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読書感想文 ルイス・セプルベダ著 「カモメに飛ぶことを教えた猫」

私はたまに図書館に行く。図書館には当然のことながら本がいっぱい置いてある。キャリアに関する本や、病気に関する本は結構棚にそろっている。キャリアに関する本はきっと学生が主にターゲットになっているんだと思う。私が学生のことにはそもそもどんな職業が世の中にあるのかもよくわかっていなかったし、わかってもどうすればいいのか皆目見当がつかなかった。そういう人のためにこの棚はあるんだろうと思う。

あるいは病気に関する本であれば、だれでも病気になる。病気にかかったら、ネットで調べるというのは定番だと思うけど、ネットの情報は断片的でまとまった知識を得るなら本を一冊読んだほうが早い。これはなんでもそうだ。どんなことでもまとまった知識を得たければ本を一冊読んだほうがいい。そのための図書館だ。

もともとは図書館というのは知識を万人に開くためにある。いまはネットもあるし、AIもある。そういう時代に図書館はどうあるべきなのかは、きっと議論になっているのだろう。私に図書館がどうあるべきかはわからない。ただ時々ふらっと立ち寄って本を借りるだけだ。

図書館にはいろんな本がある。世界文学全集みたいなのもあるし、郷土の資料みたいなのもある。そこをふらふらと歩き回りながら、眺めているとAmazonで買わなそうな本に出合うことがる。今回の感想文の本もそうやって出合った本だ。

外国文学がいいなと思いながら、そこら辺を眺めて、本をとってはパラパラと眺めてみる。白水ブックスのうすい本だ。厚い本は疲れてしまう。うすいすぐに読める本にしたい気分だった。「カモメに飛ぶことを教えた猫」という題名。なんともナンセンスな題名だ。猫がカモメに飛ぶことを教えるなんてありえない。猫は地べたをすばやく移動する動物だ。

読んでみると確かに猫がカモメに飛ぶことを教えている。母親カモメの遺言で卵を託される。そしてひなが孵ったら飛ぶことを教えてほしいと頼まれるのだ。全体的に児童文学的な感じで、猫にも本ばかり見ている博士もいるし、秘書役の猫もいる。猫が擬人化されていると書くと、つまらない感じがするけど、ユーモラスで面白い。

あとがきにはルイス・セプルベダがクーデターが起こったときに投獄され2年半刑務所で過ごしたことなどが書いてある。この物語を異なる者が一緒になって過ごすこと、そういう難しさの中で作者は書いたのだということもできるだろう。もちろんルイス・セプルベダがそういうことを意識しなかったことはなかっただろう。

でもそういう難しく考えずに、かわいい猫とカモメの不思議な話と思ってくれていい。疲れてしまって何も読む気がしなくなっても気楽に読めて、楽しくなるそんな本です。ぜひ手に取って読んでみてください。

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