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今、街の野鳥は何してる? 気になる真夏の鳥の暮らし

連日の猛暑に、私たち人間はぐったり夏バテ気味。
今年のお盆は、エアコンが効いたお家で過ごした人も多いのでは?
そんな中、暑い野外で暮らす鳥たちは、一体どのように過ごしているのでしょうか?
『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100』の著者・柴田佳秀さんに、8月に見られる野鳥の姿を教えていただきました!

夏の間、ツバメはどこに?

ツバメのオス

家の軒下で子育てをしていたツバメも、夏になるとすっかり姿を見なくなります。
はてさて、どこへ行ってしまったのでしょう。
あまりにも忽然と姿を消すので、昔の人は海の中に潜ってしまったと考えたようですが、さすがにそんなことはありません。

街のツバメは子育て中だった!

親鳥とヒナたち

実はツバメが街にいるのは、子育てをしている時だけなんです。
子育てしていないときは、日中は川や水田の近くにいて、獲物である飛翔昆虫を飛び回って捕食したり、近くの電線に止まって休んでいるーー。そんな生活をしています。
そして、夜は川や湖の岸辺に広がるヨシ原に集まって寝ているのです。

鳥が寝る場所を「ねぐら」と呼びますが、ツバメのねぐらは大規模になると10万羽くらいになり、おびただしい数のツバメを見ることができます。

大迫力の「ヨシ原のねぐら」

夕暮れとともに、ねぐらへ向かうツバメの大群

ツバメがヨシ原のねぐらにやってくるのは、日が沈む夕方です。
太陽が西の地平線に沈むころになると、それまで1羽も飛んでいなかったのに、いつのまにか空がツバメだらけになります。そして10分くらい乱舞した後に、ヨシの茎にとまりはじめ、そこで寝てしまいます。
そのねぐら入りの光景は何度見ても圧巻の一言。口から出てくる言葉は、「うわー……」しかありません。

夜になると、たくさんのツバメがねぐらに集う


ヨシ原のツバメのねぐらは、実は5月中旬くらいからできはじめます。
その頃は繁殖に失敗した成鳥が寝ていますが、次第にヒナが巣立ち始めると幼鳥が加わり、だんだんと数が増していきます。そして、関東地方では7月下旬から8月上旬に個体数が最大になります。
その後、次第に数が減り始めるのですが、これは成鳥がいなくなるからです。ツバメは、成鳥から先に旅立つ習性があり、8月下旬のねぐらは幼鳥ばかりになります。そして、9月になるとねぐらの規模はどんどん小さくなっていきます。

ただ、暖かい地方ほどねぐらのツバメの数が最大になるのが遅くなる傾向があり、渡りルートにある集団ねぐらは、10月まで使われることがあります。ツバメのねぐら入りは、とても迫力があるので、夏のシーズンになると各地で観察会が開かれています。自力でねぐらを探すのは経験が必要なので、観察会に参加してみることをお勧めします。大迫力に度肝を抜かれること間違いなしです。


真夏でも子育て カイツブリ

たくさんのヒナを連れたカイツブリの親鳥

日本の鳥のほとんどは、春から初夏が子育てのシーズンで、夏になるとヒナたちも大きく成長し独り立ちします。
しかし、自然界には例外がつきもの。夏でも可愛いヒナが見られる鳥がいます。その一つが、池に棲む水鳥のカイツブリです。

街中でも出会える身近な水鳥

カイツブリは、「公園の池にいる潜水の名人」というキャッチフレーズの通り、公園の池や湖などで見られる鳥で、ひんぱんに水に潜って小魚を捕まえて食べます。とにかく水から離れることがなく、巣もヨシやヒメガマなどの植物や杭に水草などを絡めて、水の上に作るほどです。

勢いよく潜水するカイツブリ

鳥としては繁殖期がとても長く、3月から11月頃まで続くのですが、1月にヒナを見たこともあります。ヒナに与えるエサが、小魚やエビ、水生昆虫なので季節に関係なく得られること、さらに繁殖失敗が多く、何回もやり直すことが繁殖期が長い理由なのかもしれません。
それでもやはりピークがあり、初夏から夏の間がもっとも繁殖する鳥が多くなる傾向があります。

親鳥がヒナを「おんぶ」する!

背中にヒナを乗せて泳ぐ親鳥

カイツブリの観察で、誰もが一番見たいのは親鳥がヒナを背中に乗せて泳ぐシーンでしょう。親の背中に乗って安心しきったヒナの表情をみると、本当に微笑ましくて思わず笑みがこぼれます。

ヒナは生まれてすぐに泳ぐことができますが、まだ体力がないので、少し距離があるときは親の背中に乗って移動するのです。また、危険が迫ったときも背中の羽の中に隠れることもします。
カイツブリは親の背中を見て育つのではなく、親の背中に乗って育つのです。

鳥の子育てを観察するのは、繁殖妨害になることがありルール違反ですが、カイツブリの場合はオープンな公園の池なので、そっと遠くから観察すれば大丈夫。ただし、極端に近づくと驚いて親鳥はヒナを背負うのをやめてしまうこともあるので、優しい気持ちで見守っていただければと思います。

(文・写真=柴田佳秀)



ツバメもカイツブリも、街中で観察できる身近な野鳥です。
『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100』には、そんな身近な100種の鳥たちの、観察がもっと楽しくなるお話を詰め込みました。ぜひ手に取ってみてくださいね!

■プロフィール
柴田佳秀  (しばた・よしひで)
1965年、東京都生まれ。東京農業大学卒業。テレビディレクターとして北極やアフリカなどを取材。「生きもの地球紀行」「地球ふしぎ大自然」などのNHKの自然番組を数多く制作する。2005年からフリーランスとなり、書籍の執筆や監修、講演などを行なっている。
主な著書・執筆に『講談社の動く図鑑MOVE鳥』(講談社)、『日本鳥類図譜』(山と溪谷社)、『カラスの常識』(子どもの未来社)など。


次回はとっても綺麗なハトの仲間「アオバト」について紹介します。

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