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「街のあかり」を見て

 アキ・カウリスマキ監督の映画「街のあかり」を見ました。よかったです。アキ・カウリスマキ監督の作品は初めて見ました。いくつもの賞をとっている有名な監督のようです。アキ・カウリスマキ監督はフィンランドの映画監督です。この映画も舞台はヘルシンキになっています。

 私がこの映画を見て真っ先に思ったのは抽象絵画のようだということです。抽象絵画のモンドリアンを思い出しました。モンドリアンの絵は線と色で書かれていて普段私たちが見ている世界とは違います。モンドリアンの絵は具体的な形が書かれているわけではありません。単純な直線と色があるだけです。

 「街のあかり」でも登場人物たちは動いているのですが、私の印象では棒立ちで演技に乏しく表現を拒否しているように見えました。物語としては、さえない警備員が犯罪者に宝飾店の強盗をするために利用され刑務所に入ります。そして出所後、偶然見かけた首謀者を襲うのですがあっさり逆にやられてしまいます。

 警備員の日々が描かれていて説明的なセリフはありません。ただ警備員がけっして現状に満足していないこと、やがて事業を起こしてみたいと考えていることなどわかります。銀行に融資を受けに行って簡単に断られるシーンがあります。決して大げさといわけではなく、起伏の乏しいやり取りで、でも確かに表現されています。こんなやり方で映画というのは作れるのだと驚きます。

 普段見ている映画がいかにごてごてと飾り付けられているのかがわかります。考えてみれば私たちの生活とはこういうものなのかもしれません。私が過去の生活を思い出すときには、こういったごてごてと飾り付けられた過去を思い出しているように思います。運命を見てしまうこともあります。

 抽象絵画のような抑制された表現と、具象絵画の絵画をおもわせる、都市に住む人間の悲劇とが同時に存在するというところに面白さがあると思います。いい映画だと思うので多くの人に見てもらいたいと思います。


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