フクギで副業したい #特別編
どうやらもうこんな時期である。
フクギ
この黄色くふっくらとした実が落ちる。
ボトボトと。
こんなに毎日、コンクリートに色を与え
白い車の上に落ちて新しいアートを創り上げ
人々の通行を妨げるのに。
名前がフクギである。
漢字にするならば“福木”。
大層ご利益のありそうな名前であるのだが
そのご利益がこの実を綺麗に掃除する心の清い者に対して
もたらされているようにしか思えない。
油断したら踏みつけて蹴飛ばして、
更に頭の上から降ってさえくるのだ。
花はとても小さいのに
花に比べて大きな実をつける。
これが同属のマンゴスチン同様に食せるのならまだいいのだが
どうやら食せないこともないが美味しいものではないらしい。
そして、臭い
らしい。
防風林と紬の染料。
それだけで充分活躍はしている。
だが、気になるのは存在感抜群のこの実である。
こんなに落ちてくることに緊張感があるのならば
ニヤニヤしながらタイムマシーンに乗って
梶井基次郎の袂の檸檬と交換しに行きたい。
でも、そんなことをしたら
歴史が変わって梶井基次郎の代表作が
『福木』
になるのかぁ。
本のタイトルの緊張感がなくなるし
見た目の問題もあるのか。
端の尖った檸檬に対して
丸くてコロコロした福木だと
なんだか中途半端にハッピーな短編小説になるのかぁ。
彩を大事にしているあの小説の色合いが
少し赤くなってしまうか。
まぁ、でも梶井基次郎は橙色が好きみたいだから
悪くはないのかもしれない。
おっと、得意の妄想が暴走した。
ああ、妄想以外にこの実の活かし方を見つけたい。
フクギの実で副業してみたい。