。
しかし。
もちろん玄関でワタクシを呼んだところで
低血圧を言い訳に万年床から這い出す努力はしない。
ひたすら狸寝入りである。
賢い知人は更に玄関が開いていることを知っているので
枕元にたどり着く。
まあ、そこまでの用事など滅多にないのだが。
電話に出んわなワタクシを
隣の家のおばちゃんは塀の向こうから
大声で呼ぶ。
こちらは声なんぞ張りたくないので距離的に
糸電話でも繋いでみたら常にオンラインで
ちょうどいい気がしているのだが。
酔っぱらいたちはタクシーを呼ぶ代わりに
家まで連れて帰れと突然玄関に現れる。
上記の知人の行動を鑑みても
やはりあまりケータイを常に携帯する必要性がない。
さて、写真のガラケーさんであるのだが
ワタクシのものではない。
ワタクシの今回のNさんは6年の時を共にしているので
最近すっかり持ち主に似てやる気がない。
以前携帯会社に勤務している人と偶然話す機会があった。
このガラさんの番号を見ただけで携帯会社が分かるらしい。
このガラさんが最近、たっぷりと充電しても
一回の電話で1分を超えたあたりから
疲れた疲れたとピーピー騒ぎ始める。
似なくていいところばかり似てくるので
どうにも嫌いになれない。
さて、写真のガラさんは知人のものであるのだが
3日前に新しく迎え入れた方であるらしい。
このご時世にまだガラさんを迎え入れるのかと
疑問に思う方は多いであろう。
が。
電話だけできればいい我々は作業の邪魔にならない
ガラさんほど相性のいい仲間はいない。
だから、どれだけ彼らを迎え入れる為に時間がかかろうとも
待つのだ。
我々の元に来てくれるまで。
今回、知人がこの写真のガラさんと出会うまでに
要した期間は1か月。
1か月待ってでもやはりガラさんじゃなきゃダメなのだ。
一緒に雨に打たれて、
どんな壁にぶつかろうとも
傷つかずに乗り越えていける心身ともに丈夫な
ガラさんと人生を共にしたい。
可能な限りずっと。