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ドワーフのアントンの公平とモノの価値

(この作品は最後まで無料で読めます)
わしはドワーフのアントン。
わしらは洞窟に住んでいる。
洞窟っていっても天然のものじゃあないぞ。
もとからある洞窟をわしらの仲間で時間をかけて深く深く広げていくんじゃ。

飯屋も床屋もなんでもある。
じゃがわしらはもともとそれほど群れなくてな。
じぶんで食事の準備もするし、髪も伸ばしっぱなしのほうがおおい。
飯屋や床屋は半分趣味でやっとる連中じゃ。

わしらは長生きでな。
人間とちがって300年くらいの寿命がある。
でももっと長生きするのがエルフだな。
やつらは千年以上生きる。

でも恥ずかしいコトバだが、んうん、生殖本能、が薄いんじゃ。
だからゆっくり死滅にむかっているのじゃよ。
また恥ずかしいがわしらドワーフは、ソノ、本能はふつう、でな。
わしも細君がおる。

アルヴィリア、美しい名前じゃろ。
まあ、体型はドワーフじゃが、笑顔がやさしい。
一人娘はモニカ。まだ70歳じゃ。
でもそろそろ結婚相手を探さんとな。

わしらが洞窟の鉱物から美しい細工物を作れるのは人間も知っておるじゃろう。わしはアメジスト専門じゃ。
ドワーフどうしの取り決めがあってな。
銅しか扱えん者もおるし、銀製品だけの職人もおる。

その中でも、宝石や貴石を扱えるのは、卓越した技術をもったドワーフと認められねばいかん。
産出量にかぎりがあるからの。
しかしわしが金持ちではない。

売った装飾品、銅から銀、ゴールド、ダイヤまで、ぜーんぶひっくるめて、みんなで平等に分け合うんじゃ。
そうじゃあなかったら、銅の職人とダイヤの職人じゃあ、公平じゃあなくなるじゃろ?

人間のセカイはどうも違うらしいが、わしらはあまり人間とは関わらん。
人間はドワーフを下に見ておる。だから買いたたかれる。
わしらは商売がよく分からんからな。

だからエルフに売るんじゃ。
エルフとドワーフは天敵と思われているらしいが、エルフは綺麗なモノに目がなくてな。

商売のときだけわしらの洞窟にやってくるんじゃ。
それにエルフは綺麗なモノの価値をよく分かっておる。
わしらが見てこれはこれくらいだろう、という価値の米やパン、野菜の種、交換可能な兌換券なんかを払ってくれる。

エルフはその中から高級品は自分たちのモノにして、中級品や劣等品を人間に高ーく売りつけるんじゃ。
人間はエルフの売るものは価値があると信じておるからの。
じっさいはわしらドワーフがつくったモノなんじゃが。

人間がそれで満足しておるのならわしらはそれでいい。
わしのアメジストの細工物も「価値があると信じている」だけの人間より、ホントウの価値を認めてくれるエルフの頸飾りになったほうが幸せじゃろ。
エルフがドワーフの天敵だったとしても、じゃよ。


この物語りは雨奈川ひるるさんに触発されて書いてみました。
彼女がエルフの物語りを多く執筆され、なんだかドワーフがかわいそうだったので。

もしこの作品が面白かったらご購入していただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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