短歌96
下腹部の言葉の中にある器官ない器官たまに星を見に行く
パフェは白 あなたのせいで行けるなら地獄も天国もとうといよ
私より長く咲き続ける花の鉢植え抱き締めて帰る夜
唐突な愛の告白みたいじゃない?雨 あたしたち濃くなっていく
流星が伝える暇もくれなくて物理も科学も全部くやしい
海の風、眉毛についている寝癖、あなたを暮らしに含めてからの
氷ならどこまでだって行けたかも 社会で精一杯手を握る
果物を守る心許ないネットの感覚でまどろんだピアノ
もういいよって言えないまんま夜を越えた子供達そして私達
おそろいのビーズのブレスレットだけ魔法で、それからの夏休み
充電が緑に変わるきっともう行けない森で今も待ってる
古い絵本新しい絵本の間にいない子供のひらがなの跡
朝焼けが巣食ってしまう教室でわたしの笛をわたしが齧る
異星だと知ってる夢の最中に知らない種を必死に蒔いた
もう雪は降らないけれどとびきりの一歩目なら見ててほしかった
電車から一瞬見える幻の国のこと誰も調べていない
エーデルワイス きっと聞こえてしまうけど好きと嫌いに口を開いた
耳ばかり凍える朝に本当はその下手な相槌がほしかった