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映画感想文「SWALLOW/スワロウ」 長い旅の始まりの話

映画「SWALLOW/スワロウ」を見たので感想を書きたいと思います。紹介文を上げておきます。

ニューヨーク郊外の美しい邸宅、完璧な夫。ハンターは周囲から羨望のまなざしを向けられる生活を送っている。しかし、その華やかな表の顔とは裏腹に、彼女は孤独と抑圧に苦しんでいた。
ある日、ハンターは突如としてガラス玉を飲み込みたいという衝動に駆られる。その行為から得る痛みと快感は、彼女の心を満たし、日常の息苦しさから解放されるかのような感覚をもたらす。
やがて、ハンターはより危険な異物を飲み込むことにのめり込んでいく。その行為は、彼女の内なる闇を暴き出し、周囲との関係をさらに複雑にしていく。

映画「スワロウ」はジャンルとしてはサスペンスに属するかもしれません。じわじわと日常が崩壊していく感じがいいです。

ニューヨーク郊外の邸宅でほとんどのことは進行していきます。それは主人公のハンターは結婚していながら、結婚しているがゆえに孤独です。かつて小売り店の販売員をしていたハンターと、裕福な生活は何もかも違いすぎるのです。やることといえば、部屋の掃除や模様替えくらいしかありません。

ガラス玉を飲み込むことから始まり、ピン、ドライバーと飲み込むものが危険なものになっていきます。異食症といわれる摂食障害です。摂食障害は難しく、なかなか治りません。拒食症ならば、ものを食べなくなり、最悪の場合死に至ります。命に係わる重大な障害です。見ているほうが苦しくなってきます。

ハンターはカウンセリングを受けることになります。ハンターは出生のことに葛藤を抱え込んでいることが明らかになります。第三者からすればどうしてそのことにこだわるのか、わからないかもしれません。でも複雑なものを形成しているのです。どうすればほぐれるのかわかりません。彼女の孤独はどこから来るのか、複雑なものから来るのか、彼女自身分からず、ただ異物を飲み込むのです。苦痛であり、快楽です。言葉は象徴です。言葉を飲み込み、血肉に変え、外に吐き出す。ハンターは言葉を持たないのです。言葉とは気をそらすことであり、だますことでもあります。

最後の場面で、ハンターは治療を続けながらも、まだまだ治っていない場面で終わります。これを見て救われないと思う人もいるかもしれません。でもそうではないのです。物語は始まりがあって、終わりがあります。でも人生には終わりはありません。ずっと続いていきます。ハンターの人生も続いていくのです。この物語は単に断片に過ぎません。ハンターは長い旅に旅立ったのであり、目的地はどこかは決まっていません。苦しい旅は、もしかしたら突然終わってしまうかもしれません。でも夫からも、母親からも、父親からも逃れ自分の旅を続けていくのです。



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