ステルス金木犀
カラフルに光り輝くUFOの映像をテレビでやっていた。デコトラみたいなことなんだろうか。
入院していた時、窓の向こうに変な飛び方をする謎の光る物体がいて、ちょうど巡回に来た看護師さんに訊いたところ「あーあれね、UFOよUFO」との回答だった。今でも正体は分からないけれど、看護師さんは何かを知っている。
前の職場のトイレの、掃除用具入れか何かだと思っていたスペースが更衣室だと聞いて、恐らくはみんなもあまり知らないそこを使ってみて、出てきたら他の個室は空で、手を洗っている人が一人だけいて、ああわたしは今誰もいないはずのトイレから出てきた人になってしまった、怪談はこうして生まれるのか、と思ったことがある。
そのようにして、ああわたしは今UFOだと思われてしまった、という状況におかれている人がいたりいなかったり、わたしたちは皆誰かにとっての惑星外生命体だったり、そうでもなかったり。
隙間とも思っていなかった町の隙間がLUUP置き場になっていく。見えている金木犀と見えていない金木犀が平等に香り始める。香ると咲くは同義で、他にそんなものは見当たらなくて、置き場の数のわりに、LUUPに乗っている人は見かけない。
甘くないイタリアーノ、甘くないけど砂糖は入っているのね。充電の少ないAndroidに読んでいないメールマガジンが届く。Androidを、ペットボトルを、目薬をウェットティッシュで拭う。ばっちいにおいがするからこの習慣だけは続いていきそうで、普段使わない単語だけれど、これは「ばっちい」といつも思う。
前の職場の人たちとのランチの予定と、その時渡すちょっとしたお菓子を買う予定がある。この先も、ちょっとしたお菓子をたまに渡す相手に切れ目なくいてほしくて、誰に告げるわけでも相手を限定するわけでもないけれど、紛れもなく、愛の告白。
紛れもなく愛の告白カステラの端の部分を渋々譲る
銅木犀、プラチナ木犀などがあり香りは大体どれもおんなじ
夢だってわかってる夢でウーバーの人として行く惑星航路
きみのいた星でも読まれていたという星新一のショートショートは
/山形さなか