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ドワーフのアントンと収穫祭、大エルフのマクシミリアン

(この作品は最後まで無料で読めます)
わしはドワーフのアントン。今日は収穫祭じゃ。
薄暗く深い洞窟に住んでいるわしらがなにを育てられるか不思議じゃろ?

「やくそう」や「毒消しそう」じゃ。
こいつらはお日様のあたる畑では育たんのじゃよ。

じめじめしたわしらの棲んでいるような洞窟で一年かけてゆーっくり育つんじゃ。
苔の一種じゃからな。

白羊宮の原点の日に苔のもとを洞窟の畠いちめんにまくんじゃ、そうしたら毎日すこーしの水をまぶしてやる。
そうするとつぎの年の白羊宮の原点の日のまえには、「やくそう」や「毒消しそう」、あと「しびれから治るくさ」なんかが育っておる。

いちばん育てるのがむつかしいのは、「混乱から正気をとりもどすくさ」じゃな。それに10束のうち2束くらいしか役に立たん。
それも見た目はおんなじじゃから、使ってみるまで分からん。
でも高い値段で売れる、これとおなじ効果の魔法を使える僧侶や司祭はかぎられておるからの。

収穫は3日くらいかかる。
そのあいだは群れるのがキライなわしらドワーフもおのおのの鍛冶場から出てきて、みなで丁寧に苔をはがして、適度に乾燥させて、一度に使うぶんだけ袋づめしていくんじゃ。

ぜんぶの収穫がおわった4日めと次の5日めが収穫祭じゃ。
苔がなくなった畠でみなでエール酒を飲み、このときだけみなで食事をともにする。
歌もうたうぞ。
ドワーフの歌じゃ。

古くから伝わる大地母神に感謝する歌、ドワーフの戦士の歌、ドワーフの愛の歌、こんなにたくさんの笑顔のドワーフが見られるのは一年でこの二日だけじゃろうな。

収穫祭がおわったとたん、また黙々と次の苔を植えねばならん。
そのときはもう前日までのバカ騒ぎがうそのようにだーれも口を聞かず、だまって黙々と作業をする。
白羊宮の原点の日にすべての苔のもとを植えつけなければいかんからの。

ドワーフにも戦士として戦いに行くものがおるから一部は自分たちでつかう。でも残りはエルフに売るんじゃ。前にも言ったが人間はわしらドワーフを下に見ており買いたたかれるし、わしらは商売は苦手じゃ。
エルフはドワーフの天敵じゃが、わしらの作った装飾品や実用品はちゃんと評価してちゃんとした値段で買ってくれるんじゃ。

やくそうや毒消しそうは一年ぶんの大きな取り引きなので、エルフも大エルフのマクシミリアンが来る。
わしはアメジスト職人でこのドワーフ洞窟ではある程度えらいので、わしがマクシミリアンと毎年交渉することになっておる。

「やあ、アントン、今年の出来はどうだい?」
「マクシミリアン、一年ぶりじゃの、元気そうじゃ、今年もよく育っておるぞ」
「じゃあ、去年とおなじくらいの量をもらおうか」
「うむ、米やパン、野菜の種、兌換券もおなじくらいもらえるのじゃな」
「いや、君は知らんのかもしれんが街では物価、つまりモノの値段が上がっているから2割上乗せしてあるよ」
「それはありがたい、やはりおぬしはエルフにしてはもったいない、信頼できるドワーフのような男だな」
「アハハッ、いちおう君らしい最高の褒めコトバと受け取っておくよ」

「こんなことお前さんに言うのもなんだが、マクシミリアン、わしの娘、モニカがもう70歳でな、結婚相手を探さんといかんが、やはりさびしいもんだ」
「結婚か、70歳でか、君たちは寿命が短いからな、しかし娘さんがいなくなるのはそんなにいやなものなのか」
「ああ、おぬしは結婚もしておらんかったな、もう何歳になるんじゃった」
「800歳をすぎたところだ、あと200、300百年の寿命だな、年齢をとったよ、大エルフなんて呼ばれて」

「しかしまだ子を残せるんじゃろ、わしらドワーフは300年くらいの寿命しかないが一族を維持できておる、でもお前さんたちエルフはこのままだとどうなるんじゃ」
「ゆっくりと滅亡するんじゃないかな、寿命はやたらと長いけれど生殖本能が決定的に欠けているからね」
「それでいいのか、無理にでも子を作ればいいじゃないか、かわいいぞ」
「天敵のドワーフが私たちエルフの未来を心配してくれるとは驚きだね」

「さびしいじゃないか」
「おいおい、ますます耳をうたがう言葉だね」
「いや、間違えた、お前さんたちがいなくなったら、わしらは直接人間と商売しなきゃいかん、それはいやじゃ、わしらの工芸品ややくそうを買ってもらうために、マクシミリアン、おぬしが先にたって子をつくれ」


この作品は雨奈川さんの影響で書きはじめました。エルフを得意とする雨奈川ひるるさんに対抗?してドワーフでどこまで書けるかやってみています。
2作目でもうそろそろ限界です。

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どうぞよろしくお願いいたします。

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